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不動産

リーマンショックと中国バブル崩壊は何が違う?

リーマンショックと中国バブル崩壊は何が違う?

恒大集団や碧桂園のデフォルト問題により中国バブルの崩壊が今後日本にどのような影響を与えるのか話題に上がっています。

リーマンショックのような世界的な恐慌を起こす事になるのか、世界が注目している訳ですが、この記事では中国バブル崩壊とリーマンショックは何が違うのかを解説していきます。

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中国バブル崩壊と比べる世界のバブル崩壊

中国のバブル崩壊を理解するのに近道なので日本のバブル崩壊をおさらいしてみましょう。
時代は1980年代頃「貿易摩擦」というワードがニュースに踊るようになり、日本は対米貿易黒字がたびたび摩擦を引き起こしました。
そして1985年「プラザ合意」が起こります。

これはアメリカの貿易赤字を削減するための施策で先進5カ国(日・米・英・独・仏=G5)の各国が協調して為替介入する事でドル高を是正する事を取り決めました。

ドル高を是正する事で日本は円高が進行し、輸出業が大打撃を受け国内景気は冷え込みました。

1987年G7による「ルーブル合意」で今度は行き過ぎたドル安を安定化させるよう施策を取る事で為替相場は安定を取り戻しました。
この時冷えた日本経済を立て直すため政府は融資を増やして景気を刺激するために金融緩和を続けていきます。

公定歩合を引き下げ、企業の設備投資を奨励する事で経済成長を目指します。
巨額の融資は国土開発に向けられ、景気回復とともに地価の上昇をもたらしました。
地価の上昇はさらなる開発意欲を誘い、景気を刺激し活発に不動産取引が行われます。

この結果企業だけでなく、個人までも株式投資や不動産を購入する事で投資利益を得ようとするようになっていきました。不動産価格は年々上がり続けていましたので、人々はこぞって不動産を買い漁りました。

1989年12月29日、日経平均株価が38,957円という史上最高値を記録します。
信じられない高値です。
都心のワンルームマンションが1億円で取引されるなど日本のバブル経済はどんどん膨らんでいきました。

勿論、それは長くは続きません。
1990年3月に、『不動産融資総量規制』が始まります。
これは金融機関に貸付額の総額を規制するよう求めるものでした。
自由に融資を実行出来なくなった金融機関は不動産融資貸付高を急激に減少させる事になりました。

さらに公定歩合を2.5%から6%に一気に引き上げたのです。
他にも、政府は
地価税の創設
固定資産税の課税強化
土地取引の届け出制
特別土地保有税の見直し
譲渡所得の課税強化
土地取得金利分の損益通算繰り入れを認めない

というように次々と不動産バブルへの対策を打ち出していきます。この『総量規制』が導入されたことにより、金融機関の不動産向け融資が極端に引き締められ、不動産取引は激減しました。その結果地価が大幅に下がり始めます。

それまで土地神話のもと、決して下落することがないと言われた地価が下落に転じ、以後、2005年に至るまで公示価格は下がり続け、低迷の一途を辿ります。

内閣府の国民経済計算によると日本の土地資産は、バブル末期の1990年末の約2,456兆円をピークに、2006年末には約1,228兆円となり、およそ16年間で半分の約1,228兆円の資産価値が失われたと推定されています。

「三道紅線」(3つのレッドライン)と総量規制

バブル崩壊という意味では日本と同じ中国バブルの崩壊ですが、規模はさらに大きなものとなっています。
日本のバブル期のマンション価格は平均年収の18倍程度で取引されていました。
それが中国では年収の50倍以上です。平均年収が相対的に低いという事もありますが、如何に中国で不動産が高騰したかが分かる数字です。

では、中国バブルの軌跡を見てみたいと思います。1998年「住宅制度改革」が中国不動産の転機とする見方が多く、この頃から不動産価格は上昇を続けていきます。

中国の地方自治体は自治体の利益のために土地を売却していきました。
不動産開発業者がその土地を開発して個人に分乗していきます。マンションの価格が上昇していくと住むためだけではなく、マンション価値の上昇を期待した投資目的での購入者が増えていきます。

2013年ごろをピークとみる見方も多いようですが、この開発の拡大と価格の上昇はかなり長期に及びました。

一人で2件のマンションを買う事も当たり前になり、中国全土で投機熱が過熱していきます。中国の国民は14億人と言われていますが、供給されているマンションは30億戸以上とも言われています。不動産価格は上昇を続け、ついには年収の50倍以上もの高値を付けるようになっていったわけです。

あまりにも高額になった不動産価格は住居が手に入らない国民の不満に繋がりました。中国当局は事態に危機感を強め2020年不動産業融資の総量規制(銀行融資の40%以下)、二件目以上の住宅ローンの厳格化、マンション価格の統制、等を打ち出しました。

「三道紅線」(3つのレッドライン)と呼ばれる政策により開発業者は資金繰りがつまり、開発分譲がとん挫する未曽有の混乱が始まります。

日本の「不動産融資総量規制」と良く似た構図になっています。

鬼城と呼ばれる新築のマンション群がゴーストタウンとなっている様子は世界でも話題になっていて、中には未完成のマンションに泣く泣く住んでいる住人もいるのです。

中国では現在、家計資産の4分の3以上が住宅関連に集中しています。不動産バブルの崩壊は保有資産の喪失という国家規模の問題に発展します。

中国では不動産開発業は、国の基幹産業であり国内総生産の13%以上を占めていました。一言に13%と言っても大国中国のGDPの13%です。如何に巨大産業かがうかがえます。

リーマンショックとサブプライムローン

今度は2008年9月に起こった近年最大の金融恐慌であるリーマンショックを見ていきたいと思います。

リーマンショックとは米国の投資銀行大手であるリーマン・ブラザーズが倒産した事を契機として発生した世界的な金融・経済危機のことです。一体何故リーマンショックが起こったのか、そしてそれが中国バブルを考える上でどう関係するのか見ていきたいと思います。

原因は様々あるのでしょうが、何を言ってもサブプライムロ-ン問題が引き金になっている事は間違いないでしょう。

サブプライムローン問題というと単語は聞いた事があるが、詳しくは知らないという人も多いのではないかと思います。リーマンショックを理解するにはサブプライムローンの理解が必須になります。サブプライムローンというのは低所得者層に向けたローン商品の事です。

サブプライムローンの登場

もともとプライムローンという高属性に向けた低金利のローン商品がありました。2004年頃から不動産市況が活況になると住宅ニーズが高まり、ニーズに対応したローン商品が求められます。

それは信用力の低い人でも借りる事の出来る住宅ローンです。
プライムローンに対してそれに準じるローンということでサブプライムローンと呼ばれました。

サブプライムローンの特徴は何といっても低所得者でも借りる事が出来るというものでしたが、爆発的に普及したのには理由があります。

この頃のアメリカは不動産市況が活況で、不動産の値上がりが見込めたので不動産事態に担保余力があるとみなされ、低所得者層でも融資を受けて家を買う事が出来ました。

しかし、信用力の低い低所得者層にとってローンの返済が出来なくなると負債を負う事になるリスクがあります。サブプライムローンはとても金利が高く、低所得者層にとっては支払いを継続する事は困難なはずです。

金融機関はこの時元本の支払いを先送りにし、利息だけの支払いでローンを組むことが出来るようにするなど、購入初期の優遇制度を数多く取り入れました。
他にもローンの支払いが出来なくなった場合、担保である自宅を手放せばローンの返済を免れる救済措置も取り入れられます。
購入者は万が一返済が出来なくなっても、家を手放せばローンの支払いを免れる事が出来る仕組みになっていた事から、安易に住宅を購入していきました。

購入する側にとってリスクは高くなく、もし住宅の価値が上がればちょっとした投資効果も見込めた為、サブプライムローンは大人気商品となったのです。
大きな人気となったサブプライムローンで更なる利益を出すために銀行は次第に担保評価以上の融資をするようになります。

加熱するサブプライムローン

日本のバブルも中国のバブルも投機熱と金融機関の過剰融資が根底にある部分で似ているように見えます。実のところ銀行では早期の段階で担保割れのリスクは分かっていました。

それでも、人々の住宅熱が冷めない以上、銀行はサブプライムローン融資を続けていきました。銀行からすればリスクはあるものの住宅価格が上がっている限り、回収は許容範囲に収まるはずだったためです。

リスク対策として金融機関はサブプライムローンを債券化し、金融商品として販売する事を計画します。証券会社もこれに呼応し、利回りの高さに対してリスクの低い商品として人気を博していきます。

このなんとも危ういサブプライムローンの債権を金融商品として販売したのがリーマンブラザーズです。

この段階で銀行はサブプライムローン問題から足を抜く事が出来ました。こうしてサブプライムローンの返済が焦げ付いて損害が出るのは金融機関から一般投資家に移り変わっていったのです。

銀行は貸し倒れリスクが無くなる事でさらに融資を拡大し、サブプライムローン債権は様々な金融商品に組み込まれて販売されていきました。

商品の特徴として不動産の担保を取っている訳ですから、元本割れのリスクも低いはずでした。

ところが不動産価格の上昇を期待し、本来の価値よりも過剰な評価を行って融資をしていたため、実際に焦げ付きが起こった場合には元本割れが起こるかもしれません。サブプライムローンの貸出先は低所得者の住宅に留まらず、不動産の値上がりを期待した不動産投資にも使われるようになります。

不動産市場の下落を皮切りに

2006年ついに上昇基調だった不動産市況が変わります。ローンの支払いが出来ない人が続出し、社会問題として取り上げられるようになります。銀行の杜撰な与信評価も問題になりました。

その実情は一度も元本を返済していない債務者もいるほどひどいものでした。何故このような事になっているかと言えば融資を拡大したい銀行が内容を良く把握していない人達に対して返済不可能な計画で融資を貸し付けていたためです。

数年間金利のみを支払ってローンを組むという事は、その数年後は未払いの元本を含んだローン支払い額となります。ローンを組んだ5年後に毎月の支払額が突然2倍になったりしたら払えない人が出てくるのは当然と言えます。

2007年4月、大手金融機関のニュー・センチュリー・ファイナンシャルが破産申請を行います。サブプライムローン債権の焦げ付きを受けて投資銀行が融資の引き上げを始めたため資金繰りが悪化したのが原因です。

2007年7月、「ムーディーズ」がサブプライムローンを含む金融商品の格付けを下げました。これが決定打となり、世界規模でサブプライムローンを含む金融商品からの資金引き上げが表面化。世界同時株安に繋がった訳です。

サブプライムローンはあらゆる金融商品に組み込まれていたため、投資家はどの金融商品がサブプライムローン問題の影響を受けるのか分かりませんでした。

そのため、全ての金融商品がリスクを嫌って売られてしまい、これだけの規模の恐慌に繋がってしまいます。そして、ついにはリーマンブラザーズの破綻というリーマンショックを引き起こしたのです。

中国バブル崩壊とリーマンショックとの違いは?

中国バブル崩壊とリーマンショックの似た部分は上記から感じられる部分があるかと思います。
では、両者の違いを考えてみたいと思います。
先ず何より世界規模に影響しない理由です。
債権化した商品が不透明でどの金融商品がリーマンショックの影響を受けるのか分からない事で全ての金融商品が影響を受けたリーマンショックに比べて中国バブルの影響は巨大とはいえ限定的です。
そして、中国市場を超えた取り付け騒ぎに発展する事も考えにくいと言えます。
大きな違いと言えばその点を挙げる事が出来るでしょう。

さらに中国バブルは崩壊したとはいえ、中国実経済の体力はかなり大きいと言えます。
流石に許容とはいかないもののこのバブル崩壊を契機に総崩れになるほど脆弱でも無い経済基盤が現在の中国にはあると言えます。
その事が事態を限定的なものに抑えていると考えられます。

3つのバブル崩壊に共通する事

リーマンショックが未曽有の経済危機に発展したのはサブプライムローンが多くの金融商品に組み込まれていたためです。
さらに、金融商品の構成が不透明で、格付機関でも債権の評価を正しく行えなかったことも要因にあります。

何よりサブプライム問題が表面化する事でメディアが煽り、沢山の人が一斉に資金引き上げを行うため、取り付け騒ぎが起こった事が恐慌を招いた要因だと言えるでしょう。

日本のバブル崩壊、中国のバブル崩壊、リーマンショック
どれも共通する事は問題が肥大化したとき、堰を切ったように大衆が動く時が来る。
その群集心理がバブル崩壊を決定づけるという事です。
バブル崩壊の直前まで、多くの人は問題に気が付いていません。ババ抜きのジョーカーが静かに消費者に渡される頃、バブルの崩壊は引き起こされるのです。
個人が出来る対策は歴史から学びお金の事を考えて対策を取っておく事です。

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この記事を書いた人

佐藤大介

ライター

佐藤大介(さとうだいすけ)

ウルトラ金融大全局長
ウルトラ金融大全の監修を務めます。
金融リテラシーを高める為、セミナー講師として活動。
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