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マネタリーベースが前年比9%増加!日本経済で何が起こる?

マネタリーベースが前年比9%増加!日本経済で何が起こる?

2023年11月2日、日本銀行(以下日銀)は、2023年10月のマネタリーベースの平均残高を前年比9.0%増しと報告しました。マネタリーベースが前年比で9%増えると、何が起きるのでしょうか。出典:※1

今回は、マネタリーベースと、日本経済の動向について調べてみました。日銀の政策は、仕組みを理解する必要があります。なるべく、分かりやすく解説するのでご一読ください。

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マネタリーベースとは

  • 日銀が発行している紙幣
  • 政府が発行している貨幣
  • 日銀に金融機関が預けている当座預金

これらを合わせた資金量(通貨量)のことをマネタリーベースと呼んでいます。

マネタリーベースは、日銀が国内で発行しているお金などをあらわす指標として使われる言葉です。日銀が国内に供給する通貨をあらわす指標でもあります。出典:※2

マネタリーベースとマネーストックは異なるもの

似たような言葉で、マネーストックがあります。マネタリーベースとマネーストックは、次のように内容が異なるお金の供給量をあらわす指標です。

マネタリーベース

マネーストック(旧マネーサプライ)

資金供給量
●     紙幣や貨幣を現金として発行した量
●     日銀で預かる金融機関の当座預金残高

通貨供給量
民間が保有する通貨の総量(国や金融機関以外)

出典:※2を参考に作成

マネタリーベースとマネーストックの違いは、日銀の当座預金口座の残高量の指標が歩かないかと考えると理解しやすいですね。つまり、マネタリーベースが増加している状況は、日銀の当座預金も増えていると判断しましょう。

日銀が行った量的緩和策はマネタリーベースへ

2013年に日銀は、金融政策の操作目標をマネタリーベースへと変更しました。マネタリーベースに改める前までは、無担保コール翌日物で金融政策の調整を行ってきました。出典:※3

では、マネタリーベース以前の金融政策は、どのように調整していたのでしょうか。

資金不足を短期的に調整するコール市場

金融機関は、短期的な資金の過不足があっては取引に支障が出ます。そのような状況をなくすため、日常的に短期で資金の過不足は調整されています。
その調整の場となるのが、コール市場です。コール市場は、次の機関や業者が取引する市場と伝えられています。

  • 銀行
  • 信託銀行
  • 信用金庫
  • 投資信託
  • 証券会社
  • 保険会社
  • 取引を行う仲介業者

コール市場の取引形態は、4つに分類できます。

  • 有担保コール:担保付きの取引市場
  • 無担保コール:無担保で取引できる市場
  • 短資会社を経由した取引:短期の貸借取引で仲介業者を経由する取引
  • 短資会社を経由しない取引:短期の貸借取引で仲介業者を経由しない取引

コール市場の取引期限も複数あり、市場と組み合わせた取引が行われます。

  • 翌日物:取引期間が翌営業日(1営業日)
  • 期日物:取引期日を自由に設定できる(ターム物・2営業日以上1年以下を期限とする)
  • 受渡当日物:即日開始のもの
  • 受渡先日付物日付よりも後より開始するもの 出典:※4

金融市場の調節で使われる無担保コール翌日物

無担保コール翌日物は、前述したコール市場の取引形態のひとつに当てはまります。無担保コールと、取引期限の翌日物、受渡当日物を組み合わせた取引です。

無担保コール翌日物は、無担保コールレート(オーバーナイトもの)とも呼ばれ、コール市場での無担保資金貸借を対象にしています。
無担保で貸し借りした資金の中で、資金の受け払いの翌営業日が返済期日とのことです、資金の受渡は、約定日(当日物)に行って、その翌営業日を返済期日に設定した取引。
翌日物のことは、オーバーナイトものとも呼ばれています。出典:※5

金融市場の調節方針の流れ

日銀が取り組んできた金融市場を調節する方針は、次のような流れで変わってきました。

時期

日銀の調節方針

1998年
短期市場金利を誘導する公開市場操作を通じた調節

無担保コール翌日物を具体的な数値指標で誘導する

1999年~2000年
ゼロ金利政策を実施

無担保コール翌日物を極力抑えた調整が促される

2001年
量的緩和政策を施行開始

無担保コール翌日物から日本銀行預金残高へと変更

2006年
量的緩和政策の解除

日本銀行預金残高から無担保コール翌日物へと再度変更

2010年
包括的な金融緩和政策を開始

無担保コール翌日物の調整を0~0.1%のあいだで推移することを目標

2013年
量的・質的金融緩和政策を開始

無担保コール翌日物からマネタリーベースに変更

2016年1月
マイナス金利付き量的・質的金融緩和政策を導入

資産買入れ方針の維持
補完当座預金制度の改正で、-0.1%のマイナス金利政策が決定

2016年9月
長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策の導入

●     短期政策金利:-0.1%のマイナス金利の適用
●     長期政策金利:0%金利で10年物の長期国債の買入れを実施

2018年
長短金利操作付き量的・質的金融緩和政策の維持

金融市場調節方針は、そのまま継続・強化

2020年
金融緩和の強化(新型コロナウイルス感染症対策として)

長期国債と短期国債の積極的な買入れ

2021年
2%の物価安定

10年物の長期国債の買入れを上限なく実施など

2022年
長短金利操作の運用を見直し

●     10年物の長期国債の買入れを上限なく実施の維持
●     国債買入れ額の大幅な増加
●     長期金利変動幅の引き上げ0.25%から0.5%ほどに拡大

2023年
物価高への対応
長短金利操作の運用を柔軟化

長期金利を0%
変動幅0.5%維持をめどに柔軟運用

出典:※3を参考に作成

上記の日銀による金融市場調節方針の流れでは、2013年から開始されたマネタリーベースが続いている状況です。

マネタリーベースを採用することで、日銀の当座預金残高は増加します。ところが、ゼロ金利が設定されているため、利益には直結しません。利益を生み出すためには、銀行から民間への貸し出しを増やすことも必要ですが、そもそも金利が0%~0.5%では、厳しい状態になるでしょう。

つまり、金融政策の調整方針としては、十分ではないという状況です。

2023年10月のマネタリーベース

ロイター通信が公開した情報では、2023年10月のマネタリーベースは、平均残高670兆6127億円で前年比9.0%増という点を示しています。出典:※1

日本銀行調査統計局による推移は次のとおりです。

2023年:月単位

マネタリーベース

マネタリーベースに含まれる紙幣発行高の前年比伸び率

マネタリーベースに含まれる貨幣流通高の前年比伸び率

マネタリーベースに含まれる日銀当座預金の前年比伸び率

日銀当座預金に含まれる準備預金の前年比伸び率

1月

-3.8

2.7

-4.0

-5.2

-6.6

2月

-1.6

2.6

-3.8

-2.5

-3.6

3月

-1.0

2.1

-3.7

-1.6

-2.1

4月

-1.7

1.5

-3.4

-2.3

-3.2

5月

-1.1

1.3

-3.1

-1.6

-2.1

6月

-1.0

1.1

-3.0

-1.4

-1.6

7月

-1.3

0.9

-2.9

-1.8

-2.2

8月

1.2

0.7

-2.8

1.3

0.9

9月

5.6

0.5

-2.5

6.9

6.6

10月

9.0

0.3

-2.4

11.2

11.5

(単位:%)出典:※6

上記にあらわしたマネタリーベースの前年比伸び率は、2023年1月から10月までの推移です。2023年10月の数値は、次のような結果となっていました。

  • 日銀に預けた金融機関の当座預金:545兆1979億円(2%増で3カ月連続増加)
  • 紙幣発行高:120兆6554億円(3%増)
  • 貨幣流通高:4兆7594億円(4%減) 出典:※1

日本は、これらを合計したマネタリーベースが9.0%増加している状況です。ロイター通信では、9.0%に増加している要因を次のように指摘しています。

  • 国債の買い入れによる影響
  • 共通担保オペの返済(各種オペの返済)が6月で完了したこと
  • 新型コロナウイルス対応特別オペの返済が6月で完了したこと

最終的には、10月末のマネタリーベース残高は677兆2899億円と伝えられています。出典:※1

共通担保オペは、日銀に差し入れられた担保が裏付けとなる資金供給のオペレーションです。借りていた資金の返済が6月に終了したこともマネタリーベース上昇の要因と考えられています。出典:※7

また、新型コロナウイルスが2023年5月より5類に移行したたため、マネタリーベースではなくマネーストックの部門でも資金供給が行われてきました。民間部門にあたる中小企業などへの融資となる新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペです。出典:※8

こちらの特別オペも6月に返済が完了してとのこと。これらの要因がマネタリーベースの増加につながっていると伝えています。出典:※1

マネタリーベース9.0%で何が起きるのか?

マネタリーベースが増加すれば、金利が下がるため銀行に預金してもお金が増えないという判断となるでしょう。銀行にお金を預金しておくよりも、モノを買ったり、投資したりすることも考えられます。日銀は、消費者の消費行動が上がり、物価も上昇し景気回復を目標としているのではないでしょうか。

マネタリーベースの増加は、銀行の資金も豊富だということです。その資金を活用した投資運用も考えられます。マネタリーベースの増加は、お金の動きが活発的になると判断できます。

しかし、日本銀行ではマネタリーベース増加の日本経済への影響を、「ゼロ金利制約に直面している日本経済では、マネタリーベースの金融市場の調整は友好的に作用しない」と指摘しています。
日限では、いままでマネタリーベースの効果が得られなかった状況(2023年7月以前)を次のように示していました。

  • 追加的な長期金利の下げ幅が限定的なこと(短期金利をほぼゼロにしたため)
  • あらゆる金融資産のリスクを押し上げていること(経済の先行きや不良債権処理の構造調整対応など)
  • 貨幣の予備的需要が高くなったこと
  • 金融機関の不良債権保有による体力低下
  • 企業の過剰債務による体力低下 出典:※9

これら負の要因は、経済の先行きを不確実と捉えている社会情勢が考えられます。日銀は、10月31日に方針を決定しています。

  • 長短金利操作YCC(イールドカーブ・コントロール)をさらに柔軟的な運用で実行
  • 10年金利1%の上昇を容認
  • 金利1%を超える上昇の容認

日銀は、金利操作として、大規模な国債の買入れや機動的なオペ運営などを継続するとのことです。この政策は、インフレ2%を超えるまで続けると伝えられています。出典:※1

日銀がさらに柔軟的な運用を模索しているYCCとは、長短金利付き・量的質的金融緩和のことです。2016年9月から金融市場の調節方針として導入され、0%金利で10年物の長期国債の買入れを続けています。出典:※10

つまり、マネタリーベースを増加させれば、物価高になりインフレ率も上昇するという考えですね。そして景気の復活を目論んでいるのでしょう。

日銀の政策調整に対して準備できることを考えよう

今回は日本銀行の金融政策の調整で使われるマネタリーベースについて、その意味や歴史などを解説してきました。マネタリーベースは、2023年8月から上昇傾向へと変化しています。今後の上昇が、日銀の目指すインフレ2%につながるのでしょうか。つながれば、景気も良くなり、消費者の購買活動も活性化してくるでしょう。

民間人は、日銀の政策で一喜一憂してしまいます。世界に目を向ければ、ウクライナやイスラエルとパレスチナ問題など、解決の難しい問題が発生しています。それだけに、先の読めない社会情勢ではないでしょうか。

不確実な未来に対して、身の回りでできる準備が求められる世の中です。身近でできることから学んでみましょう。

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【出典・参照元記事URL】

※1:ロイター通信「マネタリーベース、10月平残は9.0%増 2021年11月以来の伸び率」
https://jp.reuters.com/business/JYQ5DQFOPVKKPDZWLUCEFPAHGQ-2023-11-02/

※2:大和証券「金融・証券用語解説 [マネタリーベース]」

※3:日本銀行「金融市場調節方針の変換を教えてください」
https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/seisaku/b42.htm

※4:日本銀行「コール市場」
https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/glossary/market/m08.htm

※5:日本銀行「無担保コールレート(オーバーナイト物)とは何ですか? 資金過不足とは何ですか?」
https://www.boj.or.jp/about/education/oshiete/seisaku/b32.htm

※6:日本銀行調査統計局「マネタリーベース(2023年10月)」
https://www.boj.or.jp/statistics/boj/other/mb/base2310.pdf

※7:日本銀行「共通担保オペ」

※8:日本銀行「新型コロナウイルス感染症対応金融支援特別オペ」

※9:日本銀行「ゼロ金利制約の下でマネタリーベースの増加が日本経済にもたらした効果」https://www3.boj.or.jp/josa/past_release/chosa200212g.pdf

※10:三菱UFJ銀行「年金用語集」

 

この記事を書いた人

江戸利彰

ライター

江戸利彰(えどとしあき)

ビジネス系の記事執筆を生業として取り組むライター。
累計800記事ほどの納品を経て、現在も日々の執筆から「情報の伝え方」をブラッシュアップしています。
ソースをしっかりと取る記事作りをモットーとしており、正確な情報提供に努めています。

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