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キャッシュレス拡大に変化ロサンゼルスで禁止の動き

キャッシュレス拡大に変化ロサンゼルスで禁止の動き

ひと昔前のお話として、具体的に「昭和の時代」でしょうか。町には10円玉や100円玉でかけられる電話ボックスが設置されていました。その頃の人は、財布に1万円札や1000円札だけではなく、公衆電話で電話をかけるために100円玉や10円玉が入っていたのではないでしょうか。

やがて時代は、テレホンカードを生み出し、携帯電話からスマートフォンへと進化し、電話ボックスや公衆電話の使い道が無くなっている状況です。

そのような時代の変化に乗って、インフラや法などが整備されることによりキャッシュレスは着々と進んでいます。いまや、10円玉を使って公衆電話で電話をかける行為の方が貴重に感じるでしょう。

キャッシュレスは、世界的にも広がりつつあります。そのような状況において、ロサンゼルスでキャッシュレスを禁止する動きがあります。今回は、広がるキャッシュレスの流れと、ロサンゼルスにおける禁止の動きなどを解説します。

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ロサンゼルス市議がキャッシュレス禁止を提案した理由

2023年8月15日に公開されたプレスリリースでは、米国カリフォルニア州ロサンゼルス市の市議会議員ヘザー・ハット市議会議員の事務所が地元店舗のキャッシュレス決済のみの対応を禁止する動議を提出(提案)しました。出典:※1(日本語訳)

現代において、キャッシュレスはペーパーレスと同じく浸透させていくサービスではないでしょうか。まして、ロサンゼルス市はニューヨークに次ぐ米国第2の大都市です。米国は、クレジットカード大国といわれるほどキャッシュレスにポジティブだと認識していましたが、その真相はいかなる内容でしょうか。

ロサンゼルス市のような大都市で完全なキャッシュレス化に待ったをかける動きには、理由がありました。

米国カリフォルニア州ロサンゼルス市において、キャッシュレス小売業の禁止を提案した理由は、人々の公平性とのことです。出典:※1(日本語訳)

すべての市民は、商品やサービスの購入などの経済活動に参加できなければ公平ではないと判断されています。実際は、銀行口座を持っていない人も多数いるとのことです。

銀行口座を持っていない人は当然、キャッシュレスで利用した料金を引き落とせません。そして信用を担保できないことからクレジットカードを作れないという状況になります。

ロサンゼルス市の小売業が完全なキャッシュレス化となれば、銀行口座やクレジットカードを持っていない人は、消費行動の術が無くなるでしょう。

つまり、ロサンゼルスの小売業から現金取引を残しておかなければ、キャッシュレスだと支払えない層の消費行動ができないという理由です。出典:※1(日本語訳)

ロサンゼルス市議のハット議員は、このままキャッシュレス化を進めて現金取引をなくした場合、以下の人々による消費行動(日常生活に欠かせない行動)が排除されると指摘しています。

  • 有色人種の低所得者層
  • 年齢が到達していないためクレジットカードやデビットカードを持っていない若者
  • クレジットカードやデジタル決済を活用していない高齢者

ハット議員は、ロサンゼルス市のキャッシュレス小売業禁止の条例を市検事に提出したとのことです。出典:※1(日本語訳)

ハット議員は、BIPOC(有色人種など)や低所得層などの銀行口座を持たない層が存在しているロサンゼルス市に、現金の消費行動は残しておくべきだという主張を持っています。出典:※1(日本語訳)

米国ならではの人種差別的なニュアンスも含まれていますが、公平性を訴えていると考えられます。

ロサンゼルスのレストランや小売業はキャッシュレス化が進んでいる状況

ロサンゼルス市議が問題視している背景には、市のキャッシュレス化が相当進んでいる様子がうかがえます。ロサンゼルスタイムズによると、もはやロサンゼルスのレストランや小売業はキャッシュレス決済でなければ支払えないと指摘しています。

しかし、経営者にとってはキャッシュレスで管理できるシステムを合理的と捉えている状況です。この状況に対してハット費員のキャッシュレス禁止提案が警笛を鳴らすことになるでしょう。出典:※2(日本語訳)

ロサンゼルス市だけではない米国のキャッシュレス禁止事情

野村総合研究所(以下NRI)によると、2018年のサンフランシスコ市を皮切りとして、2019年のフィラデルフィア市、2020年のニューヨーク市とキャッシュレス禁止の導入は広がっているとのことです。これらの市によるキャッシュレス禁止の動きは、ロサンゼルス市と同じく低所得者層などの現金利用を守るための公平性です。

NRIでは、2020年1月にニューヨーク市長の署名がニューヨーク市では、キャッシュレス禁止法案が可決されています。そのため、法律に違反した事業者は初犯で1000ドル、2回目以降で1500ドルの罰金が科せられるとのことです。

キャッシュレス禁止の動きの背景には、銀行口座を持たない人の存在が指摘されています。銀行口座を持てない人がいるため、キャッシュレス決済に移行できないという状況です。米国のこれからの政策が注目されるでしょう。出典:※3

日本のキャッシュレス決済はどのように進んでいるのか

日本では、2018年に経済産業省よりキャッシュレス・ビジョンを公表しています。キャッシュレス決済を推進し始めて、2018年のキャッシュレス決済比率18.4%から2021年では32.5%まで高まっている状況です。

日本のキャッシュレス決済の動きは、順調に進み店舗のキャッシュレス決済手段導入割合も80%まで上がっています。出典:※4

2020年の世界におけるキャッシュレス比率は、以下のとおりです。

  1. 韓国:6%
  2. 中国:0%
  3. オーストラリア:7%
  4. 英国:9%
  5. シンガポール:4%
  6. カナダ:1%
  7. 米国:8%
  8. フランス:8%
  9. スウェーデン:3%
  10. 日本:5%
  11. ドイツ:3%

出典:※4参照

日本は、2025年6月にキャッシュレス決済比率4割到達を目指していると示しています。キャッシュレス決済の促進は、スマートフォンの普及が大きく影響しているとも考えられます。クレジットカードを使った決済だけではなく、事前にカード情報の登録およびオンライン決済ができる影響も大きいでしょう。

その傾向は、リアル店舗でスマートフォンを使ったキャッシュレス決済のハードルを下げているかもしれません。経済産業省の同資料によれば、日本国内のスマートフォン世帯普及率は、2018年の79.2%から2021年で88.6%まで増加しています。出典:※4

増加の背景には、コロナ禍の巣ごもり需要などが考えられます。コロナ禍では、外出自粛や三密回避などの対応が巣ごもり需要を生み出しました。自宅で過ごす時間が長くなり、通常ならば店舗で購入できる商品をオンライン決済で購入することでスマートフォンを使った決済対応に抵抗が無くなったのかもしれません。

そのような理由から、コロナ禍から通常の生活様式が戻るにつれて、リアル店舗でのスマートフォンを使ったキャッシュレス決済も増えている要因ではないでしょうか。

現金からキャッシュレス推進の社会的意義

キャッシュレス決済が増加傾向にある日本では、キャッシュレス決済推進を次のような社会的意義で示しています。経済産業省の同資料では、現金の保有や現金取引の場合に考えられるリスクとキャッシュレス化のメリットを紹介していました。

  • 窃盗や強盗の抑止:キャッシュレスの認証機能や保証制度が金銭的被害を抑止できる
  • 不正取引の抑止:キャッシュレス化は資金の流れや量が明確にできる
  • 内部不正の抑止:キャッシュレス化は物理的な不正抑止や不審な取引を検知できる
  • 通貨偽造被害の抑止:キャッシュレス化は一元的なシステムで不正を抑止できる
  • 脱税の抑止:キャッシュレス化は資金の流れや量を明確にできる
  • 犯罪組織の資金特定:明確な資金の流れや量の判断から資金特定に役立つ

出典:※4

キャッシュレス決済は、個人の利便性だけではなく、現金によるリスクの回避にも役立つことを示しています。それでも前述したように、2021年でキャッシュレス決済比率が32.5%という状況です。世界的には、現金主義の割合の多い状態と考えられるでしょう。

米国のキャッシュレス禁止の行方

日本では、現金よりもキャッシュレスの利便性やリスク回避が指摘されてキャッシュレス化を推進しています。では、米国のキャッシュレス禁止の理由となる低所得者層やBEPOCのキャッシュレスを利用できない状況は変わらないのでしょうか。

JETROによると、米国の年間所得3万ドル以下の低所得者層は現金での支払いを行っているとのことです。その背景には、米国の抱える格差社会が大きな課題となっています。この格差社会への警鐘として、公平性をアピールする立場なのが政治家です。

冒頭で紹介したロサンゼルス市のハット市議にしても、政治家としての立場から公平性に切り込んだ結果ではないでしょうか。JETROで示す2017年時点の米国では、米国の約4分の1におよぶ世帯(3200万世帯)が銀行口座を持たない状況でした。このようなお国柄事情では、政治家が選挙を意識して公平性をアピールするのは自然の流れとも受け取れます。出典:※5

利便性が高くてもキャッシュレス化が進まないことも把握しておこう

今回は、ロサンゼルス市の市議がキャッシュレス禁止を提案したことに対して、米国のキャッシュレス決済や日本のキャッシュレス化などを解説してきました。現代は、デジタル技術の進化が加速している状況で、利便性や安全性も担保されつつあります。

ところが世界でもキャッシュレス化の進む米国において、キャッシュレス禁止の動きも高まっています。この状況には、格差社会への対応という背景があるでしょう。いくら利便性のあるキャッシュレス化でも、国が抱えている問題は政治的な兼ね合いもあるため一筋縄ではいきません。今後のキャッシュレス化の動向を見守ってみましょう。

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【出典・参照元記事URL】

※1:Devyn Bakewell「LOS ANGELS COUNCILWOMAN 10TH DISTRICT|HEATHER HULT」
https://councildistrict10.lacity.gov/sites/g/files/wph1986/files/2023-08/CD10%20Cashless%20Business_Press%20Release%20.docx%20%281%29.pdf

※2:ロサンゼルスタイムズ(LA Times)「L.A. might ban cashless businesses. Here’s what’s at stake」
https://www.msn.com/en-us/money/smallbusiness/la-might-ban-cashless-businesses-heres-whats-at-stake/ar-AA1fBYFP?cvid=7dfe959cd143426fbd9fccad6c39c77f&ei=22

※3:野村総合研究所(NRI)「コラム|米国で広がるキャッシュレス(現金お断り)店禁止法」
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2020/fis/kiuchi/0128

※4:経済産業省「キャッシュレスの将来像に関する検討会とりまとめ」
https://www.meti.go.jp/shingikai/mono_info_service/cashless_future/20230320_report.html

※5:JETRO「ニューヨークだより2019年4月|米国におけるキャッシュレス化の現状」
https://www.jetro.go.jp/ext_images/_Reports/02/2019/e230147594bf1134/201904rp.pdf

この記事を書いた人

江戸利彰

ライター

江戸利彰(えどとしあき)

ビジネス系の記事執筆を生業として取り組むライター。
累計800記事ほどの納品を経て、現在も日々の執筆から「情報の伝え方」をブラッシュアップしています。
ソースをしっかりと取る記事作りをモットーとしており、正確な情報提供に努めています。

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