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ニューヨーク市の賃料高騰にある背景は?コロナ後の変化と物価高
じわじわと物価高が生活に影響している日本。労働者の賃上げなどが取りざたされている中、今後の動向は気になるところです。物価高の影響は、日本だけの問題ではありません。
米国ニューヨークに目を向けると、ニューヨーク市の賃料は高騰しているとのことです。今回は、ニューヨーク市の賃料が高騰している背景と日本の事情について調べてみました。米国で起きていることは、対岸の火事ではないと考えている人はご一読ください。
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目次
ニューヨークの賃料が突出して高い状況
「米国ニューヨーク市の賃料が高くなっている」という判断は、比較するものがなければ理解に困ります。そこで、一般社団法人日本不動産研究所が2023年4月に実施した「第20回国際不動産価格賃料指数調査」のデータを参考にしてみましょう。
同調査資料で公開されていたデータは、世界の主要各都市における高級住宅やマンションの賃料単価の比較指数です。
2023年4月の米国ニューヨークにおけるマンションおよび高級住宅の賃料は、世界でもっとも高騰しています。世界の主な都市と比較しても、突出したデータとなっています。
都市 |
高級住宅マンションの賃料単価比較指数 |
ニューヨーク |
247.6 |
ロンドン |
231.4 |
香港 |
185.9 |
シンガポール |
147.6 |
シドニー |
119.4 |
東京(元麻布地区) |
100 |
大阪 |
91.1 |
上海 |
82.7 |
北京 |
75.4 |
台北 |
70.2 |
ソウル |
55.0 |
ジャカルタ |
53.9 |
バンコク |
45.5 |
クアラルンプール |
33.4 |
ホーチミン |
23.9 |
出典:※1(図表3-4)を参考に作成
上記データは、東京(元麻布地区)の高級住宅マンションを基準としている賃料指数です。言い換えると、ニューヨークの賃料は東京の約2.5倍という見方もできます。これは、あくまでも平均賃料の指数で判断するため、具体的な家賃ではありませんが、平均的に高騰している状況です。
大都市の賃貸物件が高いことは、エリアとしても需要と人気が高くなるため、理解に難しくないかもしれません。とはいえ、東京以上の賃料高騰は、実際に利用する人の生活を圧迫することが考えられます。
ニューヨーク市の賃料高騰状況
ブルームバーグ L.P.が運営するサイト「Bloomberg」では、2023年のニューヨーク市の賃料高騰に触れています。
2023年6月公開された同社の情報によると、ニューヨーク市の中心街マンハッタンでは、賃貸集合住宅の契約を急ぐ入居者が増えているとのことです。2023年5月の新規契約する入居者が増えて、家賃の中央値は前年同月よりも10%上昇していると伝えています。その金額は、4395ドル(約61万円)とのことです。出典:※2
また、同社の情報では、2023年4月のニューヨーク市における住宅家賃の上昇率は、2005年の上昇率を超えていると伝えています。具体的には次のとおりです。
- 2005年10月31日:9%
- 2023年4月30日:1%
出典:※3データを参考に作成
さらに、JETROの見解では2022年10月~12月の期間によるデータからも賃料の高騰を伝えています。
米国の世帯収入中央値に対しての平均家賃割合では、ニューヨーク市が68.5%という数字です。ニューヨーク市の次に収入の家賃割合が多い地域がマイアミとなっています。ニューヨーク市は、マイアミの41.6%に比べると、20%以上の家賃が高いイメージを受けます。出典:※4
2022年後半のニューヨーク市のデータでは、世帯収入の7割弱が賃料と判断できます。たとえば、月50万円の世帯収入であれば、ニューヨーク市の平均家賃割合(68.5%)で算出すると家賃34万2500円となるでしょう。家賃が収入を圧迫している状況となっています。収入が増えない状態で家賃が上がってしまえば、困ることは当然です。
ニューヨーク市の賃料高騰には賃金の目減りが関係する
ニューヨーク市の賃料高騰は、米国の都市部における物価高も影響しています。物価は上がっていても所得が低いため、生活が苦しくなると考えられます。
米国の所得の低さは、2023年1月における賃金の伸び率で4%台半ばという状況です。4%半ばの賃金伸び率に対して、物価高の伸び率が6%半ばと高まっています。物価高は、賃料の高騰にも容赦なく影響をおよぼし、前述した収入に対しての家賃割合68.5%という状況となっています。出典:※4
米国の物価高
米国の物価は、どのように発生したのでしょうか。2022年2月に財務省が公開したコラムでは、2022年6月をピークに高い消費者物価指数を示しています。米国では、2020年5月の消費者物価指数0.1%に比べると、2022年6月では9.1%と消費者物価指数が上がっています。
その後、米国の消費者物価指数は2022年に下降しましたが、それでも2022年12月の消費者物価指数は6.5%と高い状態です。
米国の消費者物価指数の上昇は、世界的な物価の高騰が要因になるのではないでしょうか。
同資料によると、エネルギーの高騰がやや鈍化傾向ではあるが、住居関連サービスは高いインフレ状態とのことです。また、住宅関連サービスのインフレ動向については、新型コロナウイルス感染症の流行が大きく影響していると示しています。
コロナによるパンデミック(世界的大流行)期では、自粛の問題からニューヨークなどの都心部から地方に移住する人も増え、一時的な世帯数減少となりました。
パンデミック(世界的大流行)後からは、その状況から都心部に戻る人が増えてきました。都心部の世帯数が回復傾向となったため、住宅需要が増加したとのことです。その影響により、賃料も高騰し住居のインフレ率は高いままとなっています。出典:※5
世界的な物価高騰の要因
野村総合研究所(以下NRI)の見解では、米国を含む世界的物価高騰の要因が次の3つにあると指摘しています。
- 原油などの商品市況の上昇
- サプライチェーンの混乱による製品や部品の供給難化
- 感染の影響による財への消費構造の変化
これらの背景には、新型コロナウイルス感染症やウクライナ問題などが関係しています。これら3つの要因のうち、原油とサプライチェーンの問題はピークアウトしているという見解です。
NRIの公開している情報では、原油価格・原油商品市況が2022年8月を機にピークアウトしていると伝えています。また、サプライチェーンの混乱についても2022年以降終息へと向かっているとのことです。サプライチェーンとは、製品が消費者に届くまでの供給連鎖のことをあらわします。
具体的にサプライチェーンは、製品の原材料調達から製造加工、在庫管理、配送までの流れが該当します。コロナ禍のピーク時には、中国の港湾機能が低下していたため、供給が制約されたとのことです。それが原因で港湾輸送費も高騰しました。ただし、NRIの情報ではサプライチェーンの混乱は、2022年に入って終息したと伝えています。参考:※6
個人消費の構造変化
では、物価高の3つ目の要因と指摘される「財への消費構造の変化」は、どのような状況なのでしょうか。コロナ禍では、世界各国で発動した新しい生活様式が採用されました。日本でいうところの外出自粛や三蜜回避などが記憶に残ることでしょう。
その影響から、人は旅行や外食、大人数の集会・イベントなどを避けてきました。その代替として活気づいてきたことが「巣ごもり消費」です。
巣ごもり消費は、外へ出掛けないことや人に会わないことを基準にした消費行動です。つまり、外食ができない分、家庭の食事のグレードを高めるための消費。たとえば、キッチン家電や道具などの購入です。もしくは巣ごもり生活を快適にする目的で、家電だけではなく家具などのグレードアップも考えられます。
コロナ禍の巣ごもり消費は、感染リスクの低下とともにコロナ前の日常生活へと切り替わります。日本では、コロナの5類移行を機に旅行やイベントなどが再開されてきました。その影響から、自宅のグレードアップの必要性が低下して、コロナ禍の個人消費構造から次の消費構造へと移行している状況です。参考データ:※6
ニューヨークの賃料高騰から考えられること
米国ニューヨーク市の賃料高騰は、今後どのように変化していくのでしょうか。その背景となった新型コロナウイルス感染症の影響は大きかったと考えられます。
感染を避けるため、都心から移動した世帯が再度都心部に戻ることで住宅の需要が高まりました。その影響により、ニューヨーク市の賃料は高騰したとの状況です。
賃貸住宅の家賃が上がった場合、同じタイミングで賃金も上がるのであれば消費者の生活は維持できます。ところが米国では賃金の上昇は進まないため、生活苦の世帯も増えています。
本記事で紹介した海外の事情は、対岸の火事ではありません。日本でも、物価の高騰が問題視されています。とくに食料品の高騰は段階的な実施がじわりじわりと響いていると考えられます。
雇用先の企業の体力が上がらない状態での賃上げはなかなか難しいかもしれません。これからは、雇用先から支払われる給料だけではなく、収入を得ることが大切です。収入を得るためには、お金の勉強を始めてみませんか。お金について学ぶには、資産運用や投資などを分かりやすく説明してくれる場所がおすすめです。
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【出典・参照元記事URL】
※1:一般社団法人日本不動産研究所「第20回国際不動産価格賃料指数(2023年4月現在)」
https://www.reinet.or.jp/wp-content/uploads/2023/05/84c5807a62e4249518dc78e4dc09d5a7.pdf
※2:ブルームバーグ L.P.「Bloomberg」2023年6月9日
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-06-09/RVYKOGDWX2PS01
※3:ブルームバーグ L.P.「Bloomberg」2023年5月11日
https://www.bloomberg.co.jp/news/articles/2023-05-11/RUGT5JT0G1KW01
※4:日本貿易振興機構JETRO「ビジネス短信」
https://www.jetro.go.jp/biznews/2023/02/098a421302ea44ff.html
※5:財務省「米国におけるインフレ率の動向」
https://www.mof.go.jp/public_relations/finance/202302/202302m.pdf
※6:野村総合研究所コラム「歴史的な物価高騰に終わりは見えてきたか」
https://www.nri.com/jp/knowledge/blog/lst/2023/fis/kiuchi/0706
この記事を書いた人
ライター
江戸利彰(えどとしあき)
ビジネス系の記事執筆を生業として取り組むライター。
累計800記事ほどの納品を経て、現在も日々の執筆から「情報の伝え方」をブラッシュアップしています。
ソースをしっかりと取る記事作りをモットーとしており、正確な情報提供に努めています。
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