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北京の洪水はなぜ起きたのか?

北京の洪水はなぜ起きたのか?

2023年8月台風5号DOKSURIにより北京市南西都市部で大規模な洪水被害が起こりました。
大雨は未曽有の被害を引き起こし復旧には多大な時間と資金を要する事でしょう。
この記事では歴史的な洪水被害が起こった何故を解説していきたいと思います。

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中国北京の台風被害洪水はなぜ起きた?

台風5号は北京のかなり南である中国大陸の南東中央部で温帯低気圧に変わりその後北上しつつ一帯に長雨を降らせ続けました。
7月29日から8月1日までの3日間降り続くあめの雨量たるや740ミリ、多い所で1000ミリを超えるところもあったと言われています。
雨の降る量を表現する際に何ミリというのを扱うのをよく見ますが、これは時間当たりの雨量と1日当たりの雨量で表現される事があります。
740ミリ超えというのは3日間ですから、1日あたりで250ミリほどという事になりますね。
日本の天気予報で言われる大雨は1時間当たりの雨量が20ミリを超えたものを言います。
夏のザーザーと雨が降る様子をイメージ出来ると思いますが、それが20ミリ程度の雨です。
大雨で横殴りの台風などの際の雨量が30ミリ毎時で目の前が真っ白で何も見えない雨と言われているのが50ミリ毎時の雨量です。

日量250ミリともなると毎時20ミリ超えの雨がずっと続いている事になります。
これが3日間ずっとという事です。
相当の雨量である事が分かります。
この長雨により中国各地で洪水被害が発生しています。
特に話題に挙がっているのが北京です。
中国首都である北京での洪水被害は甚大で、被害から一週間たつ今でも全容は分かっていません。
ツイッター上では現地の様子が大量にUPされています。
そこにはとても信じられないような光景が広がっています。
一体北京で何が起こったのか考えていきたいと思います。

140年に一度の豪雨が北京に迫る

北京は中国大陸の北部に位置しており西側、北側を山に囲まれています。
丁度窪んだ谷のようになっており、山側で雨が続くと平地に流れ込む地形になっています。

今回被害があったのは北京市南西部の広い地域になるようです。
北京の治水対策としては上流の都市で河川を氾濫させてしまう施策を取っています。
すぐ南にタク州市という都市があり、川上のダムを放水した事によりこの街でも被害が出ています。
北京市での水害への対策としてダムを放水したのですが、放水した水が川下のタク州に被害を出してしまいました。

北京市で被害を出さないために近隣の河北省で水害を発生させたようなものです。
河北省では100万人以上を非難させて、人為的に河川の水を引き込ませました。
それでも北京市で甚大な浸水被害が出ているのですから、相当な事態だと言えます。

北京市ではこれまで目立った台風被害も無く、洪水被害に遭う事もそうそうありませんでした。
台風は中国大陸の北側まで北上する事は稀でしたし、今回も台風自体は温帯低気圧に変わっていました。
中国北部は乾燥した地域で水不足の方が問題になりがちです。
毎年7月下旬に雨が増えるので洪水などの災害が無い訳ではありませんが、北京市では珍しいことで、今回の出来事は寝耳に水だったと言えそうです。

今回の大きな洪水被害は普段水害の起こらない都市に対して不意に訪れた災害だったため想定を大きく超えた被害に繋がったものと考えられます。

洪水のメカニズムとは?何故起こるのか?

洪水の起こるメカニズムがどういったものなのか考えてみたいと思います。
雨が降ると下水路を通り河川に流れ、海に流れていきます。
降水量が下水路で受容し、河川を流れていく水量分だけであれば洪水になりません。
河川を流れていく水の量には限界がありますので、流れていく量を超えるだけの降水量がある場合に洪水が起こるのです。
しかし、雨量が多くても長い期間降る場合は洪水になりません。
同じ1000ミリの雨でも30日かかって降る場合は日量30ミリちょっととなり、河川は十分に雨を許容出来ます。

問題は集中して雨が降る場合です。
山崩れをイメージしてみると分かりやすかもしれませんが、森林伐採などではげ山になると大雨による土砂崩れが起こりやすくなります。
これは雨を受け止める樹木や木の根が無くなり、地表や地中を水が滑り落ちるように流れていくために起こります。

都市部も同じでアスファルトで覆われた地面は降った雨を一気に下水に運びます。
そのため短期間で一気に雨が降ると降った雨が一気に河川に流れ込み、川の流れるスピードには限界がある為水害に繋がる事になります。

都市部での洪水対策の肝は「水が一気に流れない」様にする事が対策となるのです。
それでは、都市部で取れる治水対策にはどのようなものがあるのか見てみましょう。

首都圏外郭放水路

下水路の受水量を高める設備です。
雨水が一気に河川に流れ込む事を防ぎ、水量をコントロールする事を目的として建設します。
日本では埼玉県春日部市にあり16号線の地下50mに大型のトンネルが掘られています。
台風時に中川などの河川が増量した際に水量をコントロールをし、江戸川に流す事で河川の氾濫を抑える機能があります。
この地下の川は「地下神殿」の通称で知られ、巨大な地下空間は一時的な雨水の引受先として機能します。

貯水池

人口の湖の事です。
日本では彩湖が有名です。
河川の上流に作り、雨水を引き込む事で川の流れを調節する役割があります。
大雨に際しては一気に川が増水しないように調節地を使って、水量をコントロールします。

人工河川

日本では荒川が有名です。
荒川は明治の大洪水を受けて明治43年から昭和5年までをかけて作られた、人口の川です。
当時は荒川放水路と名前が付けられ、墨田川上流の岩淵水門を閉じる事で荒川に水を流す事が出来ます。
この川が出来て以降90年に渡って荒川が氾濫した事はありません。
荒川のおかげで墨田川が氾濫する事も無く、東京の治水対策に大きな効果を及ぼしています。

高規格堤防

スーパー堤防と言われるものです。
通常の堤防が川の淵に土手として作られるのに対して、スーパー堤防は街の基礎ごとなだらかな坂にして堤防を強化します。
河川の氾濫では越水と決壊があるのですが、決壊は土手の地下を水流がえぐる事で起こります。
スーパー堤防にする事でえぐられても決壊しないよう堤防そのものを拡張する事が出来るので強固な堤防となるのです。

遊水地

今回の中国の台風5号でも対策として話題に挙がった手法です。
都市部よりも上流の河川であえて氾濫を起こして下流の水量を下げる手段です。
この時水を引き込ませる土地を遊水地と呼びます。
ニュースでは人災や、河北省の犠牲のように報じられていますが、遊水地の考え方は日本でもあります。
荒川の氾濫が危惧される際には埼玉県の遊水地を使い、いよいよとなれば都心上流で決壊させるでしょう。
なので、今回の北京市のために河北省の遊水地に水を引き込んだこと自体は治水対策としては考えられる施策ですし、特別異常な事ではありません。

北京の洪水は今後どうなっていくのか?

東京は世界でも水害に弱く、地質は沼や砂で河川も多く台風の被害が頻発する都市でした。
それが、今日では治水工事により水害の起こらない都市となりました。
記憶に新しい令和2年の台風18号ハギビスでも箱根で964ミリという大雨を記録したにも関わらず、東京での被害は殆どありませんでした。
二子玉川の人災と呼ばれた越水が起こった事が記憶に新しいですが、他には何の被害もありませんでした。
全国では何千棟も床上浸水したのにです。

北京では治水対策の不足が指摘されていますが、治水工事には自治体のコンセンサスが必須です。
被害が無いのに工事ばかりしようとしても反対する人が多い事は想像出来るかと思います。
東京の高規格堤防も民主党政権時には一度工事を取りやめる事になりました。
被害も無いのに工事で対策を取るなんて無駄であるという論理です。
しかし、対策は功を奏して近年の異常気象でも東京は耐えています。

北京で治水工事が進まなかった事はしょうがない面があるという気もします。
中国全土を見れば水害の起こる街は無数にあります。
被害があれば対策のコンセンサスが取れますが、無事であるうちは無駄な工事と批判を呼びやすいのです。
今回の北京の水害を受けて、当然治水工事が進む事でしょう。

起こってから対策不足を指摘する事は非常に簡単に思えます。
甚大な被害を出した北京の大雨ですが、中国首都圏の治水対策を考える切っ掛けになったとも言えます。

かつての東京がそうであったように、この後どうしていくかが重要な課題となりそうです。

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この記事を書いた人

佐藤大介

ライター

佐藤大介(さとうだいすけ)

ウルトラ金融大全局長
ウルトラ金融大全の監修を務めます。
金融リテラシーを高める為、セミナー講師として活動。
「超一流の口だけ男」と評される氏のセミナーは非常に分かりやすく、何度も受講するファンが沢山います。
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