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資産運用
地方債とは?購入のメリット・デメリットを知ろう
地方公共団体が発行する債券である「地方債」。あまりなじみのない金融商品かもしれませんが、実はさまざまな自治体が定期的に発行しています。「株式よりも低リスクで運用したい」、「投資を通じて地域貢献したい」という人は、地方債への投資を検討してみましょう。本記事では、地方債を購入するメリット・デメリットについて解説します。
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目次
1.地方債とは
まずは、地方債の概要や直近の発行実績について学んでいきましょう。
1-1.地方債の仕組み
地方債とは、地方公共団体が発行する債券のことです。都道府県が発行する「県債」や、市町村が発行する「市債」などがあり、毎年多くの自治体が発行しています。国が発行する「国債」の地方バージョンだと考えると分かりやすいでしょう。
地方債で募った資金は、主に水道やガス、交通などのインフラ整備に充てられるため、投資家は資産運用を通じて地域貢献ができるメリットがあります。
また、地方債には「市場公募地方債」と「銀行等引受地方債」の2種類がありますが、一般の個人投資家が購入できるのは「市場公募地方債」です。満期までの期間は2年~30年とさまざまなあるものの、5年満期や10年満期で発行されるものが多い傾向にあります。
1-2.地方債の発行実績
では、地方債はどのような条件で発行されているのでしょうか。下記表は、東京都が2023年2月に発行した都債(第836回)の商品概要です。
【東京都公募公債第836回】
発行体 |
東京都 |
発行総額 |
200億円 |
利率 |
0.740% |
満期 |
10年 |
発行日 |
2023.2.27 |
償還日 |
2032.12.20 |
格付(S&P) |
A+ |
金利は0.740%(固定)で、毎年2月と8月の年2回利息が支払われます。仮に100万円投資をすると、税引前で年間7,400円の利息が入る計算です。同時期に募集された個人向け国債(10年)の適用利率は0.32%であるため、上記の都債は2倍以上の利率を受け取れることとなります。
また、注目すべきは「地方債の利率が上昇傾向にある」という点です。2022年度に募集された都債の利率の推移について、下記の表で確認してみましょう。
【2022年度発行の都債(10年)利率推移】
発行月 |
発行回 |
利率 |
2022年4月 |
第826回 |
0.289% |
5月 |
第827回 |
0.294% |
6月 |
第828回 |
0.304% |
7月 |
第829回 |
0.344% |
8月 |
第830回 |
0.275% |
9月 |
第831回 |
0.369% |
10月 |
第832回 |
0.439% |
11月 |
第833回 |
0.429% |
12月 |
第834回 |
0.529% |
2024年1月 |
第835回 |
0.794% |
2月 |
第836回 |
0.740% |
上記の通り、都債の利率は概ね右肩上がりで上昇していることが分かります。これは地方債の基準金利である日本の国債の金利が上昇しているためです。これまで、「地方債は金利が低いから気が進まない」と敬遠していた人も、改めて地方債について検討してみてもよいかもしれません。
2.地方債のメリット
地方債の購入には、主に次の4つのメリットがあります。
・元本割れのリスクが低い ・購入手数料がかからない ・定期的に利息収入がある ・投資初心者でもチャレンジしやすい |
それぞれ詳しく解説していきましょう。
2-1.元本割れのリスクが低い
地方債のメリットとして、「元本割れのリスクが低いこと」が挙げられます。
投資をする際に最も気になるのが「どれくらいリスクがあるのか」という点です。地方債のBIS規制におけるリスクウェイトは国債と同じ0%とされており、外部機関による格付けも高い傾向にあります。
これは、地方債の発行にさまざまな制限が設けられているためです。たとえば、「実質公債費比率が18%以上の地方公共団体」は、総務大臣の許可がなければ地方債を発行することができません。
その他に、「財政赤字が生じている地方公共団体」も地方債の発行に許可が必要となっています。このように、地方債は安全に元本が償還されるように事前に制限を設けているのです。
もちろん「絶対に元本が戻ってくる」と言い切れるわけではありませんが、株式投資や投資信託に比べると、ローリスクでの資産運用が実現できるでしょう。
2-2.購入手数料がかからない
地方債は、購入手数料がかからないことも特徴です。
地方債を購入するときは、購入代金だけで手続きができるため、投資にあたってのコストを考慮する必要がありません。金融商品によっては購入や保有に手数料がかかり、「結果的にあまり利益が取れなかった」ということもあります。
その点、地方債では投資コストがかからないため、最終的な利回りをあらかじめ把握することが可能です。
「なるべく手数料をかけずに投資をしたい」、「最終利回りを踏まえたうえで投資をしたい」という人は、地方債への投資が向いているといえます。
2-3.定期的に利息収入がある
地方債は、「定期的に利息収入があること」も大きなメリットです。
地方債は一般的に年2回の利払いがあり、発行時に定められた固定金利に基づいて金利が支払われます。
たとえば、金利が0.7%の地方債に200万円投資した場合、税引前で年間1万4,000円の利息を受け取る計算です。利息は2回に分けて支払われるため、1回あたりの利息は7,000円となります。
地方債は比較的長い満期のもと発行されるため、定期的に利息収入があることは投資の楽しみにもなります。「売買による利益だけではなくて、保有中も利益を得る機会が欲しい」、「給与以外にも定期的な収入が欲しい」という人は、地方債への投資を検討してみましょう。
2-4.投資初心者でもチャレンジしやすい
地方債は、国債と同様の仕組みの金融商品であることから、初心者でもチャレンジしやすいメリットがあります。
基本的に投資家は満期まで保有し、期間中に利息を受け取るだけでよいため、専門的な投資知識やマーケットを先読みする力も不要といえます。
また、源泉徴収ありの特定口座で購入すれば、税金も差し引かれることから原則確定申告も不要です。
投資と聞くと、「経済に詳しくなければ挑戦できない」、「マーケットを常に注視しなければならない」というイメージがあるかもしれませんが、地方債であれば投資経験のない人でもスムーズに取り掛かれるでしょう。
3.地方債のデメリット
さまざまなメリットがある地方債ですが、一方で次のようなデメリットも存在します。
・大きな利益を得るのは難しい ・中途換金をすると元本が割れる可能性がある ・償還期間が長い傾向にある |
それぞれ詳しく解説していきましょう。
3-1.大きな利益を得るのは難しい
地方債はローリスクローリターンの金融商品であるため、大きな利益を得るのは難しいといえます。
2023年2月に発行された地方債を例に、利率を確認してみましょう。
【2023年2月発行の地方債(10年)】
発行体 |
利率 |
福岡市(グリーンボンド) |
0.760% |
埼玉県 |
0.745% |
愛知県 |
0.740% |
北海道 |
0.740% |
新潟 |
0.740% |
相模原市(グリーンボンド) |
0.720% |
概ね0.7%程度の利率となっており、株式投資や投資信託と比較すると決して高利回りとはいえません。
そのため、「リスクを取って高利回りを追求したい」という人よりも、「安定的な投資をしたい」という人に向いている金融商品です。
3-2.中途換金をすると元本が割れる可能性がある
地方債は中途換金が可能ですが、その際は市場の価格で売却されることとなります。したがって、市場の金利動向によっては元本よりも低い価格で売却されることも理解しておかなければなりません。
仮に、中途換金時の金利が発行時に比べて高くなっていると、債券価格が下落する要因となります。この場合は、中途換金によって元本が割れる可能性が高くなります。
そのため、基本的には「満期まで保有する」ということを前提に購入する方がよいでしょう。
なお、中途換金時の金利が発行時に比べて低くなっていると、債券価格が上昇するため、中途換金によって売却益が得られることもあります。
3-3.償還期間が長い傾向にある
地方債は2年~30年とさまざまな償還期間がありますが、基本的には5年もしくは10年満期で発行されることが一般的です。その間の中途換金は可能ですが、前述の通り金利動向によっては元本割れを引き起こす可能性もあります。
満期まで保有することを前提に考えると、「投資期間が長いな」と感じる人もいるかもしれません。
ただし、中には5年未満の満期で発行されるケースもあります。「短期間の債券なら投資したい」という人は、事前に発行予定を確認しておくことがおすすめです。
地方債の発行予定については、地方債協会の公式サイトに掲載されていますので、ぜひチェックしてみましょう。
4.地方債の購入方法
地方債は、証券会社や銀行などの金融機関を通じて購入が可能です。
地方債の発行には、それぞれ「引受機関」という地方債の募集・販売業務を担う金融機関が決められています。
たとえば都債では、下記の通り募集要項に引受機関の一覧が記載されています。
引受機関は、いつも同じ金融機関ではなく変更されることもありますので、発行の都度確認するようにしましょう。
引受金融機関に取引がない場合は、あらかじめ普通預金口座および特定口座の開設手続きを行っておくと、購入手続きがスムーズに進みます。
5.まとめ
地方債は、毎月さまざまな地方公共団体が発行しており、個人でも証券会社や銀行を通じて購入が可能です。
あまりなじみがない人も多いかもしれませんが、地方債には「元本割れのリスクが低い」、「定期的に利息収入がある」などさまざまなメリットがあります。ローリスクで運用できるため、株式や投資信託とは別の分散投資先としてもよいでしょう。ぜひこの機会に、新たな投資先として地方債を検討してみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
ライター
椿 慧理(つばき えり)
銀行を10年間勤務し経験を通じて得た金融知識を活かし、金融ライターとして独立。
金融商品やマーケットの解説、税制解説など初心者にも分かりやすい記事を手掛ける。
自らも12年の投資経験を持ち、国内外株式、投資信託、暗号資産を運用中。
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、内部管理責任者
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