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原油価格の高騰が日本経済に与える影響!価格調整の理由とは?
自動車(ガソリン車もしくはハイブリッド)が移動手段の人にとっては、「原油高騰=ガソリン代の高騰」を予想することでしょう。
都内在住で自動車が移動手段ではない人にとっては、「原油が上がってもガソリンも灯油も使わないから関係ない」と思っている人はいませんか。
日本で輸入する石油は、あらゆる産業に関係します。そのため、原油価格の高騰は消費者物価の上昇で家計がひっ迫状態になる悪影響も考えられるでしょう。出典:※3
今回は、原油価格について、影響する対象や昨今の中東情勢、直近の価格推移などを解説します。原油価格は、日本国内の事情を基準にして判断するわけではなく、原油の輸入先の事情などが大きく影響するため、角度を変えた見方は必要です。
原油価格が日本経済に影響する部分を解説するので、ぜひお役立てください。
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目次
2023年の中東紛争と原油価格の状況
ロイター通信では、中東で起きているイスラエルとイスラム組織ハマスの紛争について、経済への影響を解説しています。
中東での衝突により、米国は原油価格への影響は注視しているとのことです。原油価格は、イスラム組織ハマスがイスラエルを攻撃した直後の急騰から持ち直して、11月8日時点で1バレル75ドル程度まで下がっています。この原油価格は、2023年7月以来の安値だと伝えています。出典:※1
最近では、ロシアによるウクライナ侵攻が続く中、中東ではイスラエルとイスラム組織ハマスの衝突があり、さまざまな臆測を呼んでいる状況です。経済的な影響を懸念する部分は、原油価格の動向と伝えられています。原油価格は、中東紛争の発展次第では大きく変動する点がポイントとのことです。
野村総合研究所(以下NRI)の公開した2023年10月13日付けのコラムでは、イスラエルの報復攻撃が続く状況において、金融市場への影響が大きくないと判断しています。
しかし、今回の紛争の影響でイスラエルとサウジアラビアの国境正常化が進まなければ、別の見解が示されていました。国境の正常化が進まない場合は、サウジアラビアによる原油増産は見送られると伝えられています。そのような状況になれば、原油価格の高騰は避けられないでしょう。出典:※2
原油価格の動向は、中東の複雑な歴史も大きく影響していると考えられます。日本は、石油を輸入しなければあらゆる産業が影響を受けるため、由々しき問題であることは間違いないでしょう。
原油市場の展望による見解
株式会社日本総合研究所(以下JRI)が公開している2023年11月の「原油市場展望」では、地政学リスクで高まる供給不安が示されています。
中東では、イスラム組織ハマスのイスラエル奇襲攻撃を機に、原油市場の不安定な状況となりました。原油の供給に不安定さを感じる要因として、中東全体が混乱し、原油供給の停滞を懸念している点が伝えられています。出典:※4
需要が高まれば、需給バランスが崩れ価格高騰を起こすのは仕方のないことです。同資料では、現段階では戦線の拡大が限定的との見方となって、供給不安は加速していません。今回の中東での紛争が原油産国ではないことで希望的な観測になっているのでしょうか。
ただし、今回の紛争に原油産国が関われば話は別です。JRIによる原油市場の展望も地政学リスクの動向次第と考えられます。もし、戦況が拡大した場合は1バレル100ドル前後まで上昇するという見通しです。出典:※4
原油価格の動向は、NRIやJRIの見解も今後の戦況拡大次第という見通しですね。原油産国からの供給不安は、世界的な関心が集まる部分です。石油を輸入している日本でも例外ではなく、今後の戦況は注視されるでしょう。
原油価格の推移
では、日本国内に目を向けてみましょう。日本に輸入された原油の価格(円)は、東京くらしWEBで公開しています。直近で発表されている推移データは、2022年9月から2023年9月までの原油価格(日本に輸入した原油の価格)です。
2022年9月 |
97,571 |
2022年10月 |
96,750 |
2022年11月 |
92,419 |
2022年12月 |
82,551 |
2023年1月 |
73,336 |
2023年2月 |
72,049 |
2023年3月 |
72,488 |
2023年4月 |
69,448 |
2023年5月 |
73,610 |
2023年6月 |
71,957 |
2023年7月 |
72,095 |
2023年8月 |
73,569 |
2023年9月 |
79,650 |
※単位:円※3のデータをもとに作成
2023年9月の原油価格は、前年比18.4%の減少となっています。出典:※3
このデータは、イスラエルとイスラム組織ハマスによる中東紛争が起きる前の原油価格です。2023年10月以降の原油価格は、前年同月となる2022年10月から下落したような動きを期待できるでしょうか。もしくは、中東情勢が厳しくなることで、原油価格の高騰が現実となるかもしれません。
希望的な観測をしたいところですが、地政学的なリスクはどのような展開となるかは見守るしかなさそうですね。
原油価格が経済にどのような影響をもたらすか
中東で起きている武力衝突は、日本に住む人々からすれば傍観するしかない状況です。しかし、石油を輸入している日本は、戦況の変化などから価格高騰という経済的な影響を受けます。ここでは、原油価格が日本経済にもたらす影響を解説します。
日本は、化石燃料(石炭や石油、天然ガスなどのエネルギー資源)を輸入に依存している状況です。原油の取引価格が変動すれば、物価への影響は小さくありません。出典:※5
エネルギー資源を他国に依存している状況では、原油産国のある地域での衝突危機は対岸の火事ではありませんね。そのように考えると、不安ばかりが先立ってしまいます。
原油価格の高騰は日銀の金融政策を後押しする
原油価格の高騰は、日本銀行(以下日銀)も注視しています。ロシアによるウクライナ侵攻は、原油価格や材料価格の高騰を招きました。現在もその影響による物価高は続いている状況です。
そこに、中東の戦況悪化が加わることで、さらなる原油価格の高騰や原油をあつかう製品の高騰が懸念されます。原油価格の高騰で物価高が加速すれば、企業への賃上げを後押しすることになるでしょう。その背景には、日銀が2024年前半に目指す物価安定目標があります。出典:※6
- 期待インフレ率2%
- 家計が許容できる値上げ率2%
- 企業の賃上げ2% 出典:※7
物価高が加速すれば、日銀にとって企業への賃上げ要求の追い風となる見通しです。原油価格の高騰は、賃上げで物価安定2%のバランスを目指す日銀の金融政策達成の材料にもなるでしょう。そのように考えると、原油価格の高騰は消費者の負担ではなく、国の政策として取り扱うことが考えられます。
電気代とガス代は政府支援が2024年4月まで続く
前項で指摘した、原油価格の高騰を国の政策として行う動きは、すでに実施されています。その動きとは、電気代やガス代が高騰している部分を政府が負担する「電気・ガス価格激変緩和対策事業」のことです。
「電気・ガス価格激変緩和対策事業」は、2023年1月より政府による物価高対策として行われています。当初は、2023年12月までの予定でしたが、2024年4月まで延長するとのことです。
先述したように、わが国日本は化石燃料を他国から輸入している状況です。そのため、電気やガスも他国から輸入する資源エネルギーがなければ、作れないという認識になっています。
政府は、総合支援対策として一般家庭や企業で使う電気代やガス代の負担軽減につながる補助金を交付しています。その交付先は、電気や都市ガスの小売業者です。小売業者は、補助金分を電気代やガス代の値引きにあてています。
その結果、負担軽減策期間の利用料金の値上げは、抑えられるという判断です。出典:※8
ガソリン代の高騰も調整が続く
原油価格の高騰が直接影響するガソリン代に関しては、政府からのガソリン補助金で価格は調整されてきました。補助金の目安は、ガソリン1リットルあたり170円台という調整内容とのことです。
当初は、2023年9月末日までの対応としていましたが、原油価格は高止まりしている(下落していない)との見通しで補助は、2023年12月末日まで延長されています。出典:※9
ガソリン代についても高騰がいつまで続くか明確な回答のない状況です。中東情勢なども懸念されれば、政府の出方も注目されるでしょう。
太陽光発電も対策として考えられる
ここで対策として浮かぶことが太陽光発電による自給自足です。オール電化の住宅であれば、太陽光発電でまかなえれば、高騰する電気代やガス代への対策にもなるでしょう。
ただし、太陽光発電は設備投資やメンテナンスなども必要です。数年単位で使う理由から、具体的な累積効果は数年後に判明するでしょう。
日本経済の動向は2024年春ごろに判明すると考えてみた
今回調査したデータから、日本経済の行方は2024年春ごろまで持ち越すのでは?とも判断しています。その理由は、オブラートで包むようなイメージとも捉えています。原油価格高騰の対策の延長期限にヒントがあるのではないでしょうか。
電気代・ガス代の価格調整となる「電気・ガス価格激変緩和対策事業」やガソリン代の価格調整にあたる「ガソリン補助金」は、2023年中は続きます。
2024年に入り、地政学リスクの状況次第で政府の判断が負担軽減政策として反映されるでしょう。そのような視点で考えると、目先の生活負担だけが軽くなっているとも判断してしまう今日この頃です。
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【出典・参照元記事URL】
※1:ロイター通信「中東紛争の原油価格への影響注視=米CEA委員長」
※2:野村総合研究所(NRI)「中東情勢悪化で原油価格が急騰する件」
※4:株式会社日本総合研究所「原油市場展望|2023年11月」
※6:株式会社第一生命経済研究所「原油高・円安が促す物価上昇」
※7:三菱総合研究所(MRI)「2%の物価上昇は定着するのか?」
この記事を書いた人
ライター
江戸利彰(えどとしあき)
ビジネス系の記事執筆を生業として取り組むライター。
累計800記事ほどの納品を経て、現在も日々の執筆から「情報の伝え方」をブラッシュアップしています。
ソースをしっかりと取る記事作りをモットーとしており、正確な情報提供に努めています。
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