公開日:
不動産
残価設定型の住宅ローンはメリットがあるのか?仕組みを解説
働き方が多様化している現代では、人生設計も多様化しています。それは、ローンの組み方にもあらわれています。人生の中で大きな買い物とも言える住宅購入では、住宅ローンが重要な鍵を握っています。住宅ローンを組む場合は、人生設計に適した計画が必要です。
最近では、残価設定型住宅ローンという商品が銀行であつかわれるようになっています。残価設定型の住宅ローンとは、どのような仕組みでしょうか。今回は、残価設定型住宅ローンの仕組みや、メリットとして考えられる点とデメリットとして注意すべき点を紹介します。
ウルトラ金融大全が動画で見れる!
お金の事が分かる!増やせる!無料動画が公開中!
目次
残価設定型のローンとは
横浜市の公開している取り組み報告では、残価設定型の住宅ローンについて次のような説明を確認できました。
残価設定型住宅ローンは、将来の買取保証額(残価)を差し引いた金額が住宅ローンの対象になるローンの仕組みです。出典:※1
残価設定型住宅ローンは、将来の買取額を設定することで従来の住宅ローンと比べてローン対象額が軽減されます。
従来の住宅ローンであれば、住宅購入に必要な金額(または不足金額)を借りるイメージです。残価設定型住宅ローンの場合は、住宅を購入したときの借入額と住宅価値の査定残価(設定された残価)を差し引いた差額で返済します。残価設定型住宅ローンのポイントは、次のキーワードです。
買い取り保証額=残価(将来の資産価値)
ここで単純に、良質な高性能住宅であれば買取保証額も大きくなることが考えられます。要するに、将来の資産価値が高ければその分を住宅ローンから差し引けるため、ローン金額は軽減できます。
長期優良住宅
大和ハウス工業株式会社の見解では、2020年度に建てた新築一戸建ての25%が長期優良住宅とのことです。長期優良住宅は、地球環境にやさしく高品質で長期間住み続けられる住宅のことと示しています。出典:※2
国土交通省の見解では、長期優良住宅は、建築や維持保全の計画を作成および申請して、所管行政庁に認定された住宅のことです。基準は、長期にわたり良好な状態で使用できる住宅であれば、資産価値を維持できるという判断ではないでしょうか。長期優良住宅は、次の時期から認定開始しています。出典:※3
- 新築:平成21年6月4日より認定開始
- 既存住宅の増築・改築:平成28年4月1日認定開始
出典:※3
残価設定型住宅ローンが注目される背景
残価設置型住宅ローンが注目される背景には、少子高齢化や老後問題などさまざまな現代の状況が関係してきます。
たとえば、30代でマイホーム(マンション)を購入した夫婦が定年後まで返済が必要な35年ローンを組んだとしましょう。1年先や2年先が見えてこない不確かな現代では、50代60代の収入状況に不安も考えられます。
中には、「マイホームは欲しいけれど、住宅ローンに束縛される生活はしたくない」と考える人も少なくないでしょう。そのような人は、「家に縛られるくらいならば、賃貸暮らしのほうが気楽」と考える人もいます。
残価設定型住宅ローンは、そのような時代ニーズに合わせたオプションを利用できます。仕組みについて後述しますが、60代以降の返済能力が低下した時期に返済金額の軽減もできる住宅ローンです。出典:※4
残価設定型住宅ローンの仕組み
残価設定型の住宅ローンは、どのような仕組みになっているのでしょうか。一般社団法人移住・住みかえ支援機構(以下JTI)の見解をもとに解説します。残価設定型住宅ローンは、2つのオプションを付加しているサービスです。どちらも借主が権利を行使できます。仕組みは、JTIの提案書例を参考に解説します。
残価設定型住宅ローンの借主の例 |
● 住宅購入時年齢:35歳 |
【プラン1】 ● 残価設定月:317カ月 |
【プラン2】 ● 残価設定月:240カ月 |
出典:※4に掲載されている2つの残価設定型住宅ローンプランを参照して作成
返済額軽減オプション
返済額軽減オプションは、行使により残価設定月から通常の住宅ローンより返済額が軽減された金額へと変わります。たとえば、35歳の会社員が約4800万円の住宅ローンを35年で組んだ場合、70歳まで支払わなければなりません。その際、当初設定している月々の支払額が14万5000円だとしたら、定年後の10年間の支払いハードルは高くなるでしょう。
JTIで公開している提案書例では、返済軽減オプションを活用により、月々の支払14万5000円から61歳以降の月々の支払いが4万4000円まで軽減されています。ただし、支払総額が減ったわけではなく、死亡時の一括返済や買取オプションで借主の死亡までローンを借りていられる仕組みに変更しただけです。
同提案書例では、85歳以降も月々1万1000円の返済が設定されています。つまり、借主が死亡しない限りローンは続くという設定で返済額は大幅に減額できる仕組みです。出典:※4
買取オプション
買取オプションは、設定された残価設定月以降いつでも行使できるオプションです。JTIで公開している提案書例では、残価設定月が317カ月に設定されている例を紹介しています。35歳で住宅ローンを借りた場合、317カ月であれば約26年4カ月目が残価設定月です。年齢にすると、61歳となります。
要するに、同提案書例から判断すると61歳以降であれば残債と引き換えでいつでも家を手放せるというオプションです。ちなみに、買取オプションは借主死亡の際も相続人が行使できます。出典:※4
移住住みかえ支援機構はマイホーム借り上げを事業としている
JTIは、マイホーム借り上げを主な事業としている非営利団体です。そのため、借主に対して無理なリフォームのあっせんや契約などは行いません。住宅メーカーからの依頼で残価保証を提供しています。その際は、借主や住宅ごとの残価設定月やその時点で設置される買取保証額の査定を行うと伝えています。出典:※4
残価設定型住宅ローンのメリット
残価が差し引かれる残価設定型住宅ローンの場合は、月々の返済額を抑えられるメリットを持っています。同月残価保証があるため、住宅ローン完済後の「物件を売却したいのに売却できない」という心配は不要です。JTIで説明されている買取オプションを行使すれば、その時点の住宅ローン残高で買い取ってもらえます。出典:※4
残価設定型住宅ローンのデメリット
残価設定型住宅ローンは、「住宅を手放さない」という目的であれば、差し引かれた残価を支払う必要があります。住宅購入費用を値引きできるわけではありません。結局のところ、住宅購入費用を全額支払わなければ「自分の家にならない」ということです。
残価設定型住宅ローンの仕組みでも説明したように、残価設定型の返済額軽減オプションを行使することで85歳以降は元本据え置きの状態の返済が続きます。要するに、借主は、買取オプションで残価を返済しない限り、元本は残ったまま利息だけ支払わなければなりません。ローン契約者は、自身の人生計画をふまえて判断する必要があります。出典:※4
残価設定型住宅ローンの注意すべき点は、住宅ローンで組んだ借金が減るわけではないということです。逆に、長生きをすれば返済期間が延びる仕組みになっています。ただし、月々の返済額は、残価設定月以降から格段に減額されるため、負担軽減が期待できるでしょう。
残価設定型住宅ローンは老後の身軽さを考えている人に役立つ仕組み
残価設定型住宅ローンは、将来の住宅ローン完済後に購入した物件に固執していない人向けの返済額軽減方法ではないでしょうか。子育てを終えた世帯であれば、家族がひとり立ちする時期に住宅ローンの返済が終わる場合も考えられます。夫婦ふたりの暮らしでは、マイホームが広すぎて小さな物件への住み替えを検討するかもしれません。
そのような老後も、残価設定型住宅ローンで返済額の軽減ができれば月々の支払いも押さえられます。もしくは、死亡時一括返済で買取オプションの残価をひとり立ちした子どもに委ねることもひとつの方法です。
人生100年時代といわれている現代では、80歳90歳と長生きすることも考えられます。残価設定型住宅ローンは、老後の生き方に役立つかもしれません。今回は、残価設定型住宅ローンについて、仕組みやメリット、デメリットなどを解説してきました。
残価設定型住宅ローンは、不安な老後よりも身軽な老後を迎えられる選択肢としても考えられるのではないでしょうか。
ウルトラ金融大全が動画で見れる!
お金の事が分かる!増やせる!無料動画が公開中!
【出典・参照元記事URL】
※1:横浜市「横浜市の取り組み状況」
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/sumai-kurashi/jutaku/shiryo/fuzoku/juseishin/juseishin7.files/2021070904pawapo.pdf
※2:大和ハウス工業株式会社「将来の安心を選べる新たな住宅ローンとは?」https://www.daiwahouse.co.jp/tryie/column/build/residual_value_payment/
※3 :国土交通省「長期優良住宅のページ」
※4:一般社団法人移住・住みかえ支援機構「残価設定型住宅ローン利用者フォーラム」
https://zanka-simulation.jti.or.jp/
この記事を書いた人
ライター
江戸利彰(えどとしあき)
ビジネス系の記事執筆を生業として取り組むライター。
累計800記事ほどの納品を経て、現在も日々の執筆から「情報の伝え方」をブラッシュアップしています。
ソースをしっかりと取る記事作りをモットーとしており、正確な情報提供に努めています。
おすすめの記事