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一帯一路構想の基本を解説、日本の関わりは?

一帯一路構想の基本を解説、日本の関わりは?

一帯一路構想という言葉をご存じでしょうか。その言葉の意味は、中国から発祥した陸路と海路から形成される2つのシルクロード構想をあらわします。もともと、諸外国がインフラを整備する目的で始まった中国資本の経済構想です。

一帯一路構想には、政治的な思惑や各国の事情が絡み合っているため、ひと言では語れません。そのような理由からも、まずは基本的な入り口部分について調査してみました。

今回は、一帯一路構想の意味と、始まってからの流れについて解説します。また、一帯一路構想の現状と日本の関係についても調べてみました。ぜひ参考にしてみてください。

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一帯一路構想が提案されるまでの布石

一帯一路構想は、どのような流れで提案されたのでしょうか。一般社団法人平和政策研究所の見解によると、一帯一路構想の発祥期限は、1990年代とのことです。最初は、中国の辺境地域に産業政策を展開する目的で始まりました。

当初は、中央アジア諸国とパキスタン、ラオス、ミャンマーなどが経済圏の範囲でした。これらの地域で交易の活性化を目的に始まった状況です。同資料によると、その後次のような流れで進みます。

  • 2006年:カザフスタンと中国を結ぶ天然ガスパイプライン建設
  • 2009年:トルクメニスタンと中国を結ぶ天然ガスパイプライン建設
  • 2009年:重慶 独国デュースブルクをつなぐ鉄道工事着手
  • 2011年:同工事完了により開業

そして、2013年9月に習近平政権が発足しました。習近平国家主席は、政権発足後のカザフスタン訪問中に提案した「シルクロード経済ベルト構想」のことが一帯一路構想とのことです。

習近平国家主席が提案した中国初のアジア、ロシア、欧州、ユーラシア大陸をつなぐ経済ベルト構想の始まりとなりました。出典:※1

一帯一路構想とは

一帯一路構想は、歴史を振り返ると国と国との関係性が影響していると考えられます。諸外国の事情の中でも一帯一路構想の主導国である中国の内情は、不明な部分もあるので一般人でも分かりやすい解説が必要と考えました。

そのような理由から、一帯一路構想のことを順序だてて説明します。一帯一路構想は、次の2つのルートで進められています。

  • 一帯は陸路のこと:中国の西側から中央アジア、欧州へとつながる陸上地域
  • 一路は海路のこと:東南アジアからアフリカ大陸東海岸までの海上ルート

一帯一路構想の対象地域は、次のように拡大しています。

  • 東アジア
  • 中央アジア
  • 東南アジア
  • 中東
  • アフリカ
  • 東欧
  • 南米

2020年11月時点で中国が協力の協定を交わした国は138カ国および30の国際機関と伝えられています。ただし、協力国の公式発表はされていません。また、インドおよび米国、日本は構想の対象外となっていて、2019年にイタリアが参加しました。出典:※8

一帯一路構想の目的

一帯一路構想は、アジアと欧州を陸路(一帯)や海路(一路)でつないだ物流ルートの形成が目的とのことです。その裏には、貿易の活性化や経済成長への発展があります。古い歴史がある中国は、シルクロードの復刻版を提案して、参加国の参加を呼びかけているのではないでしょうか。

シルクロードの時代は、中国とヨーロッパが絹の交易路として使われていました。現代のシルクロードである一帯一路構想は、2つのルート(陸路と海路)でつながるイメージです。構想としてのイメージは次のように示されていました。

西安(陸路)→ウルチム(陸路)→イスタンブール(陸路)→モスクワ(陸路)→ベネチア(陸路)→中国へ(海路)出典:※3

上記イメージは、あくまでも構想であって、実際はルートがひとつだけではなく6つほどある(6回廊)と伝えられています。鉄道や道路などを整備して複数のルートで交易の拡大が進められたとのことです。

一帯一路構想の目的は、欧州とつなぐルートで協力国との経済関係の強化ではにでしょうか。習近平国家主席は、一帯一路構想に向けて鉄道の整備を重視したとのことです。その理由は、自動車による輸送と比べて貨物列車の大量輸送をできるが考えられます。

鉄道強化の取り組みは、貨物列車の運行本数にあらわれています。2011年から開始された「中欧班列(中国と欧州を結ぶ貨物列車)」は、開始当初の17本から2021年には15,183本まで増えている状況です。出典:※2

一帯一路構想のビジョンとアクション

日本総研の見解によると、一帯一路構想は米中関係の悪化も関係して西進策(西側へ拡大する構想)で進められると指摘しています。一帯一路構想の具体的な「ビジョンとアクション」は、2015年3月に中国政府より公表されています。具体的な「ビジョンとアクション」は次の4つです。

一帯一路構想「ビジョンとアクション」

構想発足当初との違い

地理的な範囲

●     古代シルクロードに該当する国と限定しない
●     アフリカ大陸の追加
●     南太平洋の追加

国際経済協力回廊(一帯一路のルート)

6つの回廊(ルート)建設の推進
交通、通信、エネルギーの大型案件を優先

資金供給枠組みの拡充

国際開発金融機関の開業準備の加速
資金調達の支援(債券発行)

内陸部振興

方向性の明確化

出典:※2「図表3を参考に作成」

6つの回廊

日本総研の見解によると、一帯一路の「ビジョンとアクション」で示す6つの回廊は、次のルートと指摘しています。

  1. 中国~モンゴル~ロシア
  2. 中国~中央アジア~西アジア
  3. 中国~インドシナ半島~中央アジア~西アジア
  4. 中国~インドシナ半島
  5. 中国~パキスタン
  6. バングラデシュ~中国~インド~ミャンマー

出典:※2

国際開発金融機関

中国政府は、習近平国家主席の「世界銀行やアジア開発銀行だけでは対応が不十分」との呼びかけに、アジアインフラ投資銀行(AIIB)の設立を進めました。他にも2014年12月に設立した「シルクロード基金」などの支援拡充策を進めています。出典:※2

2017年開催の第1回一帯一路国際協力サミットフォーラム

中国政府は、2017年に北京で第1回一帯一路国際協力サミットフォーラムを開催しました。当時の参加国は130以上でそのうち29カ国が国家元首クラスの参加となりました。参加した国際機関は70以上で開催されて同フォーラムから中国の影響力の高さを世界へアピールする形になりました。ちなみに、2017年をピークとして中国の一帯一路の取り組みは弱くなっていくと伝えられています。出典:※2

構想の規模

一帯一路構想の規模は、2016年中国の発表では アジアインフラ投資銀行とシルクロード基金、国家開発銀行を経由してプロジェクトに9000億ドルが配分されているとのことです。2021年には、参加144カ国により595億ドルの融資や投資が行われました。出典:※6

2023年の一帯一路構想の状況

では、一帯一路の現状はどのようになっているのでしょうか。ロイター通信より公開された2023年9月7日配信の内容では、150以上の国および30の国際機関が協力署名していると伝えています。つまり、協力する国は増えている傾向が見受けられます。

さらに、2023年10月の状況は、中国北京で開催される10周年となる広域経済圏構想「一帯一路」首脳会議に90カ国の出席が得られたとのことです。出典:※5

1回目のフォーラムでは、130以上の国の参加となりましたが、今回は、参加国も参加する国際機関も減少しています。

また、先進7カ国(G7)で一帯一路に参加していた国はイタリアのみです。ロイター通信によると、「G7の足並みをそろえるためにイタリアの一帯一路からの離脱に注目されている」と指摘しています。イタリアのメローニ首相も離脱に向けているとのことです。出典:※4

日本と一帯一路構想

日本と一帯一路構想は、どのような関係があるのでしょうか。日本は、表面的な参加はしていないとの見解です。実質は、第三国市場で一帯一路構想に協力する高地となっています。日本の政府機関は、中国と第三国(新興国など)の利益になるようにプロジェクトごとの協力を取り交わしたとのことです。

要するに、表向きの協力ではなく一帯一路構想の参加する新興国への協力という間接的な内容ではないでしょうか。日本の立場の難しさをあらわしています。出典:※3

一帯一路構想を振り返って

中国の習近平国家主席は、一帯一路構想を提唱し、古代のシルクロード構想の現代版を目指しました。

一帯一路構想は、経済圏の拡大としては各国で需要の高まる構想だと考えられます。ただし、その背景には米中対立の動向が見え隠れしている気がします。海外の状況は、閉ざされた部分なども含めて臆測で捉えられる情報もあるため、判断が難しくなるでしょう。それは、政府発表の情報や専門家の情報だとしても、国家機密的な内容となれば実際のところは見えてきません。

今回のテーマとなった「一帯一路構想」は、中国主導の経済圏拡大に向けた大構想です、ただし、米中対立が深まれば日本の立場も難しくなるでしょう。そのような動きは、資産運用における投資の面で影響することも考えられます。

海外の出来事が間接的に日本へと影響することはありうる問題です。それは、ウクライナ問題やコロナの問題も生活への影響を受けてきたからです。

日本人だから国内のことだけを考えていれば大丈夫という時代ではなく、世界の状況をふまえることで鮮明になることが増えるのではないでしょうか。直近では、G7(主要7カ国)加盟国としての立場がある日本の今後が気になるところです。

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【出典・参照元記事URL】

※1:一般社団法人平和政策研究所「中国一帯一路構想の狙いと日本の採るべき国家戦略の低減」
https://ippjapan.org/archives/2646

※2:日本総研「経済政策レポート|現実路線にシフトした中国の一帯一路 ―巨大経済圏構想から持続可能な対外経済協力策へー」https://www.jri.co.jp/MediaLibrary/file/report/rim/pdf/14182.pd

※3:NHK「大学生とつくる就活応援ニュースゼミ|1からわかる!中国『一帯一路』ってなに?【上】改訂版」
https://www3.nhk.or.jp/news/special/news_seminar/jiji/jiji22/

※4:ロイター通信「伊首相、一帯一路離脱するかどうかの『最終決定はこれから』」
https://jp.reuters.com/world/china/VJV6SJYZ7ZP6NE4DHA5ODUF56Y-2023-09-10/

※5:ロイター通信「10月の『一帯一路』首脳会議、90カ国が参加表明=中国」
https://jp.reuters.com/world/china/HZFALS3GWZMABAZMOECSLFWZPQ-2023-09-07/

※6:独立行政法人経済産業研究所「RIETI|『一帯一路』構想の動向
https://www.rieti.go.jp/jp/special/ebpm_report/018.html

この記事を書いた人

江戸利彰

ライター

江戸利彰(えどとしあき)

ビジネス系の記事執筆を生業として取り組むライター。
累計800記事ほどの納品を経て、現在も日々の執筆から「情報の伝え方」をブラッシュアップしています。
ソースをしっかりと取る記事作りをモットーとしており、正確な情報提供に努めています。

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