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資産運用
株式投資の失敗談、銀行員が聞いた本当の所
株主優待や配当金が魅力の株式投資。長期運用の手段としても有効な投資先です。しかし、株式投資に取り組む人の中には、大きな損失を被るケースも少なくありません。
筆者は銀行員として多くのお客さまと接してきましたが、その中で株式投資で失敗した経験談を聞くこともありました。今回は、筆者が知る株式投資の失敗談から、失敗しやすい人の特徴と対策を解説していきます。
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1. 元銀行員の筆者が聞いた株式投資の失敗談3選
筆者は銀行の外回り営業として、多くの富裕層のお客さまと接してきました。銀行では株式の売買を取り扱えないため、筆者が直接株式の営業を行うことはありませんでしたが、お客さまの中には証券会社で株式投資に取り組む方も多くいらっしゃいました。
雑談の中で株式投資の運用状況についてたずねることもあり、今回はその中で聞いた失敗談をいくつか紹介します。
1-1.大きな下落で株式投資そのものをやめてしまった
お客さまから最も多く聞いたのが、「リーマンショックで株式投資をやめてしまった」というケースです。たしかにリーマンショックでは半値以下になる銘柄も多くあったため、一気に大きな損失を抱えた人も少なくありませんでした。
短期間で大暴落する市場を見て、「こんなに怖いものはもう続けられない」と思うのも仕方ないかもしれません。
しかし、現在の株式市場はどうでしょうか。米国の株式市場はおよそ右肩上がりに上昇を続けていますし、日本ではバブル崩壊以降の最高値をつけるまで上昇しています。
もちろん結果論ではありますが、リーマンショックを乗り越えて株式投資を続けていれば、今頃利益を得られた可能性が高いでしょう。つまり、大きな損失を抱えたまま株式投資をやめてしまうのは「機会損失」にもつながる要因となります。
1-2.よく理解しないまま投資してしまった
「担当者から勧められるがまま購入してしまった」、「何となく直感で購入してしまった」というのもよく聞く失敗談です。
もちろん金融機関側は「絶対に儲かります」、「今が買い時です」といった断定的な営業は行っていないものの、お客さまのなかには「〇〇証券が勧めるなら買ってみようか」という気持ちで投資を決めてしまう人がいるのも事実です。
株式投資はきちんと銘柄の研究をしたうえで取り組む必要があるため、「なんとなく」で購入した銘柄で利益を得られることはほぼないといってよいでしょう。流されるように購入した銘柄で損失が出てしまったら、悔やんでも悔やみきれないのではないでしょうか。
1-3.天井を狙いすぎて売却のタイミングを逃した
株式投資で難しいのは、「購入」のタイミングよりも「売却」のタイミングです。増え続ける利益を見たら、「もう少し持っておけば、まだ上がるのでは……」と思うのが人間の性ともいえるでしょう。
しかし、プロの投資家であっても「最も良いタイミング」で売却することは困難です。「天井を待っていたらあっという間に利益が減少してしまった」というのもよく聞くケースです。
2. 株式投資で失敗しやすい人の特徴
ここまで紹介した失敗談を踏まえると、株式投資で失敗しやすい人は下記のような特徴がある人です。
・思い込みで売買する ・人から聞いた情報を鵜呑みにする ・感情に左右される ・話題性がある銘柄ばかり狙う ・いきなり信用取引にチャレンジする |
ひとつずつくわしく紹介していきましょう。
特徴①思い込みで売買する
株式市場は日々さまざまな要因で値動きしているため、「何となく儲かりそうだ」、「今が買い時だろう」といった根拠のない思い込みで投資してしまうと、損失を被る要因となります。
特に、初心者にありがちなのが「今が底値だと思い込んで、一気に大きな金額を投資する」というケースです。そこからさらに下落すれば大きな含み損を抱えることになり、損失額によっては株式投資自体をやめてしまうケースも少なくありません。
特徴②人から聞いた情報を鵜吞みにする
先ほどの失敗談で「勧められるがまま購入してしまった」という例があったように、人から聞いた情報を鵜呑みにすることで損失を被るケースもあります。最近では、SNSのインフルエンサーの発信した情報をそのまま信じ込んでしまう人も多く見られます。
もちろん誰かの意見を参考にすることは大切ですが、「〇〇さんがこの銘柄は上がると言っていた」とむやみに信じ込んでしまうのは危険だといえるでしょう。
特徴③感情に左右される
株式市場は日々変動しているため、投資家は必ず含み損を抱える経験をします。大切な資産が減少しているのを見て、冷静でいられる人は少ないかもしれません。特に、株式投資を始めたばかりの人であればなおさらです。
このような場合、静観して待つことで株価が回復するケースも多くありますが、中には損失に耐えきれずすぐに売却してしまう人もいます。ちょっとした変動ですぐに売却してしまうので、結果として小さな損失が積み重なり、「なかなか株式投資で利益が出ない」という例もしばしば見られます。
特徴④話題性がある銘柄ばかり狙う
話題性のある銘柄ばかり狙ってしまうのも、株式投資に失敗する人の特徴です。
株式市場には多くの企業が上場していますが、中には一過性の話題や流行の影響を受けて大きく注目を集める銘柄もあります。たとえば、コロナ禍では巣ごもり消費に関連したEC銘柄などが大きく上昇しました。
こうした一過性の話題で注目を集めた銘柄は、短期間で大きな利益を取れる可能性があるものの、売り時を逃せばあっという間に株価が元通りになってしまうことも珍しくありません。
特徴⑤いきなり信用取引にチャレンジする
株式投資は、「信用取引」でレバレッジをかけることも可能です。信用取引とは、証拠金を差し入れることで、実際の金額よりも大きな金額で売買を行う手法です。
たとえば、100万円の証拠金に2倍のレバレッジをかけた場合、200万円での取引が可能となります。
信用取引は資金効率よく運用ができるため、初心者は「レバレッジをかけて大きな利益を狙いたい」と思いがちです。しかし、信用取引はその分リスクも大きくなるため、中には「自己資金以上の損失を抱えてしまった」というケースも見られます。
3. 株式投資で失敗しないためのコツ
株式投資では、損失を抱えるリスクをゼロにすることはできません。しかし、過去の失敗例から対策を講じることで、できるだけリスクを低減することは可能です。ここからは、株式投資で失敗しないためのコツを学んでいきましょう。
コツ①利益確定・損切りを行う水準を明確にする
株式投資を始める際は、必ず利益確定と損切りを行う水準を明確にすることが大切です。利益確定のタイミングを逃すと利幅が小さくなることがありますし、損切りを行わなければ損失が拡大する要因にもなります。
「〇%利益が出たら売却する」、「〇%損失が出たら損切りする」というように、具体的な数値でルールを設定するようにしましょう。
コツ②株式投資に回す金額を決める
株式投資に回す金額を決めておくことも重要なポイントです。
特に、株式投資を始めたばかりの頃は「早く利益を得たい」という気持ちが大きくなって、どんどん資金を注ぎ込んでしまうことがあります。その結果、「必要な生活資金まで投資してしまった」ということにもなりかねません。
株式投資に限らず、資産運用は当面使う予定のない余裕資金で取り組む必要があります。まずは、自分の保有する金融資産を把握し、「いくらまで株式投資に回しても大丈夫か」ということを明確にしておきましょう。
コツ③投資のタイミングを分散する
株式投資では、投資のタイミングを分散することがリスクの低減にもつながります。タイミングを分散することで、高値掴みをしてしまうリスクを避けられるためです。
「ここが買い時だ!」と思っても一気に資金を注ぎ込むのではなく、数回に分けて投資するようにしましょう。
証券会社によっては毎月定額で買い付けていく方法もありますので、「投資のタイミングが分からない」という人は積立投資のサービスを利用することもおすすめです。
コツ④投資の基本原則に忠実に従う
投資の基本原則は「分散投資」と「長期投資」です。
分散投資は先ほど伝えた「タイミングの分散」だけでなく、投資先の分散も含まれます。たとえば、1つの銘柄だけに集中投資していると、その銘柄の株価が下落したときに資産全体の価値が一気に下落するリスクがあります。
なるべくリスクを低減するためには、「複数の銘柄に分散投資する」、「異なる業界に分散投資する」といったことを心がけましょう。
また、株式投資を始める際は、長期投資を前提に取り組むことも大切です。中には短時間で売買を繰り返して利益を得るデイトレードもありますが、初心者にはハードルが高い手法ですし、取引コストもかさんでしまいます。
まずは、数年・数十年保有しておけるような銘柄を探して投資するようにしましょう。
コツ⑤自分に合った投資スタイルを見つける
株式投資には「テクニカル分析」や「ファンダメンタルズ分析」など、さまざまな分析があるうえに、「株主優待を目当てに投資する人」、「配当金を目当てに投資する人」など、投資スタイルも多種多様です。
まずは、自分の投資意向に近い投資手法を探してチャレンジしてみてください。もちろん、試してみた結果、「自分には合わないな」と思うこともあります。
株式投資はトライ&エラーですので、何度も試行錯誤していくことで自分に合った投資スタイルを見つけられるでしょう。
4.リスクを低減しながら株式投資に取り組もう
株式市場は日々変動しているため、「絶対に損失を発生させない」ということは不可能です。しかし、過去の失敗談をもとに、なるべく損失が発生しないように対策を講じることはできます。
より長く株式投資に取り組むためにも、ぜひリスクを低減しながら運用する手法を身につけましょう。
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この記事を書いた人
ライター
椿 慧理(つばき えり)
銀行を10年間勤務し経験を通じて得た金融知識を活かし、金融ライターとして独立。
金融商品やマーケットの解説、税制解説など初心者にも分かりやすい記事を手掛ける。
自らも12年の投資経験を持ち、国内外株式、投資信託、暗号資産を運用中。
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、内部管理責任者
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