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不動産
韓国の不動産バブル崩壊?チョンセに潜む過熱の罠
韓国の金利上昇は、不動産価格の下落につながり、このまま進めば不動産バブルの崩壊の要因とも考えられるでしょう。韓国の不動産バブル崩壊は、どのような状況で起きうるのでしょうか。この記事では、韓国の不動産バブル崩壊と要因について、韓国の不動産事情を知る専門家の見解から考察してみました。
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目次
韓国の不動産バブル崩壊の状況
韓国の不動産投資市場の現状は、亜細亜大学の都市創造学部特任准教授である金明中氏の見解を参考にしました。金明中氏の見解が確認できる動画は、亜細亜大学のホームページで紹介されています。参照元:※2
その内容によると、韓国では、ここ数年の政策金利の段階的な引き上げが続いています。韓国の中央銀行が段階的に金利が上げていることが、不動産バブル崩壊の引き金にもなっている状況です。
韓国の政策金利推移
韓国の政策金利の推移は、次のように変化しています。
- 2020年5月:0.5%
- 2021年11月:1%
- 2022年4月:1.5%
- 2022年7月:2.25%
- 2022年1月:3%
- 2023年1月:3.5%
出典:※1(金明中特任准教授作成のグラフ)
韓国では、段階的な政策金利の引き締めが始まり、現在では3.5%という数字になっています。「住宅ローンの金利が上昇すると不動産を買う人が減る」という動向が不動産価格の下落にもつながっているとのことです。
2021年当時は、これからの不動産価格高騰をもくろんで、不動産を購入するオーナーが増えていた時期と伝えられています。その傾向から、不動産の需要が増えて不動産価格は高騰していったとのことです。
金明中氏の見解では、2022年以降から、不動産価格の下落が始まっていると指摘しています。言いかえると、2022年の不動産価格が高値になるのでしょうか。参照元:※1
不動産バブルの崩壊
不動産バブルの崩壊は、不動産オーナーにつきまとう保証金を巡るトラブルにも発展しています。韓国の不動産バブル崩壊の内容は、韓国の不動産投資市場の指標として、実質住宅価格指数が参考になるでしょう。亜細亜大学の紹介する金明中氏の動画では、次のような韓国事情を伝えていました。
不動産売買価格推移(韓国全土の不動産価格)
不動産売買価格の推移は、動画内で公開されていました。
- 2022年1月:4億2765万4000ウォン
- 2022年9月:4億2133万9000ウォン
- 2023年5月:3億8375万ウォン
出典:※2(動画内金明中特任准教授の公開データ)
動画内の金明中氏の見解による不動産売買価格の推移では、2023年になって不動産価格の下落が見受けられます。
韓国の都心部であるソウルでは、2020年~2022年にかけて賃料が上昇傾向だったと指摘しています。しかし、不動産の売買価格が下がることで賃料も3割ほど下落しているとのことです。参照元:※1
韓国の不動産市場で起きていること
韓国の不動産市場では、2021年に不動産投資が活気づいていたと指摘しています。韓国では、ソウルなどの都市部に人口が集中したことで、都市部の不動産価格が高騰したとのことです。この動きはある意味、次のような考え方を持った人が増えたからではないでしょうか。
- 不動産投資で収入を増やしたい
- 不動産投資は損をしない
このような思いの人が増えたため、不動産価格も上昇していたと考えられます。また、韓国の政策金利の引き上げ前は、銀行にお金を預けておいても金利が期待できなかったと伝えられています。具体的には、銀行の預金金利が1%~2%とのことです。
そのため、銀行の預金と比較しても、「不動産投資のほうが儲かる」と判断する人が増えました。このような背景が韓国の不動産投資需要を高めたと考えられます。
動画内では、そのような中で、文在寅前政権において住宅供給や融資の規制が行われたと伝えられています。参照元:※1
九州国際大学現代ビジネス学部准教授の大津健登氏のレポートによると、文在寅前政権では、以下の規制が施されたとのことです。
- 分譲権の転売の禁止
- 不動産取引・管理に係る税率の引き上げ
- 高評価額の不動産に対する住宅担保融資の制限と禁止 出典:※3
これらの規制が施されるなど、不動産投資に対して悪いイメージも持たれていて、不動産投資の格差拡大が広がる要因にもなったと伝えています。
それでも、ソウル近郊の不動産は高騰し、都市部に良い職場や学校が集中することも追い風となり、都市部の住宅需要は高まりました。
韓国では、政策による不動産の供給が減っても、都市部の不動産を求める状況は変わりません。規制が施されても、むしろ増えていく状況です。
文在寅前政権では、この需要の状況を把握できなかっただけではなく、「需要に反して住宅の供給を減らしてしまった」と金明中氏は伝えています。参照元:※1
需給バランスは乱れたことから、「いまマンションを買わなければ今後買えなくなる」という緊急性がマンションの価格高騰の要因ではないでしょうか。
不動産価格の高騰が進んでいた韓国ソウルは、面積と人口の部分で東京と類似しています。
- ソウル:25区、人口995万人、面積605平方キロメートル
- 東京:23区、966万人、面積627平方キロメートル 出典:※1
韓国の不動産エージェントの話によると、ソウルのマンション価格は2022年くらいまで高騰していたとのことです。
不動産の平均価格(分譲マンション)は、1億円を超えている一方、2022年の春から夏にかけて価格が下落している動きも指摘しています。また、この下落している動きは、深刻な状況と捉えられています。参照元:※1
チョンセ
不動産価格の下落に対して追い風となったのが、韓国特有の家賃制度「チョンセ」です。
チョンセは、貸借人が大家に不動産価格の6割~7割を保証金として支払う制度のこと。この保証金(チョンセ)を元手として、大家は新たな不動産の購入にあてることが一般的といわれています。
しかし、大家は賃貸契約の満了時に「預かっていた保証金の全額を貸借人に返金しなけらばならない」というルールがあります。そのルールが将来的な資金繰りをひっ迫するわけです。
大家側では、貸借人から預かっている保証金を返金できないトラブルが多発しています。そこには、融資を受けて購入した物件のチョンセ金額(保証金)が下がっていることも関係しています。参照元:※1
たとえば、次のようなパターンです。
不動産価格1億円の物件で、60%にあたるチョンセ金6000万円を預かっていたとしましょう。貸借人が退去してしまうと、6000万円を返金しなければなりません。
その退去時に不動産価格が8000万円に下落していた場合は、8000万円の60%にあたる4800万円が次の入居者から預かる新しいチョンセ金となるでしょう。
つまり、不動産価格の下落はチョンセ金にも影響を及ぼすわけです。
一般的に、いま住んでいる人のチョンセ金を次の住人から預かるチョンセ金にあてるため、資金繰りができない大家は物件を担保に銀行から追加融資を受けることも考えられます。
韓国の20代~30代のサラリーマンが、高騰する不動産市場のときに「いまが買いどき」と勢いに乗じて不動産を買ってしまったことも時代背景ではないでしょうか。
韓国の不動産バブルは貧乏になりたくない感情から生まれた?
韓国では、不動産投資でお金持ち(成功)している人が周囲に増えています。その状況では、乗り遅れると”貧乏”になった感覚を持ってしまうでしょう。
2022年までは、貧乏になりたくなくて、不動産オーナーとなるパターンが考えられたとのことです。
その結果、2022年から物件価格が下落して、同時期に不動産を購入した人は、ピーク時の価格で購入したと判断できます。これが韓国では、社会問題となっているわけです。
しかし、韓国の大都市や人気のある地域のニーズは高く、現在も物件価格は上がっていると伝えています。参照元:※1
ただし、人気のない地域の物件は空き家問題を抱えているとのことです。韓国は、日本と同じく人口減少も懸念されています。どうしても人口が都市部に集中してしまうことが課題でもあります。
人口がソウルやプサンなどの人気のある都市に集中して、ニーズに格差が生まれている状況です。
また、韓国では、マンションの賃料は下がっていても、まだまだ物件の価格は日本よりも高いのが現状ではないでしょうか。これらの問題への対策として、住宅ローンの金利を引き下げることも必要だといわれています。
将来的に住宅ローン金利(2023年現在3.5%)が下がれば、不動産投資が増える可能性もあるため、専門家は、ここ数年における不動産の値上がりはないと予想している状況です。参照元:※1
韓国の不動産バブル崩壊を日本に置き換えて考えよう
韓国で不動産投資をするには、チョンセや政策金利の動向なども考えなければなりません。不動産価格が変動すれば、必ずチョンセに影響を及ぼして、不動産オーナーの負担は避けられないでしょう。
現状の韓国では、物件の価格高騰や下落で銀行からの融資まで視野に入れなければなりません。これらの状況は、事前の情報入手や調査も大きく関わるとも考えられます。
韓国の状況からは、「貧乏になりたくないから今すぐ投資を始める」という時代の流れに無理やり乗るようなイメージも受けました。ならば、日本に置きかえてみた場合、事前の情報収集や学習が必要だとも判断できます。
直近の投資機会を失ったとしても、投資に対する知識や情報収集は欠かせないのではないでしょうか。まずは、学びの機会があれば体験してみることも必要だと考えられます。
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【出典・参照元記事URL】
※1:亜細亜大学紹介動画「楽待NEWS(不動産投資の楽待(らくまち))」https://www.youtube.com/watch?v=-I6az2p9cAQ
※2:亜細亜大学「金明中都市創造学部特任准教授がYouTubeで韓国の不動産投資市場について解説しました」https://www.asia-u.ac.jp/news/nid00000925.html
※3:大津健登「韓国資本主義とソウルをめぐる住宅・土地に関わる現状について」https://meiji.repo.nii.ac.jp/record/2649/files/shogakuronso_102_3_207.pdf
この記事を書いた人
ライター
江戸利彰(えどとしあき)
ビジネス系の記事執筆を生業として取り組むライター。
累計800記事ほどの納品を経て、現在も日々の執筆から「情報の伝え方」をブラッシュアップしています。
ソースをしっかりと取る記事作りをモットーとしており、正確な情報提供に努めています。
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