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「年収の壁」に見直し案?2023年今後を解説
年収の壁とは、一定の年収を超えてしまうと税金が発生したり社会保険料が発生したりする基準のことです。
これから扶養に入ろうと考えている人、もしくはこれから働こうと考えている人は「自分はいくらまでお金を稼いで良いのか?」と、悩まれているのではないでしょうか。
今回は、年収の壁の仕組みや6つの基準、今後の展望について詳しく解説します。扶養に入りながらも働き続けたい人、損することなく可能な範囲内で働きたいと考えている人は、ぜひ参考にしてください。
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「年収の壁」とは何のこと?仕組みを解説
扶養されている人が一定以上の年収を超えてしまった場合、税金や社会保険料等が発生します。これをいわゆる「年収の壁」と言います。
日本ではいくつかの「壁」があり、無意識に超えてしまうことによって自分や家族の手取りが減ってしまう可能性があります。まずは、年収の壁の仕組みについて詳しく解説しますので、ぜひ参考にしてください。
年収が一定を超えると税金や社会保険料が発生する仕組みのこと
年収の壁とは、一定のラインを超えてしまうことによって住民税や所得税といった税金が発生したり、社会保険への加入義務が発生したりする基準を指します。
税制度ではさまざまな控除があり、控除の範囲内であれば税金が発生しません。住民税も低所得者に対しては非課税となっており、課税されない仕組みがあります。
社会保険料について、基本的には国民皆保険の原則に従ってすべての人が何らかの健康保険へ加入していなければいけません。しかし、一定以下の年収の人であれば、自ら保険へ加入しなくても、家族の扶養に入ることができます。
上記のように年収が低い人を対象に、さまざまな制度や優遇措置が認められています。しかし、一定の年収を超えることにより、課税されたり健康保険へ加入したりしなければいけなくなります。このボーダーラインを「年収の壁」と表します。
自分や家族の手取り収入が減ってしまう可能性がある
年収の壁を超えてしまうことによって、本人もしくは家族の年収が減ってしまう可能性があります。
たとえば、配偶者特別控除の調整が発生することにより、特別控除を受けていた家族の課税所得が増えてしまいます。その結果、税率が同じでも上がった所得分の税金が発生し、また、税率が上がってしまう可能性もあるため注意が必要です。
本記事で年収の壁に関する6つのボーダーラインについて、詳しく解説しています。今後、最低賃金の引き上げ等が行われることにより、労働時間の調整を行わなければいけない可能性も出てきます。ぜひ、参考にしてください。
年収の壁|6つのボーダーライン
年収の壁には以下6つのボーダーラインがあります。
- 100万円の壁
- 103万円の壁
- 106万円の壁
- 130万円の壁
- 160万円の壁
- 201万円の壁
まずは、それぞれの壁について詳しく解説します。
「100万円」を超えると住民税が発生
100万円の壁は、住民税が発生するかどうかのボーダーラインのことです。住民税は、都道府県民税と市町村民税の2種類に分けられ、税率は課税所得に対して合計10%です。
実際は、自治体によって若干異なるものの、年収が100万円以下の場合は住民税が非課税です。100万円を少しでも超えると、住民税が課税されると考えておけば良いでしょう。
たとえば、年収が101万円であれば約6,000円程度の住民税が発生します。
普通徴収であれば、6月8月10月1月の計4回に分けて分割払いするため、1回あたり1,500円程度の支出です。特別徴収の場合は給料から毎月差し引かれるため、手取りで500円程度少なくなる計算です。
なお、100万円を超えないように働くためには、ある程度の調整が必要です。たとえば、2023年時点の東京都の最低賃金は「1,113円」であるため、仮に、この金額で働いていた場合、1年間で労働できる時間は約898時間となります。
1か月に換算すると、75〜76時間程度の労働時間が限界です。仮に、1週間に3日働く場合、1か月で見ると13日〜14日程度です。単純計算すると、1日あたりの労働時間の限界は5時間程度という計算になります。
まとめると以下の通りです。
【東京都の最低賃金「1,113円」で見た場合】
- 1か月あたりの労働可能時間:75時間〜76時間
- 1日あたりの労働可能時間:5時間程度(1か月で13〜14日出勤と仮定)
上記のボーダーラインを超えてしまうと、超えた金額に応じて住民税が発生します。
「103万円」を超えると所得税が発生
年収を103万円超えると、所得税が発生し始めます。
所得税は、給与所得者であれば給与所得控除(最低55万円)を受けられます。また、基礎控除(48万円)を受けられるため、103万円までは所得税が発生しません。
たとえば、年収で104万円稼いだ場合は、55万円の給与所得控除と48万円の基礎控除を受けられるため、課税所得は「1万円」になります。1万円に対する所得税は500円です。
所得税自体は僅かであるため、あまり気にする必要はないかもしれません。ただ、100万円を超えている時点で住民税が発生しているため、所得税よりも住民税を意識したほうが良いでしょう。
「106万円」を超えるとその他の条件次第で社会保険料が発生
106万円の壁を超えてしまうと、他の条件次第で社会保険料が発生します。本来、130万円を超えなければ、社会保険への加入義務はありませんでした。
しかし、2022年10月に行われた改正に伴い、以下の条件を満たしている場合は自身での社会保険加入が義務付けられます。
- 所定労働時間が20時間を超える
- 1か月の賃金が8万円(年収約106万円)以上
- 勤務期間が2か月以上の見込み
- 勤務先の従業員が101人以上
- 学生ではない
つまり、明確に106万円以上を超えると社会保険へ加入しなければいけない、というわけではありません。1か月の賃金が8.8万円以上であり、その他の条件を満たしている場合に限って加入義務が発生します。
なお、106万円の壁を超えて社会保険料が発生する場合、年間約15万円程度の支出が発生します。大きな支出となり得るため、上記条件を満たさないように調整すると良いでしょう。
たとえば、106万円を超えていたとしても「勤務先の従業員が101人未満」であれば、社会保険料は発生しません。(※2024年の改正で51人以上に変更)
「130万円」を超えると世帯主の扶養から外れる
130万円の壁を越えると、世帯主の扶養から外れてしまいます。よって、自分自身で社会保険へ加入しなければいけません。仮に、年収が130万円だった場合、社会保険料は年間約18万円程度です。1か月あたりに換算すると、手取りで1.5万円減る計算です。
なお、130万円の壁を超えていなくても、一定の条件を満たしている人は106万円の壁があるため注意してください。
ちなみに、年収130万円を超えないようにするためには、毎月108,333円以下でなければいけません。東京都の最低賃金(1,113円)で換算すると、月に働ける時間は約97時間です。
仮に、1日あたりの労働時間が6時間と仮定した場合、16日程度働ける計算です。
「150万円」を超えると配偶者特別控除の調整が発生
150万円の壁は、配偶者特別控除を利用できるギリギリのボーダーラインです。控除を受ける納税者の年収が1,000万円以下であり、配偶者の年収が150万円以下の場合、最大で38万円の配偶者特別控除を受けられます。
たとえば、160万円を稼いだ場合、配偶者特別控除によって受けられる控除額は31万円です。最大控除額は38万円であるため、単純に7万円分の所得控除を受けられない計算です。
仮に、配偶者特別控除を利用している納税者の年収が600万円の場合、所得金額300万円前後。ここから38万円の控除を受けられた場合の所得額は262万円、31万円であれば269万円となります。
それでは、それぞれの税金を見てみましょう。
【262万円の場合】
所得税:164,500円
住民税:262,000円
合計:426,500円
【269万円の場合】
所得税:171,500円
住民税:269,000円
合計:440,500円
よって、配偶者特別控除を利用している人の年収が600万円程度で配偶者の年収が160万円の場合、150万円以下の場合と比較して14,000円程度納税額が増える計算です。
実際の増税額は各世帯によって変動します。上記はあくまでも参考程度に考えておいてください。
「201万円」を超えると配偶者特別控除がゼロになる
配偶者特別控除を利用している人の配偶者の年収が、201万円を越えると、同控除を利用できなくなります。よって、上記同様の例(年収600万円と仮定)の場合は、以下のとおりとなります。
【262万円の場合(配偶者特別控除満額利用の場合)】
所得税:164,500円
住民税:262,000円
合計:426,500円
【300万円の場合(配偶者特別控除を利用できない場合)】
所得税:202,500円
住民税:300,000円
合計:502,500円
よって、配偶者特別控除を利用していた人の納税額が、78,000円程度増える計算です。
201万円を超えた場合、「壁」になるものはありません。そのため、200万円程度まで年収が上がった場合は、何も気にすることなくお金を稼げるようになるでしょう。
年収の壁制度の見直しを検討?今後の展望
年収の壁の影響によって、「働きたくても働けない」という人が増えています。その結果、労働人口が減少してしまっている現実があり、問題視されていました。
今後、政府は年収の壁の見直しを行い、必要に応じて助成することを決定しており、働きやすい環境が整えられていくことが予想されます。
最後に年収の壁に対する今後の展望についても詳しく解説します。
年収の壁ができたきっかけとは
そもそも、一定以下の年収の人の税負担を軽減しようとした場合、必ずどこかでボーダーラインを引かなければいけません。そこが、税制面での年収の壁になってしまいました。
税制面に対する年収の壁を撤廃しようとした場合、すべての労働者が課税対象となるため、税金の壁は致し方ないと考えるべきでしょう。
また、社会保険料についても同様の考え方ができます。日本は、国民皆保険であり、多くの企業で社会保険への加入が義務付けられています。しかし、年収が一定以下の人に対しては、「扶養」に入ることが認められ、負担の軽減を図っているものです。
どこかで「〇〇の人は社会保険へ加入する」といった、基準を設けなければいけないため、106万円の壁・130万円の壁も致し方ないものと言えます。
では、配偶者特別控除の壁について、あえて年収制限を設ける必要はあるのでしょうか?また、あえて同控除を設ける必要があるのでしょうか?
配偶者特別控除は、昭和時代の考え方である「夫は働き、妻は家庭を守る」といいった考え方からできた制度です。令和の時代になり、女性の社会進出も増えてきた今、見直すべき制度になりつつあることは間違いありません。
現時点で配偶者特別控除に関する議論は行われているものの、廃止等の具体案は出てきていません。
このまま壁が存在し続けた場合は労働時間が減少
今回、さまざまな年収の壁について解説しました。年収の壁はさまざまではあるものの、何年、何十年も変わらずに労働者の壁となってきました。
しかし、時代は変わり年々最低賃金は上がり続けています。賃金が上がる一方で、年収の壁がそのままであれば、働きたくても働けないと考える人が増えてしまいます。結果的に、労働人口が減少してしまう可能性が高いのです。
最低賃金引き上げの目的のひとつに「労働者の確保」もあります。とはいえ、現状のまま年収の壁があり続けた場合は、壁ばかりを気にして働きたくても働けない人が増え続け、悪循環に陥っていくでしょう。
政府が検討している「企業への助成」の内容
政府は、一定の年収を越えると社会保険料が発生してしまう「106万円の壁」に対し、助成を行う考えを示しています。
具体的には、労働者の手取りが減らないように企業等が社会保険料を肩代わりした場合、最大で1人あたり50万円まで助成するものです。この助成により、実質的に106万円の壁を気にすることなく働けるようになる可能性が出てきます。
なお、現時点で検討されている壁は、あくまでも106万円に対しての助成のみです。
住民税や所得税に対する壁は、一定の基準を設けなければいけないため、致し方ないものです。配偶者特別控除についても、議論が進められているため今後の動向に注視しましょう。
130万円の壁については、助成金とは別に対策を検討しています。そのため、今後の動向に注視しておきましょう。
まとめ
今回は、年収の壁について解説しました。
いわゆる年収の壁は全部で6つあります。どこのボーダーラインの中でうまく働き、お金を稼ぐのか、難しいところでもあるでしょう。多くの人は「年収の壁がなければもっと働きたい」と考えています。
現在、政府では年収の壁についても議論を進め、助成やその他の対策を検討し始めています。現時点では、106万円の壁に対する助成のみしか決まっていないものの、今後はより働きやすい時代が訪れることでしょう。今後の動向に注視しておきましょう。
ウルトラ金融大全が動画で見れる!
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この記事を書いた人
ライター
林 裕二(はやし ゆうじ)
2018年にFP2級技能士。金融系WEBライターとして活動。数多のメディアで金融系記事執筆や監修を担当し、読者のお金の悩みに寄り添ってきました。現在も人々の生活に関わる「お金」や、家計の「借金問題」などをメインとしながら記事執筆を行っています。
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