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年末調整の還付金はどう増やす?今すぐ始められる税金対策
毎年10~11月にかけて勤務先に提出する年末調整。その後に受け取る還付金を楽しみにしている人も多いのではないでしょうか。
年末調整で受け取る還付金は、税制を理解しておくことで増やすことができます。本記事では、年末調整の仕組みや還付金を増やす方法について解説します。
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目次
1.年末調整のおさらい
毎年勤務先に提出する年末調整ですが、何のために行う手続きなのでしょうか。まずは、年末調整の仕組みをおさらいしていきましょう。
1-1.年末調整を行う目的
年末調整の目的は、1年間に納めた所得税の過不足を精算することです。通常、所得税は給与から源泉徴収されますが、この金額は前年度の所得などをもとに概算の金額が差し引かれています。
そのため、家族構成の変化や所得控除の適用などによっては、勤務先で源泉徴収された所得税に過不足が生じることがあります。年末調整はこの過不足の調整を行うためのもので、支払いすぎているものは還付され、足りないものは追加徴収される仕組みです。
1-2.年末調整で還付金が戻ってくる時期
源泉徴収によって所得税を納めすぎていた場合、年末調整を行うことで還付金が支払われます。還付金が戻るタイミングは勤務先によって異なりますが、12月や翌年1月に支払われることが一般的です。
支払い方については、給与とまとめて支払われるパターンもあれば、還付金のみ別途支払われるパターンもあるなどさまざまです。
1-3.多くの人が利用している所得控除は?
国税庁の「令和4年分民間給与実態統計調査」によると、2022年における給与所得者は5,078万人で、そのうち4,697万人が年末調整を行っています。これは全体の92.5%となり、年末調整は給与所得者のほとんどが行っていることが分かります。
しかし、年末調整で申告している内容は人によってさまざまです。同調査によると、各所得控除の適用を受けた人数は下記の通りとなっています。
所得控除 |
人数(千人) |
平均控除額(千円) |
配偶者特別控除 |
1,174 |
313.2 |
社会保険料控除 |
40,302 |
683.4 |
生命保険料控除 |
33,083 |
67.6 |
地震保険料控除 |
9,291 |
16.5 |
年末調整では、社会保険料控除や生命保険料控除によって所得控除を受けている人が多く見られます。
もしかしたら、中には「年末調整に何も書かずに提出している」という人もいるかもしれません。しかし、せっかく所得控除を受けられる制度を活用しないのはもったいないことでもあります。
税負担を軽減するためには、所得控除の制度を活用することを検討してみましょう。次の章では、今すぐに取り組める所得控除の制度について紹介します。
2.年末調整で還付金を増やす方法
年末調整で還付金を増やす、つまり所得控除の適用を増やす方法として、次の3つが挙げられます。
・iDeCoに加入する |
それぞれくわしく解説していきましょう。
2-1.iDeCoに加入する
iDeCoとは、「個人型確定拠出年金」と呼ばれる私的年金制度のひとつです。iDeCoの大きな特徴は、年間の拠出額を全額所得控除できるという点です。
たとえば、iDeCoに毎月1万円拠出する場合、計12万円を年末調整のときに所得控除として申告することができます。将来の年金の備えと税金対策を同時に取り組める制度ですので、ぜひ加入を検討してみましょう。
ただし、iDeCoには拠出額の上限が定められており、自由に拠出額を設定できるわけではありません。拠出上限額は、それぞれ下記の通りです。
加入資格 |
月額限度額 |
|||
第1号被保険者(自営業者) |
6万8,000円 |
|||
第2号被保険者(会社員・公務員) |
企業年金がない会社員 |
2万3,000円 |
||
企業型DCに加入している会社員 |
2万円 |
|||
・DBと企業型DCに加入している会社員 |
1万2,000円 |
|||
第3号被保険者(専業主婦・主夫) |
2万3,000円 |
自分が上記表のどこに該当するか確認したうえで拠出額の設定を行いましょう。
2-2.生命保険に加入する
生命保険の保険料も所得控除が適用されます。対象となるのは、生命保険と介護保険、個人年金保険の3種類で、それぞれ最大4万円の所得控除が受けられます。
iDeCoのように全額が所得控除の対象とはならないものの、3つの保険で合計最大12万円の所得控除が適用されるため、ぜひ積極的に活用したい制度です。
年末調整の際は、保険会社から送られてくる控除証明書の提出が必要となりますので、必ず捨てずに保管しておきましょう。
2-3.地震保険に加入する
地震保険の保険料も所得控除の対象となり、最大5万円の所得控除が受けられます。
ただし、所得控除の対象となるのは、居住用の自宅に対してかける地震保険のみです。別荘などを補償の対象とする地震保険は、所得控除が適用されませんので注意しましょう。
3.確定申告で還付金を増やす方法もある
所得税の還付金は、確定申告によって受け取ることも可能です。会社員の場合は確定申告の経験がない人も多いかもしれませんが、現在はスマートフォンでも行えますので、それほど難しいものだと考える必要はありません。
ここからは、確定申告で受けられる所得控除について紹介していきましょう。
3-1.医療費控除
1年間で支払った医療費が10万円を超えると、「医療費控除」として所得控除を受けることができます。ここでいう医療費とは自分の医療費だけでなく、生計を同一にする家族の医療費も含まれます。
たとえば、出産にかかった医療費も医療費控除の対象となりますので、定期検診や検査でかかった医療費などは領収書を保管しておくようにしましょう。
3-2.損益通算
損益通算とは、一定の所得で生じた損失を他の所得と相殺することです。損益通算ができるのは、下記の所得で生じた損失です。
・不動産所得 |
たとえば、「親から相続したアパートで赤字が出ている」というときは、確定申告で損益通算することによって、他の所得から差し引くことができます。その他、株式投資において特定口座内で控除しきれない損失がでた場合なども、確定申告によって損益通算を行うことが可能です。
何らかの所得で赤字が発生したときは、「損益通算できないだろうか?」と確認するようにしましょう。
3-3.住宅ローン控除
住宅ローン控除とは、年末時点での住宅ローンの残高の0.7%が所得から控除される制度です。最大13年間控除されるため、多くの人が税負担の軽減として活用しています。
住宅ローン控除は借入を行った1年目のみ確定申告が必要となりますが、2年目以降は年末調整によって手続きを行えるようになります。借入を行った年は、必ず忘れずに確定申告を行うようにしましょう。
4.そもそも所得税はどれくらい納めている?
年末調整は1年間の所得税の過不足を調整する手続きですが、そもそも所得税はどれくらい納めているものなのでしょうか。
日本の所得税は、所得の金額が大きくなるほど税率が高くなる「累進課税制度」が採用されています。所得金額に応じて適用される税率は、下記の通りです。
【所得税の税率】
課税される所得金額 |
税率 |
控除額 |
195万円以下 |
5% |
0円 |
195万円超330万円以下 |
10% |
9万7,500円 |
330万円超695万円以下 |
20% |
42万7,500円 |
695万円超900万円以下 |
23% |
63万6,000円 |
900万円超1,800万円以下 |
33% |
153万6,000円 |
1,800万円超4,000万円以下 |
40% |
279万6,000円 |
4,000万円超 |
45% |
479万6,000円 |
たとえば、課税所得が350万円の場合、20%の税率と42万7,500円の控除が適用されます。普段は給与から源泉徴収されるため、あまり税率を意識することはないかもしれませんが、自分が納めている税金の仕組みはよく理解しておくことが大切です。
5.年末調整でよくある質問
最後に、年末調整に関するよくある質問について回答していきます。
Q1.扶養家族が増えた場合はどうすればいい?
1年の途中で扶養家族が増えた場合、その時点で勤務先へ申告書を提出します。年末調整にはその旨が反映されているはずですので、内容に誤りがないか確認しましょう。
もし誤りがある場合は、人事部や総務部などへ連絡して訂正を依頼してください。
Q2.NISAは年末調整に記入する?
NISAは、株式や投資信託の運用で得た利益が非課税となる制度です。所得控除を受けられる制度ではありませんので、年末調整の用紙に記入する必要はありません。
Q3.転職した年の年末調整はどうしたらいい?
1年の間に転職をした場合、現在の勤務先にて年末調整を行います。
その際は、前職の勤務先で受け取った源泉徴収票が必要となります。もし紛失してしまった場合は、前職の勤務先へ連絡して再発行を依頼しましょう。
Q4.年末調整は必ず還付金がもらえる?
年末調整は所得税の過不足を調整するためのものですので、人によっては追加徴収を受けるケースもあります。たとえば、「前年に比べて給与が大きく増えた」、「年の途中で扶養家族が減少した」といった場合などです。
年末調整は、「必ず還付金を受けられる」というものではないことを理解しておきましょう。
6.所得控除を活用して還付金を増やそう
年末調整は毎年行うものですが、もしかしたら中には「何も書かずに提出している」という人もいるかもしれません。
しかし、年末調整は所得控除を活用していれば、還付金を受け取ることができる有益な制度です。ぜひ税負担を軽減するためにも、本記事で紹介した方法に取り組むことを検討してみてはいかがでしょうか。
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【参考】
国税庁「令和4年分民間給与実態統計調査」
https://www.nta.go.jp/publication/statistics/kokuzeicho/minkan2022/pdf/002.pdf
この記事を書いた人
ライター
椿 慧理(つばき えり)
銀行を10年間勤務し経験を通じて得た金融知識を活かし、金融ライターとして独立。
金融商品やマーケットの解説、税制解説など初心者にも分かりやすい記事を手掛ける。
自らも12年の投資経験を持ち、国内外株式、投資信託、暗号資産を運用中。
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、内部管理責任者
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