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不動産
土地活用の落とし穴!安易な手段に潜む罠
少子高齢化が進む日本では土地余りが問題になっています。
相続などで土地を持て余してしまい、固定資産税だけを払っていて勿体ないと考えている人も多い事でしょう。
今回の記事では土地活用の落とし穴と題しまして、代表的な土地の活用方法と気を付けるべきポイントを解説していきます。
土地活用でアパート経営を考えている方は、注意事項としてお役立てください。
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目次
土地活用の種類と特徴
代表的な土地活用と言えばアパート経営が挙げられます。土地が都市部で賃貸需要があれば効果的な活用方法と言えます。
他には
・駐車場経営
・太陽光発電
・コインランドリー経営
・底地活用
と言った活用方法が挙げられます。
どの手法が良いと決まっているものではありませんので、自分の土地に適した活用方法を考える事が重要になります。
先ずはアパート経営の落とし穴を解説していきましょう。アパート経営は自分の土地にアパートを建造して貸し出す運用方法になります。アパートの建設には勿論建築費用が必要になりますので、資金が無いと始められません。
現実的には土地を担保に金融機関から融資を受けてアパートを建てる場合が殆どになる事でしょう。なので、所有している土地がそもそもアパート用地として適しているのか?
銀行から融資を十分に受けられる価値があるのか?アパート経営を行った場合賃貸需要があるエリアなのか?
そういった事を踏まえておかないと建てたは良いが、誰も住まないという失敗に繋がります。実際相続税対策でアパートを建てて失敗する人は後を絶ちません。
35年一括借り上げなどと甘い文句で業者に乗せられ、思ったよりも利益が上がらなかったなんてケースになっては目も当てられません。アパート経営では次の点に気を付けて見て下さい。
自己資金がない
さら地から建物を建てる土地活用は、資金面で落とし穴があります。建築を要する土地活用では、費用の全額借り入れによる返済計画に無理がある場合、長期的にはリスクになるというものです。
「土地はあるけれどお金がない」というひとは沢山いるかと思います。
「土地を持っているけれど、固定資産税の支払いで持っていても出費ばかり」という場合は、土地持ち貧乏とも呼ばれます。
土地を持っていても、何も生み出さなければ年々、保有する現金を固定資産税の支払いで失います。
アパート経営では土地を担保に上物の建築費用を賄う事が往々にしてあります。給与収入などの所得がある人は銀行から融資を受ける事も検討出来ますが、誰でも借りれる訳ではありません。それに対して比較的融資のハードルが低い金融機関として日本政策金融公庫の新創業融資制度が期待できます。
新創業融資制度は、不動産賃貸業も融資対象です。アパート経営は賃貸経営業という仕事とも言えますから国民政策金融公庫から見れば事業主として融資を申し込む十分な理由になります
個人が新創業融資制度を利用する場合は、次の要件が必要となるでしょう。
- 融資額に見合う担保提供がある
- 10年の返済計画でもプラスになる
- 自己資金も保有している
- 不動産賃貸物件を保有している
新創業融資制度は、所有する土地で何か事業を始めるのであれば、10分の1の自己資金で最大3000万円までの無担保無保証人の融資が受けられるとのことです。
しかし、返済期間10年でCF(キャッシュフロー)をプラスにする計画は相当な利回りが必要となり土地の広さや場所によっては自己資金を相当入れないと収支が合わないかもしれません。
駅から近い、土地が広い、暮らしに便利であるなど賃貸ニーズが見込める立地に土地のある方は検討してみる価値のある手法です。
逆に言えば立地的な強みが無いのに安易にアパート経営に手を出すのは賢明ではありません。出典:※1
土地活用と節税の関係
土地活用での大きな悩みに税金問題が挙げられます。固定資産税だけでなく、長期的に考えれば相続税なども悩みの種になってきます。
アパート経営は借り入れを起こす事や課税評価額を圧縮出来ることから節税効果が期待されていますが、節税を目的としてアパート経営を行う事は誤りです。
アパートで土地や建物の相続税評価額が減額される理由を見てみましょう。
相続税評価額は、自用地と貸家建付地で価額が変わってきます。まず、自用地とは、自分のために活用する土地のことです。自分の家を建てる土地は、自用地あつかいになります。土地の相続税評価額は路線価を元に算出されます。
自用地の計算式は次のとおりです。
敷地面積(平方メートル)×相続税評価額(路線価)
たとえば、100平方メートルの土地に対して、路線価の相続税評価額が10万円であれば、次のように算出できます。
100平方メートル×10万円=1000万円
この場合は、1000万円が路線価自用地の相続税評価額です。
貸家建付地とは、所有する土地に建てた建物を貸し付けている土地のことと定義しています。
自用地よりもアパート経営を目的にした貸家建付地の場合は、評価額が下がります。評価額が下がれば相続税も下がるため、節税効果が期待できます。
貸家建付地の評価額の計算式は、次のとおりです。
自用地評価額×(1-(借地権割合×借家権割合(全国一律30%)×賃貸割合)参照元:※2
計算式がややこしく見えますが、固定資産税評価額よりも安い程度の評価額になると思っていれば良いでしょう。現在相続税評価に関しては2024年をめどに見直しが検討されていますが、総じて現金よりも不動産の方が評価額が低い傾向にあります。
不動産が相続性対策になると言われる所以は不動産の相続税評価額が実際に売買されている不動産価格を大きく下回るためです。参照元:※3
賃貸経営は立地が重要
土地の活用は、その土地の立地を考えることが大事です。たとえば、周辺に学校も病院も何もないところではアパートを建てても入居者は期待できません。活用しようとしている土地が住む環境として適しているかどうかも重要です。
山奥の一軒家的な立地では、借り手を見つけるのに苦労するかもしれません。アパート経営を始めて、借り手が見つからず空室状態が続けば収入どころか支出が増えてしまいます。そのため、住む環境として立地を考えることは重要です。
再三節税のために賃貸経営を行う事は間違いであるとお伝えしていますが、その理由は圧縮される相続税に対して賃貸経営では下記の出費が未来に渡って長期で発生するためです。
・屋上防水や外壁塗装などの修繕
・貸出物件の入退去に伴う修繕
・共用部分の光熱費
・受水槽などの設備メンテナンス
・賃貸募集などの客付けの広告費
・建築時のローン支払い
これら経費の支払いはあくまでも賃貸経営の利益から行われます。そのため賃貸経営そのものが上手くいかないと費用捻出が行えず、ローンの支払いが賃貸収入を上回る事態になってしまう恐れがあります。
一括借り上げなどで安心と考える人も多いようですが、本来の賃貸経営が上手くいっていない物件では時間の問題で借り上げ賃料が下がるなどのリスクもあります。安易なアパート経営はリスクも大きいので慎重な検討が必要です。
駐車場経営は節税の点で注意が必要
所有する土地の駐車場経営は、税金の負担に注意が必要です。たとえば、住宅として活用していた土地から、住宅を壊して駐車場にした場合は住宅用地の軽減措置がなくなります。
活用する土地に住宅が建っていて、土地活用目的でさら地にした場合は、固定資産税が上がるというわけです。なんと、その割合は、住宅地の6倍となる見込みです。参照元:※6
さらに先述したとおり、駐車場経営は、自用地あつかいなので評価額が高くなります。駐車場経営の税率が高いのではなく、住居への優遇措置があるというのが正しい表現ですが、相対的に駐車場経営では税制効果で一歩劣る部分がある事は注意が必要です。
太陽光発電は撤去費用まで想定
近年取り組む人も多くなっている太陽光発電ですが撤去費用まで想定しないと思わぬ落とし穴になるかもしれません。
太陽光の買取価格(売電価格)は、将来の撤去費用まで利益を得られるか微妙なところです。経済産業省の見解によると、撤去費用は、コンクリート基礎で1kWあたり約1.4万円。スクリュー起訴の場合が約1.1万円と公開しています。この金額を参考にすると、次のように考えられます。
- 10kWの太陽光発電を廃棄する撤去費用:約11万円~14万円
- 100kWの太陽光発電を廃棄する撤去費用:約110万円~140万円データ参照:※7
もともと土地活用のつもりで太陽光発電を始めたのに、思ったように売電利益を得る事が出来なければ本末転倒です。
それどころか、撤去費用を想定していなければ土地を売却する際に思わぬ足かせにもなります。誰だって利益にならない太陽光付きの土地に魅力は感じないでしょう。当然取り壊す費用を差し引いて土地の価格を算出します。
余計なものを建てたせいで土地の評価が下がるというのも考えものです。発電効率が良く、近隣とのトラブルも無縁の土地であれば有用な太陽光発電ですが、条件によってはリスクも大きく注意が必要となります。
自分で管理できるのか業者に依頼するのかを決められない
土地活用でアパート経営や駐車場経営などの場合は、「自分で管理するのか、業者に依頼するのか」を決めなければ始まりません。決める場合は、双方のメリットデメリットで判断することが大事です。
- 自分で管理すること:コストがかからないが手間がかかる。
- 業者に依頼すること:手間や時間が省けるがコストがかかる。
誰だって最初は素人の状態でスタートします。分からないうちはプロ業者を頼り、経験を積んでから自主管理というやり方も良いでしょう。
不慣れなうちからなんでも自分でやろうとして返って時間もお金も使ってしまっては元も子もありません。土地活用は勉強のつもりで取り組む姿勢が大切です。
土地活用は注意点を把握したうえで考えよう
土地活用は、活用方法によって節税効果が異なります。土地を保有すれば、その評価額から固定資産税の支払金額が設定されます。その設定された税金は、支払わなければなりません。そのような理由があるから、土地活用を考えているわけです。
また、土地の活用には、法律なども絡んできます。「自分がどのような土地活用をしたいのか」を明確にして、具体的に計画を立てる必要があります。知らないまま時間が経過してしまうと、余計な税金を支払い続けなければなりません。土地をそのままにしておくのではなく、適切な活用方法を見つけましょう。
関連記事:相続税対策を不動産で行う
https://urukin.com/775-2/
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【参照元】
※1:日本政策金融公庫「新創業融資制度」
https://www.jfc.go.jp/n/finance/search/04_shinsogyo_m.html
※2:国税庁・財産評価基準書「路線価図・評価倍率俵|借家権割合」
https://www.rosenka.nta.go.jp/main_r05/tokyo/tokyo/others/d220100.htm
※3:国税庁「貸地建付地の評価」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4614.htm
※4:国税庁「No4627貸駐車場として利用している土地の評価」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hyoka/4627.htm
※5:国民生活センター「不動産サブリースのトラブル防止のために」
https://www.kokusen.go.jp/wko/pdf/wko-202107_04.pdf
※6:三井のリパーク「駐車場経営にかかる固定資産税は高い?計算方法や節税について解説」
https://www.repark.jp/parking_owner/column/article6.html
※7:経済産業省「太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度について」
https://www.enecho.meti.go.jp/category/saving_and_new/saiene/kaitori/dl/fip_2020/fip_document03.pdf
この記事を書いた人
ライター
江戸利彰(えどとしあき)
ビジネス系の記事執筆を生業として取り組むライター。
累計800記事ほどの納品を経て、現在も日々の執筆から「情報の伝え方」をブラッシュアップしています。
ソースをしっかりと取る記事作りをモットーとしており、正確な情報提供に努めています。
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