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不動産

不動産クラウドファンディングの匿名組合と任意組合の違い

不動産クラウドファンディングの匿名組合と任意組合の違い

不動産クラウドファンディングには、大きく分けて「匿名組合」と「任意組合」の2種類の契約形態があります。どちらも「お金を出資して利益を受け取る」という仕組み自体は同じですが、税制上の取り扱いや所有権などいくつかの違いがあるため、その違いをよく理解しておくことが大切です。
本記事では、不動産クラウドファンディングの匿名組合と任意組合の違いについて解説していきます。

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1.匿名組合と任意組合の違い

不動産クラウドファンディングの「匿名組合」と「任意組合」には、主に次のような点で違いが見られます。

・根拠となる法律
・不動産の所有権
・所得の取り扱い
・責任の範囲
・相続税対策の効果
・運用期間や最低投資金額
・運営上の権利

 

ひとつずつくわしく確認していきましょう。

1-1.根拠となる法律

匿名組合は商法に基づいて取り交わされる契約で、次のように定められています。

匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる。

引用:商法第五百三十五条(匿名組合契約)

これを不動産クラウドファンディングに当てはめてみると、投資家は事業者を通じて不動産投資を行うことで、収益の一部を受け取る権利が発生することとなります。

一方、任意組合は民法に基づいて取り交わされる契約で、定義は次の通りです。

組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって、その効力を生ずる。

引用:民法第六百六十七条(組合契約)

組合契約においては、出資者も事業の当事者となる点が大きな特徴です。

「根拠となる法律が何か」という点は実際の投資で意識することはあまりありませんが、「事業の当事者となるかどうか」はその後のファンド運営で大きなポイントとなります。まずは、この違いをよく理解しておきましょう。

1-2.不動産の所有権

匿名組合は、事業者への出資を行うことで配当を受け取る権利を得られる契約形態です。実際に不動産を所有するのは事業者もしくは不動産会社となるため、投資家に不動産の所有権は与えられません。

一方、任意組合は投資家の出資額に応じて持ち分が与えられ、所有権が発生します。そのため、契約手続きを行うときは不動産取得税の納付を行わなければなりません。

1-3.所得の取り扱い

不動産クラウドファンディングでは、家賃収入によって得た収益の一部が投資家に還元されます。この所得の取り扱いについても、匿名組合と任意組合で異なります。

まず匿名組合では、不動産クラウドファンディングで受け取った分配金は「雑所得」とみなされ、総合課税の対象となります。税金は事業者側で源泉徴収されますが、投資によって得た収益が一定水準を上回る場合は確定申告が必要です。

一方、任意組合では、不動産クラウドファンディングで得た分配金は「不動産所得」となります。不動産所得の場合も総合課税の対象となり、必要に応じて確定申告を行わなければなりません。

不動産クラウドファンディングに取り組む場合は、確定申告が必要となる基準についても意識しておきましょう。

1-4.責任の範囲

投資家が持つ責任の範囲も大きく異なるポイントです。匿名組合では投資家は不動産の所有権を持たないため、責任の範囲も有限となります。万が一ファンド運営で損失が発生したときも、投資家が被る損失の幅は出資金の範囲内となることが基本です。

一方、任意組合はファンド運営の当事者となるため、無限の責任が発生します。もしファンドに損失が生じれば、その損失に対して責任を負うこととなり、場合によっては出資金以上の損失を被ることも考えられます。

任意組合型で契約を行う場合は、責任の範囲についてもよく確認しておくことがおすすめです。

1-5.相続税対策の効果

不動産の所有権の有無は、相続税対策の効果にも影響するポイントです。

匿名組合では不動産の所有権を持たないため、相続時に資産を圧縮する効果はありません。もし、100万円で投資していたとすれば相続資産としての評価額も100万円となり、現金で相続する場合と変わらないということです。

一方、任意組合の場合は現物の不動産を所有していることと変わらないため、相続時の資産評価額を圧縮させる効果があります。現金で相続する場合よりも評価額を抑えられるので、結果として相続税の負担を軽減することが可能です。

1-6.運用期間や最低投資金額

匿名組合と任意組合は、ファンドの運用期間や最低投資金額にも違いがあります。

匿名組合は数ヶ月~数年単位の短期運用のファンドが豊富で、1万円から投資できるものも多く見られます。申し込み手続きも簡潔であるため、初めて不動産クラウドファンディングを行う人でも取り組みやすいでしょう。

一方、任意組合は「投資家それぞれが所有権を持つ」という契約の特性上、投資期間が長く、最低投資額も高い傾向にあります。「短期で利益を得たい」、「まずは少額で投資してみたい」という人は、匿名組合の方が向いているといえます。

1-7.運営上の権利

前述の通り、匿名組合は事業に当事者として関わることはありません。不動産の運営を行うのは事業者なので、運営の方針などに投資家が助言・進言を行うこともできません。

しかし、任意組合はファンド運営の当事者となるため、運営方針などについての決定権を有しています。「いずれは現物の不動産投資をしたい」と考えている人は、不動産クラウドファンディングを通じて不動産投資の勉強をするのもよいかもしれません。

2.匿名組合と任意組合の比較表

ここまで紹介した匿名組合と任意組合の違いを下記表にまとめています。

 

匿名組合

任意組合

根拠となる法律

商法

民法

不動産の所有権

なし

あり

所得の取り扱い

雑所得

不動産所得

責任の範囲

有限

無限

相続税対策の効果

なし

あり

運用期間

短期

長期

最低投資金額

1万円

数百万円

運営上の権利

なし

あり

どちらの契約形態を選ぶかで税制上の取り扱いや投資期間などが大きく異なります。初めて不動産クラウドファンディングに投資する際は、2つの契約形態の違いをよく理解しておきましょう。

3.匿名組合と任意組合のメリット・デメリット

匿名組合と任意組合の違いを踏まえたうえで、それぞれのメリット・デメリットについて解説します。

3-1.メリット比較

匿名組合のメリット

任意組合のメリット

・少額から投資できる
・初心者でもチャレンジしやすい
・損失の範囲が限られている

・節税対策として有効
・まとまった資金を投資できる
・長期での運用が可能

匿名組合は少額から投資できることや、損失の範囲が限られていることから、初心者でもチャレンジしやすいメリットがあります。投資期間が数ヶ月のファンドも多いため、比較的気軽に投資できる契約形態です。

任意組合については、相続税対策をできる点が大きなメリットです。まとまった資金かつ長期で投資することが可能なので、「運用して増やしたいお金」というより「家族に遺したいお金」で出資するとよいでしょう。

3-2.デメリット比較

匿名組合のデメリット

任意組合のデメリット

・節税効果は得られない
・人気の高いファンドは争奪戦
・運営に関する意見が言えない

・不動産取得税がかかる
・初期手続きが面倒
・出資金以上に損失を被る可能性がある

匿名組合は初心者から上級者まで多くの投資家が利用する契約形態であるため、人気のファンドに申し込みが殺到することがあります。申し込み方法は先着もしくは抽選となりますが、「申し込み開始からすぐに上限に達してしまう」、「なかなか抽選に当たらない」ということも珍しくありません。

申し込みたいファンドがある場合は、必ず申し込み方法とスケジュールを確認するようにしましょう。

また、任意組合では発生しうる損失の大きさを理解しておく必要があります。場合によっては出資金以上の損失を被ることもあるため、ファンド選びは慎重に行うことが大切です。

加えて、初期手続きの流れや税金などのコストについても確認しておくとよいでしょう。

4.匿名組合と任意組合どっちを選ぶべき?

これまで紹介した匿名組合と任意組合の特徴を押さえたうえで、それぞれおすすめの人をまとめていきます。

4-1.匿名組合が向いているのはこんな人

・初めて不動産クラウドファンディングに投資する人
・少額投資から始めたい人
・短期間で運用したい人

匿名組合の大きな魅力は、なんといっても気軽に投資がしやすい点です。少額かつ短期で投資ができるので、初めて不動産クラウドファンディングにチャレンジする人は、まず匿名組合型のファンドから入るとよいでしょう。

もちろん投資するうえでリスクをよく考慮する必要はありますが、匿名組合は損失の幅も限定されている点も嬉しいポイントです。「いきなり大きなリスクは負いたくない」という人も匿名組合型のファンドを検討してみましょう。

4-2.任意組合が向いているのはこんな人

・相続税対策を行いたい人
・長期投資を行いたい人
・まとまった資金での運用を考えている人

任意組合型の契約は、相続税対策を考えている人におすすめです。相続税対策には生前贈与や生命保険を活用する方法がありますが、不動産クラウドファンディングでの相続税対策はこれらの方法との併用が可能です。

「相続税対策をやり尽くしてしまった」という人は、任意組合での投資を検討してみましょう。

なお、相続人が相続手続きを行う際はそのまま契約を引き継ぐか、解約して現金化するかを選べることが一般的です。

5.違いを理解して不動産クラウドファンディングに取り組もう

不動産クラウドファンディングには「匿名組合」と「任意組合」の2種類があり、税制上の取り扱いや投資期間、最低投資金額などが異なります。不動産クラウドファンディングに取り組む際は、まず投資の目的を明確にしたうえで、その目的に応じて適切な契約形態を選びましょう。

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この記事を書いた人

椿 慧理

ライター

椿 慧理(つばき えり)

銀行を10年間勤務し経験を通じて得た金融知識を活かし、金融ライターとして独立。
金融商品やマーケットの解説、税制解説など初心者にも分かりやすい記事を手掛ける。
自らも12年の投資経験を持ち、国内外株式、投資信託、暗号資産を運用中。

保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、内部管理責任者

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