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貯蓄
介護の費用負担ってどれくらい?備えておくべき金額とは
「人生100年時代」といわれる現代。現役を引退した後の老後資金に不安を感じている人も多いでしょう。生活費、住居費、医療費などさまざまな費用が必要となるなか、特に気になるのが介護費用です。「実際のところ介護費用がどれくらいかかるのか分からない」と漠然とした悩みを抱えている人もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、介護費用の負担や、備えておきたい資金の目安について解説します。
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目次
1.介護にかかる一時費用の平均額は74万円
公益財団法人生命保険文化センターが行った「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」では、介護にかかった費用についての調査が行われました。まずは、介護で必要となった一時費用の負担額について見ていきましょう。
1-1.介護の一時費用の平均額
介護を行う中で、自宅のリフォームが必要となったり、体の状態に合わせてベッドを買い替えたりなど、一時的な費用の負担が発生します。同調査によると、介護の一時費用にかかった金額は下記の通りです。
金額 |
割合(%) |
掛かった費用はない |
15.8 |
15万円未満 |
18.6 |
15万~25万円未満 |
7.7 |
25万~50万円未満 |
10.0 |
50万~100万円未満 |
9.5 |
100万~150万円未満 |
7.2 |
150万~200万円未満 |
1.5 |
200万円以上 |
5.6 |
不明 |
24.1 |
平均額 |
74万円 |
引用:公益財団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
「掛かった費用はない」、「15万円未満」と答えた人の割合が多いものの、介護の一時費用の平均額は74万円となっており、決して安い金額ではないことが分かります。
1-2.一時費用は要介護度によっても異なる
次に、一時費用の金額を要介護度別に見てみましょう。
要介護度 |
一時費用 |
要支援1 |
101万円 |
要支援2 |
37万円 |
要介護1 |
39万円 |
要介護2 |
61万円 |
要介護3 |
98万円 |
要介護4 |
48万円 |
要介護5 |
107万円 |
引用:公益財団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
一時的な費用負担は、要介護度が上がるほど大きくなる傾向にあり、最も介護度が重い「要介護5」の人は107万円もの一時費用がかかる結果となりました。
自宅のリフォームやベッドの購入にかかる一時費用は、より快適な暮らしを送るために必要な資金です。介護を受ける人、介護を行う人どちらの負担も軽減できるように、資金の備えはしっかりとしておきたいものです。
2.介護にかかる毎月の費用は平均8.3万円
同調査では、介護に要した月々の費用負担に関する調査も行われました。収入が限られる老後生活では、毎月かかる介護費用が大きな負担となることもあります。いざ介護状態となったときに、「思ったよりも介護費用がかかって、毎月赤字が続いている」ということのないように、あらかじめ費用負担の目安を確認しておきましょう。
2-1.介護にかかる月額の平均費用
同調査によると、介護にかかった毎月の費用負担は次の通りです。
介護に要した月々の費用 |
割合(%) |
支払った費用はない |
0 |
1万円未満 |
4.3 |
1万~2万5千円 |
15.3 |
2万5千~5万円未満 |
12.3 |
5万~7万5千円未満 |
11.5 |
7万5千~10万円未満 |
4.9 |
10万~12万5千円未満 |
11.2 |
12万5千~15万円未満 |
4.1 |
15万円以上 |
16.3 |
不明 |
20.2 |
平均額 |
8.3万円 |
引用:公益財団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
最も多かったのは「15万円以上」と答えた人で、全体の16.3%にのぼる結果となりました。平均額は8.3万円で、前回調査(2018年)の7.8万円よりも費用負担が大きくなっていることが分かります。
2-2.介護を行う場所によっても費用負担が異なる
介護にかかる毎月の費用は、「介護を行う場所」によっても異なります。同調査では、「在宅で介護を行った人」と「施設へ入居した人」別の費用負担の結果も公表されました。
月々の介護費用 |
在宅(%) |
施設(%) |
支払った費用はない |
0 |
0 |
1万円未満 |
7.2 |
0.4 |
1万~2万5千円 |
22.3 |
6.3 |
2万5千~5万円未満 |
17.6 |
4.7 |
5万~7万5千円未満 |
13.3 |
9.1 |
7万5千~10万円未満 |
2.3 |
8.7 |
10万~12万5千円未満 |
4.3 |
20.9 |
12万5千~15万円未満 |
1.2 |
7.9 |
15万円以上 |
5.8 |
30.7 |
不明 |
26.0 |
11.4 |
平均額 |
4.8万円 |
12.2万円 |
引用:公益財団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
在宅で介護を行った人の平均額は4.8万円、施設へ入居した人は12.2万円と、費用負担に大きく差が出る結果となっています。
「家族に迷惑をかけたくないから、老後は施設に入ろう」と考えている人もいるかもしれませんが、その場合は前もってしっかりと費用を準備しておく必要があります。
3.介護にかかるトータル費用は580万円
同調査結果によると、介護にかかった平均期間は61.1ヶ月(5年1ヶ月)です。前述の一時費用と毎月の費用から、介護にかかるトータルの資金は次の通りとなります。
一時費用74万円+毎月の費用8.3万円×61ヶ月=580.3万円 |
約5年間介護を行った場合、トータルで580万円もの資金が必要になる結果となりました。人によっては介護期間が5年以上になることもあるため、そうなるとさらに介護費用が掛かることが想定されます。
加えて、老人ホームなどの施設に入るとなると、月額の費用負担が大きくなることからトータルの費用にも大きな差が表れます。
一時費用74万円+毎月の費用12.2万円×61ヶ月=818.2万円 |
施設にかかる費用は入居する施設の種類によっても異なりますが、自宅での介護よりも費用負担が大きくなることを覚えておきましょう。
4.公的介護保険を利用すれば備えがなくても大丈夫?
「公的介護保険制度を利用すれば、費用負担は問題ないのでは?」と感じる人もいるかもしれません。
日本では公的介護保険制度が整えられており、40歳になると加入が義務付けられています。65歳以上で要支援・要介護状態になると、介護サービスにかかった費用の支援を受けられるため、「自己負担は少なくて済むはずだ」と考える人もいるでしょう。
しかし、これまで解説してきた費用負担は公的介護保険制度を利用した人も含めた調査結果です。同調査では公的介護保険の利用経験についての質問も行っており、「公的介護保険の利用経験あり」と答えた人が92.6%で、ほとんどの人が公的介護保険制度を利用していることが分かります。
つまり、先ほどの「介護に必要な資金は580万円」という結果は、公的介護保険制度を利用したあとの自己負担額ということです。そのため、公的介護保険制度だけに頼るのではなく、しっかりと現役世代から備えを行っておく必要があります。
5.介護費用負担への備えはどうする?
とはいえ、どのように介護費用への備えを行えばよいのでしょうか。ここからは、介護費用への備え方について、2つの方法を紹介していきます。
5-1.民間の介護保険
まず、公的介護保険制度では賄えない部分を民間の介護保険で補う方法があります。民間の介護保険とは、一定の条件に当てはまる状態になったとき、一時金や年金の形によって保険金を受け取る保険商品です。
民間の介護保険に加入するメリットとして、「保険金の用途が限定されない」ということが挙げられます。公的介護保険では、対象となる介護用品や介護サービスが定められており、対象外のものについては全て自己負担で支払わなければなりません。たとえば、日々必要となるおむつ代は公的介護保険制度の対象外となるため、全て自己負担で賄う必要があります。
その点、民間の介護保険で受け取った保険金は資金使途を限定されないため、日用品の購入や病院までのタクシー代などニーズに合わせて使うことができます。
商品によって保険金の給付条件や給付方法が異なるため、各社商品を比較しながら選定してみましょう。
5-2.資産運用
もうひとつは、自ら資産運用をして備える方法です。現在はNISAやiDeCoなど、長期的な資産形成を後押しする制度があるため、そういったものを活用するのもよいでしょう。
ただし、自ら資産運用をして備える場合は、あらかじめ「何歳までにどれくらいを貯めるか」という計画を立てておくことが大切です。
ここでは、50歳のときに子供が大学を卒業し、そこから介護費用の備えを始めるケースで貯蓄計画を考えてみましょう。仕事を65歳まで続けるとすると、15年間は貯蓄ができる計算となります。
下記表は、NISA制度を利用して、介護に必要な580万円を15年間で準備する場合のシミュレーションです。
【580万円を15年間で準備する場合に必要な積立金額】
想定利回り(年利) |
毎月の積立金額 |
3.0% |
25,554円 |
5.0% |
21,699円 |
7.0% |
18,299円 |
毎年3%で運用する場合、毎月の積立額は約2万5,000円となります。もちろんNISAでの運用は元本保証がないため、きちんとリスクは理解しておく必要があります。ただし、15年にわたって投資のタイミングを分散していれば、リスクもある程度軽減できるといえるでしょう。
また、iDeCo制度を将来の備えとして活用する方法もあります。iDeCoで貯蓄した資金は65歳から受け取りができるため、私的年金制度であるものの介護資金の備えとして活用することも可能です。加えて税制上の優遇も受けられるため、「税制上のメリットを受けながら資産形成をしたい」という人は、iDeCoの活用を検討してみましょう。
6.まとめ
老後の介護は、誰もが避けて通れない問題です。本記事で紹介した「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」によると、トータルで580万円もの資金が必要になるとの結果が出ており、計画的な備えが必要であることが分かります。
いざ介護が必要になったときに資金面で苦労することのないように、現役世代の内からしっかりと備えておきましょう。
【参考】
公益財団法人生命保険文化センター「2021(令和3)年度 生命保険に関する全国実態調査」
今回の記事はいかがでしょうか。お金に関する知識をもっと知りたい方は是非無料セミナーに参加してみてください。
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この記事を書いた人
ライター
椿 慧理(つばき えり)
銀行を10年間勤務し経験を通じて得た金融知識を活かし、金融ライターとして独立。
金融商品やマーケットの解説、税制解説など初心者にも分かりやすい記事を手掛ける。
自らも12年の投資経験を持ち、国内外株式、投資信託、暗号資産を運用中。
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、内部管理責任者
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