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貯蓄
確定申告から見る、便利になったことの功罪
2月中旬から3月中旬は、個人事業主みんなが憂鬱な気持ちになる時期です。やれ領収書が見つからないだの、やれ経費がどうだの。要するに確定申告の時期ですね。
先日筆者も確定申告を終え、ホッと一息ついたのですが、確定申告をし終わったあとに、様々なことを考える機会をもらいました。今日はそのことについてお話できたらと思います。
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お金と私とチョコレート菓子
筆者は小さなころから、家族に「きり丸」と呼ばれていました。きり丸くんは、某国営放送の某忍者アニメに登場し、すぐ目を¥マークに輝かせてお金に飛びついていく、守銭奴的キャラクターです。私はどうやらあのキャラクターに似ているようなんですよ。
突然ですが、皆さんはチョコレートの中にアーモンドが入っているお菓子はお好きですか?私はとっても大好きです。美味しいですよね。ではあのロングセラー商品に、パフが入っているバージョンもあるのはご存知でしょうか。あれも確かに美味しいですよね。でも実は私、パフ入りは絶対に買わないと決めています。
理由は明確です。
パフがある分チョコレートの含有量が減っており、明らかに単価が下がっているにもかかわらず、値段はパフがない方と比べて高いからです。もちろん、チョコだけのバージョンよりも製造の手間がかかっているのですから、値段が高くても仕方がありません。
しかし、私はパフの方がチョコレートよりも単価が低いのに、製造の手間がかかるという理由だけで値段が高いのが許せないのです。これは、小学3年生の時に、母と地元のスーパーで買い物をしていた際に気付いたことです。
「このパフってチョコレートより単価高いのかな?」
「え~?チョコレートの方が高いんじゃない?」
「え!?じゃあパフがある分チョコレートが減ってるのに、こっちの方が高いの!?」
「あんたね…みんなそんなこと考えて買わないの!美味しければなんでもいいでしょ。サクサクして美味しいじゃない」
そういう問題じゃない!と思いました。
これは味覚の問題でも食感の問題でもなく、私が「なんか損した気がする」と思うことが問題なのです。お分かりですね?私は面倒なタイプのきり丸なのです。
お金と母と確定申告
ここまで読んでみると、母もさぞかしお金お金とうるさそうだと思うかもしれません。しかし母は私とは対照的で、お金にまるで頓着しない人でした。というか今でもそうです。
美味しければなんでもOK!可愛かったら買う。母の実家は裕福でもなんでもなかったのに、よく生きてこれたものです。私のようながめついタイプが生まれたのも、遺伝子の抵抗なのかもしれません。そんな母ですが、税金や経費節約についてはかなり詳しいです。
私も一応FPなのでそこそこ詳しい方だと思うのですが、時折母が税金についてかなり深い知識を披露するので驚かされることがあります。損得勘定と難解な計算が大嫌いなはずなのに、税金と経費に関わることは私よりも詳しいかもしれません。この現象は、長年の確定申告による副産物でした。
確定申告の思い出
筆者の母は、自宅でピアノを教えている、いわゆる「ピアノの先生」です。筆者が生まれる前からずっとピアノを教えており、物心ついたころからピアノの音が家中に響いていました。拠点はいくつかあったようですが、筆者が覚えているのは叔父の家と自宅の2ヶ所。
40人以上の生徒さんがいたときもあったので、結構忙しかったのではないかと思います。母は個人事業主なので、税金の計算は自分で行わなくてはなりません。40年以上、確定申告を続けていましたが、母はずっと一人で対応していました。だからでしょうね。
確定申告の季節がやって来ると、母は半狂乱になりました。
「レシートがない!」
「領収書どこにやったかしら?」
「これって経費にできるんだった!?」
小学生の娘に訊かんでくれよ、と思いましたが、独り言だったのかもしれません。
とにかく、筆者と妹は確定申告の紙っぺらに一喜一憂する母を、面白おかしく見ていました。
母をイジる空気を醸し出してはいましたが、子供心に「母がすごいことをしている」というのは分かっていました。
数字がびっしりと並んだ帳簿。山積みになったレシートや領収書。
それらを地道に整理しながら難解な計算を繰り返す母に、尊敬の念を抱いたことを今でもふと思い出すことがあります。
一昔前までは全て手計算で、しかも紙で提出しなければなりませんでした。書類提出も対面で行うため、質問を受けることもあったようです。ですから、税金や経費節約について詳しくならざるをえなかったのでしょうね。母は確定申告を通して、税知識を蓄えていったのです。
確定申告デビュー
幼いころは、「私もいつか確定申告をするんだな」と思っていました。ところが、筆者は会社員になったので、年末調整ですみます。カッコイイと思っていた確定申告には、しばらくご縁がありませんでした。確定申告とご縁ができたのは副業を始めてからです。
いよいよ私もあの難解な計算をする時が来たのかと、覚悟を決めたのもつかの間。一瞬で終わってしまいました。
母が10日以上かけてうんうん唸りながらやっていた作業は、僅か1時間ほどで終了してしまったのです。今は全部会計ソフトがやってくれるんですね。正直、かなり拍子抜けしました。
母が半狂乱になりながら計算が合わないと騒いでいた確定申告も、会計ソフトに言われるがまま数字を入力するだけで、即終了です。正直、会計ソフト最高ー!とは思います。あの恐ろしい作業が待っているのかと、戦々恐々としていましたから。
しかし確定申告が終わった後、私は会計ソフトの存在がいいものばかりではないなと思ったのでした。
脳死状態の確定申告
会計ソフトを通した確定申告は、脳死状態でもできるというのが正直な感想です。凄く丁寧に作られており、指定された場所に数字を入力していけば、経費清算だけでなく、家事按分や医療費控除、生命保険料控除、地震保険料控除、基礎控除などなど、全てが埋まってしまいます。
ですから、それぞれの控除がどんな役割をしていて、どの部分がどのように関係しているのか全く理解していなくても確定申告が出来てしまうのです。会計ソフトは、私たちの「楽して確定申告したい」を120%の力で叶えてくれます。
しかし、私たち個人事業主が本来知っておかなければいけない「お金のルール」を勉強する機会を2000%奪っています。個人事業主であるがゆえに、お金には詳しくなければならないと筆者は思います。知識を蓄えておかないと、損をする確率が跳ね上がるからです。日本のお金事情は毎年変わります。人口の変動や世界情勢などで税収が大きく変わったり、支出が増減しますから当然ですね。
そんなの当たり前の話でしょ?と思われるかもしれませんが、その事実が私たちの生活にどう影響を及ぼすかを知っている方はあまり多くありません。国民年金も毎年、若干支払い額が変わるし、雇用保険料のパーセンテージだって変わります。その額が跳ね上がれば、私たちの生活は打撃を受けるでしょう。個人事業主なら思いもよらない大損害になることだってあるはずです。
会計ソフトがない時代には皆が分かっていた税金の仕組みも、今はどれだけの方が芯から理解しているのでしょうか。知識を得られるチャンスを奪われた人々は、自分の身を守れるのでしょうか。
便利な世の中になって、なんでもできるようになったかのように見えて、実はできないことも同じくらい増えているのではないかと思うのです。
ピンチはチャンス
ちなみに筆者は、最終的に「これっていい傾向かも?」と思うようになりました。というのも、「知識を持っている」ことに箔がつくようになったからです。知識を得るには、悩んだり、我慢したり、必死になったりしなくてはならないことがあります。
しかし今の時代は、それらを「やらなくてもいい苦しいこと」として忌避してしまっても、そこそこ過ごせてしまいます。自分で望まないと、知識を得ることができなくなっているのです。逆に言うと、「やらなくてもいい苦しいこと」をしようとする人の価値は、かなり高まります。
皆ができないことを「できる」って、凄いことです。筆者は性格が悪いので、「どうか皆さん、そのまま脳死状態でいてくださいね」とすら思います。
皆が脳死状態で行っていることを説明できるようになったり、深く考えられるようになるだけで、他の人よりも一歩リードできますので。人よりもちょっと頑張るだけで成功のチャンスをつかめるなんて、凄くラッキーですよね。
便利になったことの功罪
私は確定申告を脳死状態で終えられたので、悩むことなどありませんでした。
でも悩まない状況が増えるって恐ろしいですよね。自分の状況にまったく疑問なく過ごすなんて、人生においてあり得ないですし。私たちは便利さを手に入れた代わりに、「深く考える機会」と「悩みを解決する力」を奪われてしまったのかもしれません。
もし今あなたが何かに悩んでいるなら、脳死状態でないことを大喜びすべきです。悩んでいるということは、脳死状態から脱却しているということ。今の状況をどうやって抜け出せばよいのか、様々な挑戦をしているということです。その経験は、いつか必ず「知識」に昇華します。
悩みを解決するために深く考え、解決に向けて努力しているそのプロセスが、誰かの求める知識になるはずです。本を読んだり、資格を取得しなくたって、知識は得られます。
成果が出なくても、成果を出そうと挑戦したことはいずれ知識に昇華できるし、失敗だって立派な知識です。努力したことは必ず自分の身体にしみこんで、糧となってくれます。ですから、すぐに成果が出なくても、諦めずに続けるしかないと筆者は思います。
AIや会計ソフトがなんでも答えを出してくれる時代に悩むことができるって、すごく幸せなことなのかもしれません。悩んでいるその時は苦しいかもしれないけれど、その「知識」がいつか必ずあなたを支えてくれると断言できます。「他人の考えた正解」が溢れた時代でも、「自分の考えた正解」を導き出せるよう、ともに知識を増やす旅を続けましょうね。
今回の記事はいかがでしょうか。お金に関する知識をもっと知りたい方は是非無料セミナーに参加してみてください。
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この記事を書いた人
ライター
齋藤佑美(さいとうゆみ)
複数の大手メディアでコラムを執筆する2児の母。
FP上位資格のAFP、生命保険協会認定FP資格であるTLC取得。
女性に寄り添ったコラムが好評を得、週刊女性にて記事の監修を行う。
お金の知識や現場の体験を踏まえた記事に定評がある。
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