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貯蓄
経営破綻!シリコンバレー銀行の事例の行方
2023年3月10日、全米16位ランクのカリフォルニア州のシリコンバレー銀行が経営破綻となりました。シリコンバレー銀行は、顧客企業としてスタートアップ企業に資金提供していました。
このニュースは全米だけではなく、各国の市場において日本経済への影響が懸念されています。「リーマンショック級なのか?」と騒がれている状況です。当コラムを参考にされている読者の方も、今後の米国株を含めた金融商品への影響が気になることでしょう。
今回は、シリコンバレー銀行の経営破綻について、情報を調査しまとめてみました。そのうえで経営破綻の要因や今後の動向など、読者の方々にわかりやすく伝えたいと考えています。
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シリコンバレー銀行(以下SVB)の破綻はなぜ起きたのか
具体的にこの件では、2023年3月9日の取引開始から3月10日にかけて86%の下落となって、SVB株の取引が停止されたことで大きなニュースとなっています。どのような経緯(いきさつ)で経営破綻となったのか、について調べてみました。
シリコンバレー銀行についておさらい
シリコンバレー銀行は、米国カリフォルニア州に本社があるSVBファイナンシャルグループ傘下の米国の銀行です。シリコンバレー銀行が米国でどれほどの位置にある銀行だったのか、おさらいします。
シリコンバレー銀行(以下SVB)は、1983年に設立し、スタートアップ企業向けの融資を行っていることで認知されている銀行です。おもな顧客は、テクノロジーやライフサイエンス、ヘルスケア事業など。これら事業の顧客企業に44%の資金を提供していました。
SVBの2022年末の資産規模は、全米16位に位置する2090億ドルです。預金は、1754億ドルで支店数が17店舗という経営規模でした。
2023年3月10日に発生したSVBの経営破綻の破綻規模は、2008年に起きた経営破綻である米国貯蓄金融機関のワシントンミューチュアルの次に大きな規模と考えられます。銀行破綻は、2020年10月以来の出来事です。
SVBの総資産50%が債券という割合から、金利上昇の悪影響が懸念されていました。その影響が経営破綻の要因と考えられます。それが2023年3月9日の株価暴落につながったとの見解です。
株価暴落の2つの要因
SVBの株価は、なぜ暴落したのでしょうか。SVBの株価暴落の大きな要因は、米国の高騰するインフレ対策に向けた連邦準備制度理事会(以下FRB)による金利引き上げとの見解です。さらに、その利上げを機に、暴落となった理由として2つの要因が考えられます。
要因その1 |
FRBのインフレ引き締め政策がSVB保有の債券(総資産の50%)に重くのしかかった ● 2023年3月9日債券ポートフォリオ210億ドルの売却を完了 ● 同日、18億ドルの損失を計上 SVBは、上記損失を補てんするため23億ドルの資金調達を実行し失敗する |
要因その2 |
● 借入金利の高騰により積極的に資金調達できなくなったスタートアップ企業が、SVBから預金流出している ● この動向を察したSVB顧客数社が銀行の経営破綻を懸念しSVBへの取引を制限するようになった |
上記2つの要因から、米国の規制当局はSVBファイナンスグループを閉鎖しました。SVBは、米国連邦預金保険会社(FDIC)の管理下となっています。
出典:株式会社メディアジーン「BUSINESS INSIDER」原文:George Glover
シリコンバレー銀行の現状
2023年3月10日、SVBは、同行の顧客預金1750億ドルがFDICの管理下となっています。顧客は、25万ドルまでの預金をFDICに保護されている状況です。
※出典:東洋経済新報社|東洋経済オンライン「『シリコンバレー銀行破綻』で今起きていること」
シリコンバレー銀行の公式サイトを訪問すると、ページトップで以下のメッセージが表示されています。※2023年3月18日現在
「新しく設立されたフルサービスの FDIC 運営の「ブリッジ バンク」です。銀行は営業しており、新規および既存の預金者は自分のお金に完全にアクセスでき、預金を保護できます」原文まま翻訳
※出典:Silicon Valley Bridge Bank, N.A.シリコンバレー銀行
SVB公式サイトでは、FDICが預金者に対して口座へのアクセスができることを説明しています。米国連邦預金保険会社の対応は、経営破綻で不安な顧客に対して「お金への安心」を訴求している状況です。
米国での影響
今回のSVB株暴落は、米国においてどのような影響を及ぼしたのでしょうか。3月10日の破綻の影響を受けて、ニューヨークのシグネチャーバンクも破綻しました。SVBの破綻は、米国の銀行全体のぜい弱性をあらわにしたとも考えられます。
2022年からの米国による長期金利の上昇は、銀行の抱える債券の含み損を拡大させています。米国の銀行全体で抱える債券の含み損の推移は、次のとおりです。
- 2021年末:約80億ドル
- 2022年末:約6200億ドル
上記のように、銀行の抱える債券の含み損は急拡大しています。また、短期金利が長期金利を上回る利回り曲線の状態となる逆イールド化が長期運用商品の多い銀行にとっては、逆風となって収益を悪化させている状況です。
米国の金融政策の策定を行う連邦準備制度理事会(FRB)の利上げ実施が続いても、米国の物価上昇率は高止まりしています。そのため、逆イールド化が収まる気配がありません。米国の銀行全体の先行きは厳しさが増すばかりです。
SVBの破綻は、米国の銀行全体への影響が避けられないなか、米国債を抱える海外の銀行も関係してきます。
出典:株式会社野村総合研究所(NRI)「シリコンバレーバンクの破綻は米銀全体が抱える脆弱性を浮き彫りに」
日本への影響
SVBの日本経済への影響は、どのような見解でしょうか。ロイター通信では、今回のSVBの経営破綻による日本の金融機関への影響は限定的という日本銀行・金融機構局の発言が示されていました。日本の金融機関の場合は、自己資本を有している状況でも今後の状況を見守ることがうかがえます。
出典:ロイター通信「シリコンバレー銀破綻、日本の金融システムへの影響限定的=日銀」
SVB英国法人の買収
SVBの経営破綻は、英国においても動きがありました。日本貿易振興機構(JETRO)の「ビジネス短信」によると、英国金融機関のHSBCは、3月13日付でシリコンバレー銀行の英国法人シリコンバレー銀行UK(SVB UK)を1ポンドで買収を発表しています。この対応により、英国のSVB UKの預金は保護されました。一連の声明は、英国に複数存在する投資家の市場取引を安心させるための行動です。
米国SVB親会社による破産法申請
2023年3月17日、SVB親会社のSVBフィナンシャルグループは、連邦破産法11条を適用申請しました。これにより同グループの資産は裁判所の管理下となって円滑な売却や債務整理が進みます。
※出典:JIJI.COM
SVBの破綻を振り返って
米国の金利引き上げの影響が銀行の経営破綻となったことで、米国内だけではなく、日本にも時間の経過とともに影響する可能性があるかもしれません。こればかりは正確に読み取ることは難しいため、あらゆる情報源を入手しても、憶測で読み取るしかないでしょう。
考えられる点は、米国株式への分散投資ではなく特定の銘柄で運用している人にとっては、影響が考えられます。先を読み解く力は、このような市場の大きな変化を経験することで、知見を増やす役割もあります。影響を受けた人も影響を受けていない人も。時間の経過とともに次なる動向の変化が待っているかもしれません。今回の米国銀行の破綻から何を学ぶか、が今後の資産運用におけるポイントです。ひとつの情報だけではなく、あらゆる視点から判断してみましょう。
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この記事を書いた人
ライター
江戸利彰(えどとしあき)
ビジネス系の記事執筆を生業として取り組むライター。
累計800記事ほどの納品を経て、現在も日々の執筆から「情報の伝え方」をブラッシュアップしています。
ソースをしっかりと取る記事作りをモットーとしており、正確な情報提供に努めています。
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