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タンス預金は税務署にバレる?その理由を元銀行員が解説
金融機関の預金口座ではなく、自宅のタンスや金庫で現金を保管する「タンス預金」。中には、税金対策でタンス預金を行っている人もいるかもしれません。
しかし、元銀行員の筆者の体験からいうと、タンス預金は税務署にバレてしまう可能性が大です。この記事では、タンス預金がバレる理由と注意すべき点について解説していきます。
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1.タンス預金自体は悪いことではない
タンス預金とは、保有する現金の一部を自宅のタンスや金庫で保管することです。タンス預金はネガティブなイメージを抱かれがちですが、その行為自体は違法でもなく、悪いことではありません。
しかし、税逃れ目的でタンス預金を行う人が多いことから、一般的に悪いイメージが定着した要因となっています。
2.タンス預金を行う目的
先ほど「タンス預金は税逃れ目的で行う人が多い」ということを伝えましたが、タンス預金には税金対策以外にもさまざまな目的があります。ひとつずつ見ていきましょう。
2-1.相続税や贈与税を軽減したいから
タンス預金の大きな目的が、相続税や贈与税の税負担軽減です。
実際に、筆者も銀行員時代に冗談交じりに「タンス預金にしておけば税務署も分からないでしょう」とおっしゃるお客さまに多く出会いました。相続税や贈与税は税率が高いことから、「少しでも負担を軽減したい」という気持ちは分からなくはありません。
タンス預金のリスクの高さについては後でくわしく解説しますが、「資産の一部を隠したい」という気持ちでタンス預金を行う人も多く見られます。
2-2.金融機関へ行く回数を減らしたいから
「金融機関に行く回数を減らしたい」という理由からタンス預金を行うケースもあります。特に、高齢になると「お金を引き出すためだけに銀行へ行くのは億劫だ」ということもあるかもしれません。
タンス預金ならいつでも現金を手元に準備しておけますので、病院での医療費や買い物、急な出費などにも対応しやすいメリットがあります。
2-3.ペイオフ対策をしたいから
ペイオフ対策もタンス預金を行う理由のひとつです。万が一金融機関が破綻したとき、預金者1人につき元本1,000万円までとその利息は保護されますが、それを超える部分については金融機関の財務状況によって支払われないことがあります。
そのため、多くの資産がある人は1,000万円だけを金融機関に預け、超過分は自宅でタンス預金として保管するケースも見られます。
2-4.口座凍結に備えたいから
金融機関による口座凍結も多くの人が気になるポイントです。金融機関は預金者が亡くなった事実を知ると、その口座を凍結し、入出金が行えないようにストップをかけます。
そのため、「自分が亡くなったあとに家族が困らないように、当面の資金を現金で遺しておきたい」とタンス預金を行うケースもあるようです。
2-5.金融機関に預けていてもほとんど利息がつかないから
低金利環境が続く日本では、銀行預金の利息もほとんどつかない状況が続いています。メガバンクの普通預金金利でも年0.0010%(2023年9月14日現在)となっており、「ゼロに等しい」といってもよいほどです。
このような環境下では、「金融機関に預けていてもメリットがないから、いつでも現金が出せるタンス預金にしておこう」と考える人がいても不思議ではありません。
2016年にマイナス金利が導入され、金融機関が金利の引き下げを行った際、筆者も多くのお客さまに「銀行に預けていても利息がつかないからタンス預金でいいわ」と言われた経験があります。特に、バブル期のような高金利時代を知っている方からしたら、なおさら「金融機関に預けても意味がない」と感じるのかもしれません。
3.タンス預金は税務署にバレる?
タンス預金自体は悪いことではありませんが、相続税や贈与税逃れ目的でのタンス預金は税務署から調査が入る可能性があります。
では、なぜ税務署は自宅で保管しているタンス預金の存在を知ることができるのでしょうか?その理由について解説していきます。
3-1.KSKシステムによって税金に関するデータを管理されている
KSKシステムとは「国税総合管理システム」の略で、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、納税者の申告・納税に関する情報を一元管理しているものです。
KSKシステムでは過去の税関連のデータが蓄積されているため、申告された所得が少ないと税務調査が入る対象となります。
特に、KSKシステムの活用によって税務調査の対象となりやすいのが、「二次相続」のタイミングです。
たとえば、「①父→母」「②母→子供」の順番で相続をしたとします。①のタイミングで相続税が発生するとKSKシステムにその旨が記録されるため、税務署は②のタイミングで発生する相続税をおよそ把握できることとなります。
しかし、実際に②で申告された相続財産が少ないと、「どこかに相続財産を隠しているのでは?」と疑われてしまうのです。
よく「夫の相続税で大変だったから、子供にはタンス預金で遺しておきたい」ということを耳にしますが、高確率で税務調査が入ってしまうため、相続税対策でタンス預金を行うのはおすすめできません。
3-2.税務調査が入れば取引履歴を遡って確認される
何らかの原因によって税務調査が入ると、税務署の職員は金融機関の取引履歴を遡って細かくチェックします。このとき確認されるのは亡くなった被相続人だけでなく、配偶者や子供などの相続人の取引履歴も同じように確認を受けます。
筆者も銀行時代に担当していたお客さまのもとに税務調査が入ったことがありますが、そのときは必ず「〇年分の取引履歴を持ってきて」と依頼を受けていました。
もし、タンス預金にするために金融機関口座から出金していれば、必ず税務調査のときに「この現金はどこにいったのか」という追求を受けます。当然「覚えていない」では通用しないため、税務調査をきっかけにタンス預金がバレることも少なくありません。
税務調査で申告漏れが発覚した場合はペナルティとして追徴課税が課されてしまいますので、結果として本来よりも多くの税金を納めることとなってしまいます。
3-3.今後は預金口座がマイナンバーで紐づけされる可能性も
今後、マイナンバーの活用範囲が広がることで、税逃れがますます難しくなることも想定されます。現在、すでに証券口座の開設ではマイナンバーの提出が義務付けられていますが、将来的に金融機関の預金口座も同じようになる可能性もあるかもしれません。
もし、マイナンバーと預金口座の紐づけが進めば、国はより正確に1人1人の資産の管理ができるようになり、タンス預金などで税逃れを図ることは難しくなるでしょう。
4.タンス預金で注意すべきこと
タンス預金自体は違法行為ではないものの、いくつかのデメリットを被ってしまうリスクがあります。ここからは、タンス預金で注意すべきことを4点紹介していきます。
4-1.災害・盗難によるリスクがある
タンス預金で最も注意したいのが、災害や盗難によるリスクです。万が一水害や地震などによって自宅が被害を受けると、現金そのものが消失してしまうことも考えられます。
通帳やキャッシュカードを失くした場合であれば金融機関で再発行ができますが、現金を失くした場合は手立てがありません。
また、自宅で現金を保管していることで、盗難のリスクも高まってしまいます。きちんと金庫で保管していたとしても、盗まれる可能性がゼロになるわけではありません。
タンス預金を行う場合は、「災害や盗難で現金を失う可能性がある」ということをよく理解しておきましょう。
4-2.税金対策にはならない
前述の通り、タンス預金で税逃れを図ったとしても税金対策とはなりません。むしろ税務調査が入れば追徴課税を受けることにもなり、本来よりも多くの税金を納めることとなってしまいます。
相続税や贈与税の税負担を軽減したい場合は、生前贈与や不動産、生命保険など正当な手段で取り組むことが大切です。
4-3.遺族が気付かない可能性がある
タンス預金で資産を遺していた場合、生前に保管場所を伝えていなければ、亡くなった後に遺族がその存在に気が付かないこともあります。
特に、タンス預金ともなれば、普通は見つけやすい場所に保管するとは考えにくいでしょう。「防犯上、見つかりにくいところに保管しよう」と思っていると、本当にそのまま誰にも見つからないこともあるかもしれません。
これまで築いてきた大切な資産をきちんと遺族へ引き継ぐためにも、資産は金融機関に預け、確実に遺族へ相続できるようにしておきましょう。
4-4.相続トラブルの原因になる
タンス預金は、金融機関の預金とは違って履歴が残らないことから、相続トラブルの種になりやすいデメリットもあります。悪い方に考えるなら、「一番初めにタンス預金を見つけた人が資産を隠してしまえば分からない」ということもあり得るのです。
「我が家に限って相続トラブルは起きない」と思う人もいるかもしれませんが、最高裁判所の統計では、2021年における遺産相続の調停件数は1万3447件となっており、決して「稀なトラブル」というわけではありません。
また、相続人が相続手続きを済ませたあとにタンス預金を見つけるケースも考えられます。せっかく煩雑な手続きを終えたあとに相続資産を見つけてしまえば、また相続人間で話し合いを行わなければなりません。
相続人の手続きを軽減するためにも、遺す資産はなるべく少数の金融機関にまとめておく方がよいでしょう。
5.大切な資産だからこそ金融機関へ預けよう
タンス預金はいつでも手元に現金が置いておける利便性がある一方、相続トラブルのもとになったり、税務調査の対象になったりなど、デメリットが多くあります。
特に、税逃れを目的にタンス預金をしていると、後からペナルティを受けることもあるかもしれません。大切な資産をきちんと守るためにも手元の現金は必要最低限にして、後は金融機関へ預けておくようにしましょう。
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この記事を書いた人
ライター
椿 慧理(つばき えり)
銀行を10年間勤務し経験を通じて得た金融知識を活かし、金融ライターとして独立。
金融商品やマーケットの解説、税制解説など初心者にも分かりやすい記事を手掛ける。
自らも12年の投資経験を持ち、国内外株式、投資信託、暗号資産を運用中。
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、内部管理責任者
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