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貯蓄
【事例紹介】個人年金保険とiDeCoはどっちがお得?
老後の私的年金を準備できる「個人年金保険」と「iDeCo」。いずれも税制優遇が受けられることが特徴ですが、よりメリットが大きいのはどちらの制度なのでしょうか。この記事では、個人年金保険とiDeCoの税制優遇の違いやそれぞれの制度が向いている人を解説します。
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目次
1.個人年金保険とiDeCoの所得控除の違い
個人年金保険とiDeCoはどちらも「所得控除」の対象ですが、控除額の上限には大きな違いがあります。下記の表でその違いを確認しましょう。
|
所得控除の上限額(年間) |
個人年金保険 |
最高4万円 |
iDeCo |
第1号被保険者・任意加入被保険者:81万6,000円 第2号被保険者:14万4,000円~27万6,000円 第3号被保険者:27万6,000円 |
個人年金保険の所得控除は最高4万円であるのに対し、iDeCoはさらに大きな所得控除を受けられることが分かります。会社員や公務員はさらに細かい分類があるため、下記の表で確認してください。
第2号被保険者の分類 |
所得控除の上限(年間) |
勤務先に企業年金がない会社員 |
27万6,000円 |
企業型DCのみに加入している会社員 |
24万円 |
・DBと企業型DCに加入している会社員 ・DBのみに加入している会社員 |
14万4,000円 |
公務員 |
14万4,000円 |
2.税制メリットをシミュレーション
所得控除を受けると、所得税と住民税の負担軽減につながります。個人年金保険とiDeCoに加入した場合、それぞれどれくらいの税金が軽減されるのか、具体的な例で考えてみましょう。
【課税所得500万円の会社員(企業年金なし)】
|
個人年金 |
iDeCo |
年間の掛金額 |
24万円(月2万円) |
|
所得控除額 |
4万円 |
24万円 |
所得税(20%)の軽減額 |
8,000円 |
4万8,000円 |
住民税(10%)の軽減額 |
4,000円 |
2万4,000円 |
税金の軽減額合計 |
1万2,000円 |
7万2,000円 |
毎月の掛金は2万円と同じであるにもかかわらず、税金の軽減額はiDeCoが6万円も多い結果となりました。
iDeCoは掛金の拠出が全額所得控除されるため、掛金が多いほど税制メリットも大きくなります。一方、個人年金保険は所得控除が最高4万円となっており、それ以上は所得控除が受けられません。
3.個人年金保険が向いている人はこんな人
前述の通り、税制メリットはiDeCoの方が大きいものの、次の特徴に当てはまる人は個人年金保険への加入を検討することもおすすめです。
・運用に手間をかけたくない人 ・あらかじめ決まった利率で運用したい人 ・専業主婦(夫) |
それぞれくわしく解説していきましょう。
3-1.運用に手間をかけたくない人
個人年金保険のメリットとして、「管理に手間がかからない」という点が挙げられます。
iDeCoは主に投資信託で運用するため、定期的に保有商品の入れ替えや見直しを行わなければなりません。中には、自動的に組入資産を調整してくれるバランスファンドもありますが、それでも「数十年置きっぱなしにする」というわけにはいかないでしょう。
一方、個人年金保険は運用を保険会社に任せられるため、iDeCoのように運用に手間をかける必要がありません。「最初に加入手続きをしたら、後は放置しておきたい」という人は個人年金保険の加入がおすすめです。
3-2.あらかじめ決まった利率で運用したい人
個人年金保険には「定額型」と「変額型」の2種類がありますが、定額型は満期まで固定の利率で運用することが特徴です。契約時に満期に受け取れる金額や解約返戻金が確定するため、あらかじめ長期の運用計画の見通しが立てやすいメリットがあります。
一方、iDeCoは運用成果を年金として受け取るため、加入時点ではいくら受け取れるのかが分かりません。市況によっては元本を割り込むリスクもあるため、「より安定的に運用したい」という人は、個人年金保険の加入を検討しましょう。
3-3.専業主婦(夫)
収入がない専業主婦(夫)の場合は、所得控除による税制メリットを受けられません。そもそも給与や事業収入で所得税を納めていないためです。
ただし、個人年金保険の保険料を配偶者が支払う場合は、配偶者の所得から控除することが可能です。iDeCoは本人の所得からしか控除ができないため、所得控除のメリットを活かす手段がありません。
専業主婦(夫)が将来の私的年金の備えに取り組む際は、配偶者が税制メリットを受けられる個人年金保険の方が向いているでしょう。
4.iDeCoが向いている人はこんな人
続いて、iDeCoが向いている人は、次の特徴に当てはまる人です。
・所得金額が多い人 ・フリーランスや個人事業主 ・積極的に資産運用をしたい人 |
それぞれくわしく解説していきましょう。
4-1.所得金額が多い人
iDeCoは、掛金を全額所得控除できることが大きな魅力です。掛金が大きいほどより多くの控除が受けられるため、所得金額が大きく税負担に悩んでいる人は、ぜひ加入を検討するとよいでしょう。
iDeCoの加入でどれくらいの税制優遇が受けられるかは、iDeCoの公式サイト内のシミュレーションで試算ができます。65歳までの総軽減額もシミュレーションできますので、一度確認してみることがおすすめです。
4-2.フリーランスや個人事業主
フリーランスや個人事業主の方は、税負担だけでなく、将来受け取る年金額に不安を感じている人も多いかもしれません。個人事業主は公的年金が国民年金のみとなるため、厚生年金がある会社員と比べると、どうしても年金額は小さくなってしまいます。
ここで、iDeCoで毎月2万円を積み立てた場合の運用シミュレーションを確認してみましょう。仮に3%の年利で30年間運用したとすると、得られる運用成果は下記の通りです。
(※コストは考慮しないものとする)
画像引用:金融庁「資産運用シミュレーション」
30年間の運用利益は約445万円となり、30年後に約1,165万円の年金原資を準備できる計算です。iDeCoでは運用益も非課税となるため、約445万円の利益をそのまま受け取ることができます。
もちろん運用リスクについては十分考慮する必要がありますが、公的年金が不足しがちな個人事業主にとっては嬉しい制度です。
4-3.積極的に資産運用をしたい人
iDeCoでは、毎月の掛金を運用する商品を自分で選択します。運用商品は主に「投資信託」と「定期預金」で、好きに組み合わせることが可能です。
投資信託のラインナップは金融機関によって異なりますが、「国内株式」や「外国株式」、「債券」、「REIT」など豊富な商品が取り揃えられています。老後の年金を投資信託で運用しながら準備ができるのは、低金利下の現在においては嬉しい制度です。
さらにiDeCoでは、保有商品の乗り換えにかかる手数料も無料となっています。市況を見ながら自由にポートフォリオを入れ替えられるため、その時々で最適な資産配分にすることが可能です。
5.筆者の加入状況を紹介
ここからは、参考までに筆者の加入状況と、「加入してよかった」と実感したポイントについて紹介します。
5-1.個人年金保険の加入状況
個人年金保険は、「米ドル建ての平準払い保険」に加入しています。他の金融資産でリスクを取っている分、個人年金保険は安定的な運用を重視していますが、やはり円建て保険ではほとんど利回りが得られない状況です。「せっかく長い期間積み立てるなら、少しでも利回りを狙いたい」という気持ちから米ドル建て保険を選びました。
筆者が加入している保険は毎月適用金利が見直されるもので、加入後に金利が上昇した場合でもその流れをきちんとキャッチアップできることが魅力です。利率の最低保証もあるため、概ね満足しています。
また、生命保険料控除によって所得控除が受けられる点も嬉しいポイントです。これまで紹介した通り、iDeCoに比べると個人年金保険の税制メリットはそれほど大きくありませんが、活用できるものはなるべく活用しておきたいもの。年間4万円の所得控除でも、十分メリットはあるといえます。
5-2.iDeCoの加入状況
筆者は個人事業主として開業しているため、iDeCoの上限である月額6万8,000円を毎月の掛金として拠出しています。やはりiDeCoの魅力は、税制メリットの大きさです。年間81万6,000円もの所得控除となると、個人事業主が受ける青色申告の控除(最大65万円)よりも大きい控除なのです。
会社員時代も企業型DCがあったのですが、恥ずかしながらそのメリットはあまり実感していませんでした。何となく「年末調整で戻ってくる」という感覚があるくらいで、実際にどれくらいの税制優遇を受けているか分かっていなかったためです。
ところが個人事業主になると、実際に自分で確定申告を行うことから、所得控除を受けられることがどれだけありがたいことか、ようやく実感できるようになりました。税金が源泉徴収される会社員の方は、いまいち税制メリットがピンとこないかもしれませんが、ぜひ前述のiDeCoの税制優遇シミュレーションなどを活用して試算してみることがおすすめです。
6.税制優遇を活用して資産形成に取り組もう
個人年金保険とiDeCoは、どちらも将来の年金を私的に準備しながら税制優遇を受けられる制度です。税制優遇を重視するならより所得控除が受けられるiDeCo、安定的な資産形成を目指すなら定額で運用する個人年金保険を検討しましょう。
もちろんどちらか一方だけでなく、個人年金保険とiDeCoの両方に加入することも可能です。両方に加入すれば税制優遇を活かしつつ、安定的な資産形成も図ることができ、ポートフォリオのバランスも良くなります。「どっちがいいか決められない」という人は、それぞれ加入することを検討してみてはいかがでしょうか。
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この記事を書いた人
ライター
椿 慧理(つばき えり)
銀行を10年間勤務し経験を通じて得た金融知識を活かし、金融ライターとして独立。
金融商品やマーケットの解説、税制解説など初心者にも分かりやすい記事を手掛ける。
自らも12年の投資経験を持ち、国内外株式、投資信託、暗号資産を運用中。
保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、内部管理責任者
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