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相続

【相続時精算課税制度】の仕組みと注意点について解説

【相続時精算課税制度】の仕組みと注意点について解説

最大2,500万円まで非課税で贈与ができる「相続時精算課税」ですが、具体的にどのようなものか理解していない人も多いのではないでしょうか。

本記事では、相続時精算課税制度の基本的な概要からメリット・デメリットまで、分かりやすく説明していきます。2023年度の税制改正により、「相続時精算課税制度」に新たな非課税枠が設けられました。現行制度との変更点なども踏まえて見ていきましょう。

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「相続時精算課税制度」とは

 

まずは相続時精算課税制度の概要から確認します。

相続時精算課税制度の概要

相続時精算課税制度は、一定の条件下で、贈与税の申告と並行して相続時精算課税選択届出書を提出することで、合計2,500万円までの贈与が非課税となる制度です。申告は、贈与を受けた翌年の2月1日から3月15日の間に行わなければなりません。

父母や祖父母からの贈与は、全体として2,500万円に達するまで何度でも非課税となります。贈与者ごとにこの制度を利用するかどうかを選択できます。例えば、父母からの贈与は相続時精算課税で、祖父母からの贈与は暦年課税を選択する、といったことが可能です。

ただし、注意点として贈与者が亡くなって相続が生じた場合、相続財産に生前贈与を受けた分の財産を合算した額に対して相続税が課されます。これは、相続時精算課税制度が贈与時と相続時の税金を一緒に計算する制度だからです。

累計2,500万円を超えたら20%の贈与税がかかる

この制度を活用すると、贈与された財産の累積が2,500万円まで贈与税は課せられません。しかし、贈与財産の累積が2,500万円を超えた部分については、一律20%の贈与税が課されます。

改正後の変更点

2024年1月から実施される新たな税制改正により、既存の特別控除2,500万円に加えて、年間110万円までの基礎控除が新たに設けられます。この結果、年間110万円までの贈与については、以下のような変更が適用されます。

年間110万円までの贈与には贈与税がかからない

2023年度の税制改正では、相続時精算課税制度が改訂され、年間110万円の基礎控除が新たに設けられることが決まりました。これまでの制度では、累計2,500万円(特別控除)までが贈与税の対象外でしたが、今回の改正により、特別控除とは別枠で年間110万円までの基礎控除も活用できます。

例えば、その年に一括して2,500万円を贈与した場合、2,500万円に110万円を差し引いた2,390万円が特別控除対象になるのです。

年間110万円までの贈与は申告不要

現行の相続時精算課税制度では、少ない金額の贈与であっても贈与税の申告が必要でした。しかし、今回の改正により、年間110万円までの贈与は贈与税の申告が不要となります。これにより、日々の小さな贈与も含めて手続きの負担を軽減できます。

暦年課税と相続時精算課税制度の違い

贈与税の計算方法には「暦年課税」と「相続時精算課税」の二つが存在し、特定の条件を満たすことで「相続時精算課税」の選択が可能です。暦年課税とは、特定の個人が1年間(1月1日から12月31日まで)に受け取った贈与の合計額から、110万円(基礎控除額)を引いた残りの額に対して税金が課せられる制度です。

つまり、1年間に受け取る贈与総額が110万円以下であれば、贈与税は発生せず、申告の必要もありません。

相続時精算課税制度は、特定の条件を満たす人が活用できる制度で、条件は以下のとおりです。

【贈与者(贈与する側)】

贈与を行う年の1月1日時点で、贈与者は60歳以上の直系尊属である父母や祖父母など。

【受贈者(贈与してもらう側)】

受贈者は、贈与をしてもらう年の1月1日時点で20歳以上であり、かつ、贈与者の直系卑属(子どもや孫)。

相続時精算課税制度のメリット

ここからは相続時精算課税制度のメリットについて解説します。

2,500万円まで贈与税が非課税

相続時精算課税制度は、一度に大きな金額を贈与したいと考えている場合に有効です。例えば、1億円の財産を持つ祖父母から2,500万円が必要な孫への贈与でみていきましょう。通常の贈与では、贈与額から基礎控除の110万円を引いた残りの2,390万円に対して贈与税がかかります。

しかし、相続時精算課税制度を活用すれば、一度に2,500万円を贈与してもその全額が非課税となるため、一度に大きな金額を贈与することが可能になります。これにより、孫は贈与税の支払いを回避しつつ、必要な資金を得られるのです。

年間110万円までは暦年課税のような生前贈与加算がない

相続時精算課税制度における新たな年間110万円の基礎控除の設定により、より贈与が行いやすくなります。特に、この制度を選択し、年間110万円の基礎控除を活用することで、期間に関係なく生前贈与が相続税の計算に加算されずに贈与が完結できるのです。

将来的に値上がりが期待できる財産については節税が期待できる

相続時精算課税制度の大きな利点は、贈与した時点の価格で財産が相続財産に加えられることです。つまり、将来価値が上昇すると予想される財産を早期に贈与することで、相続税の負担を軽減できます。

例えば、価値が上昇すると見込まれる土地について考えてみましょう。もし2,500万円の土地を早期に贈与し、その後その土地が5,000万円の価値に上昇したとしても、その土地は贈与時の2,500万円として計算されます。したがって、価値が上昇する可能性のある財産の場合、相続時精算課税制度を活用することで相続税の軽減が期待できます。

他にもワンルームマンションやアパートなど収益を生む財産でも考え方は同じです。
贈与後の賃料収入は贈与を受けた人の財産となりますので、贈与税や相続税の対象にはなりません。
早期に収益物件を贈与しておくことで不動産の利益への課税を防ぐ事が出来ます。

相続時精算課税制度の注意点

相続時精算課税制度にはメリットがある一方で、いくつかの注意点があります。

ここからは、相続時精算課税制度の注意すべき点について解説します。

年間110万円を超えたら贈与税申告が必要になる

年間110万円の基礎控除が導入されましたが、そのメリットは年間110万円までの贈与に限られます。110万円を超える贈与がある場合、贈与税の申告が必要になり、また超過分は期間に関係なく必ず相続財産に加える必要があります。

小規模宅地等の特例が使えなくなる

小規模宅地等の特例は、特定の条件を満たすと、土地の相続税評価額を最大80%まで減らせる制度です。この特例を活用するためには、相続または遺贈(遺言を通じて財産を相続人やその他の人に移すこと)によって土地を取得している必要があります。

しかし、相続時精算課税制度を使って土地を贈与した場合、土地の取得は贈与によるものと見なされ、この特例を受けられません。そのため、高額の評価がついている宅地を所有している場合は不利になる可能性があります。

納税の先延ばしである

相続時精算課税制度とは、要約すると、「生前の2,500万円までの贈与は非課税となるが、贈与した人が亡くなると贈与した財産は相続財産と合算されて相続税の課税対象となる制度」です。

したがって、相続が生じたときには、贈与した財産も相続財産に加えて相続税の計算が必要となります。そのため、本制度で「贈与税」は非課税となる一方で、「相続税」は課税されます。つまり、本制度は納税のタイミングを先延ばしにするというものです。

相続時精算課税制度が向いている人

相続時精算課税制度のメリットや注意点を解説してきましたが、実際にどのような人が向いているのでしょう?ここからは本制度に向いている人を解説していきます。

相続税が0円である場合

そもそも相続税が0円になる見込みの家庭で、直系尊属である子や孫に早期にまとまった贈与を実施したい場合に有効な手段です。

例えば、祖父母が3,000万円の資産を所有しており、子どもに1,500万円を贈与するケースでは、暦年課税の場合だと1,500万円-110万円の合計1,390万円に贈与税がかかります。

この1,500万円を暦年課税の非課税枠でカバーしようとすると、年間の非課税限度額が110万円なので、13年以上かかる計算です。

一方で、相続時精算課税制度を選択すると、その1,500万円を非課税で一度に贈与できます。そして、贈与者が亡くなり相続が生じた場合は、残された1,500万円と贈与した1,500万円を合わせた3,000万円が相続税の対象になります。

仮に法定相続人が配偶者と子ども1人の合計2人の場合では、相続税の基礎控除額は4,200万円です。※相続税の基礎控除額は3,000万円+(600万円×法定相続人数)で計算するためそのため、3,000万円は基礎控除額内に収まるため、相続税は発生しません。 

不動産など、今後価値の向上が見込まれる財産を所有している場合

相続時精算課税制度は、将来的に価値が上昇する可能性がある財産を所有している場合や、持続的な収益をもたらす財産を所有している場合に、節税の効果が期待できます。

具体的には、将来価値が上昇する可能性のある資産を対象にした場合、贈与した時点の価値で相続税が計算されるため、贈与後に価値が上昇してもその上昇分に対する税金負担を回避できます。

また、賃貸不動産のような定期的な収益を生む資産についても、この制度の選択は有利です。賃貸不動産を生前に贈与すれば、その賃貸からの収益は贈与を受けた人の所得となります。これに対して、相続により賃貸不動産を継承した場合、賃料収入は全額相続財産として計算され、高額な相続税が課税される可能性があります。

専門家に相談の上で実施しましょう

以上、相続時精算課税制度を改正後の変更点も交えて解説してきました。相続時精算課税制度は、贈与税の申告と並行して相続時精算課税選択届出書を提出することで、合計で2,500万円までの贈与が非課税となる制度です。

改正により、年間110万円までの贈与は基礎控除の対象となるため、期間を問わずに生前贈与が行えるという新たなメリットも加わりました。ただし、小規模宅地等の特例が使えなくなることや、直接節税になるわけではなく、税金の先延ばしであることに注意してください。

相続時精算課税制度は今回の改正により利用しやすくなったとはいえ、複雑な制度です。利用する際は、税理士などの専門家に相談の上で実施することをお勧めします。

相続に不動産を活用する手法については
「相続対策を不動産で行う」という記事で詳しく紹介しております。
合わせてごらんください。

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この記事を書いた人

辻本剛士

ライター

辻本剛士(つじもと つよし)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員二種
独立型FPとして相談業務、執筆業務を中心に活動中。

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