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相続

銀行の相続手続きにかかる日数は?手続きの流れを紹介

銀行の相続手続きにかかる日数は?手続きの流れを紹介

親が高齢になると、そろそろ知っておきたいのが銀行での相続手続きについてです。「なかなか手続きが終わらなかった」という声を聞くこともありますが、実際はどれくらいの日数がかかるのでしょうか。本記事では、銀行の相続手続きにかかる日数や必要書類について、元銀行員の筆者が解説していきます。

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1.銀行の相続手続きにかかる日数の目安は1ヶ月

知人や友人から「親が亡くなったあとの相続手続きが大変だった」という話を聞いたことがないでしょうか。相続手続きは役所や年金、保険会社、不動産などそれぞれの場所で手続きを行わなければなりません。

その中で、銀行の相続手続きにかかる日数は1ヶ月ほどが目安だといわれています。日数は取引内容や遺言の有無などによって異なりますが、さらに長い時間を要することも珍しくありません。

ただし、最近では相続手続きの簡素化が行われており、取引内容によっては1ヶ月以内に相続手続きが完了するケースもあります。中には、近隣の金融機関同士で相続手続きの共通化を行う地域もあり、よりスムーズに相続手続きを進めることも可能です。

2.銀行の相続手続きの流れ

いざ親の相続が発生したときに、「まずどんな手続きをすればいいのだろう」と慌てることのないように、あらかじめ手続きの流れを確認しておくことが大切です。ここでは、銀行での相続手続きの基本的な流れを確認していきましょう。

STEP1.相続発生の申し出

まずは、利用している銀行に相続発生の届け出を行います。届け出は窓口へ来店して行うことが一般的ですが、銀行によっては専用のフリーダイヤルやWebフォームを設けているところもあります。

また、届け出を行うときに注意したいのが、「口座の凍結」についてです。相続発生の届け出を行うと口座が凍結され、その口座から入出金ができなくなります。現金の引き出しだけでなく口座振替もできなくなるため、通帳を見て「どんな引き落としが行われているか」、「ストップすると困る引き落としはないか」ということをチェックしましょう。

もし公共料金や家賃などの引き落としがある場合は、事前に引き落とし口座の変更手続きを行っておくと安心です。

なお、口座の凍結は次のようなタイミングでも行われます。

・新聞のお悔やみ欄に掲載されたとき
・銀行の担当者が葬儀に参列したとき

この場合は、親族が相続発生の旨を届け出る前に凍結手続きが行われるため注意が必要です。

STEP2.必要書類の準備

次に、銀行へ提出する必要書類の準備を行います。銀行の相続手続きでは、一般的に次の書類の提出が求められます。

・被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本
・被相続人の戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡まで)
・相続人全員の戸籍謄本または全部事項証明書
・相続人全員の印鑑証明書

遺言や遺産分割協議書がある場合は、上記書類と併せて提出をしましょう。

なお、戸籍謄本を取得する中で、「本籍地が遠くて役所に出向けない」といったケースもあります。多くの市町村では郵送での手続きに対応していますので、くわしくは本籍地のある自治体へたずねてみましょう。

また、「預金額が少ない」、「ローンや金融商品など預金以外の取引がない」といった一定の条件に当てはまる場合は、上記の必要書類よりも少なくて済むことがあります。この条件については銀行によって異なりますので、くわしくは利用している銀行へ確認してみてください。

STEP3.口座解約手続き

必要書類の提出後、口座の解約手続きを行います。解約した預金については、相続人の代表者の口座へまとめて振り込まれますので、誰が代表して受け取るか話し合っておくとよいでしょう。

また、口座解約ではなく、名義変更によって相続人が引き続き同じ口座を使用することも可能です。金融商品や貸金庫など、「解約せずにそのまま引き継ぎたい」という場合は、名義変更を希望する旨を申し出ましょう。

3.急ぎの場合は「払い戻し制度」が利用できる

相続手続きが完了する前に、「遺された家族の当面の生活費が必要」、「入院費用や葬式代を支払いたい」など親の口座から引き出しが必要となるケースもあります。その場合は「払戻し制度」の利用が便利です。ここからは、相続預金の払い戻し制度について紹介していきましょう。

3-1.払戻し制度で引き出せる金額

払戻し制度とは2018年より新設された制度で、相続手続きが終わる前に一部預金の引き出しが認められるものです。払い戻しができる金額は下記の通りに定められています。

【単独で払戻しができる額】

相続開始時の預金額 × 1/3 × 払い戻しを行う相続人の法定相続分

仮に、相続人が子供3人で相続する預金が800万円だった場合、引き出せる金額は次の通りです。

800万円 × 1/3 × 1/3 = 72万円

なお、1つの金融機関から引き出しができるのは150万円までとなっています。

3-2.払戻し制度の必要書類

払戻し制度を利用する際は、次の書類の提出が求められます。

・被相続人(亡くなられた方)の除籍謄本
・被相続人の戸籍謄本または全部事項証明書(出生から死亡まで)
・払戻し制度を利用する人の印鑑証明書

また、払戻し制度を利用する際は、後々他の相続人間でトラブルにならないように注意が必要です。払戻しを行う前に、あらかじめ「どれくらいの金額を引き出すか」、「引き出したお金は何に使うか」といったことを、相続人全員で確認しておきましょう。

4.相続が発生する前に確認しておきたいこと

より相続手続きをスムーズに進めるためには、相続が発生する前からしっかりと家族間で話し合いを行っておくことが大切です。

特に、次の5つは必ず確認しておきたいポイントです。

・利用している金融機関
・所有している不動産
・相続に関する意向
・遺言の有無
・相続税発生の見込み

それぞれくわしく解説していきましょう。

確認ポイント①利用している金融機関

利用している金融機関については、必ず確認しておきたいポイントです。

最近では通帳を発行しない金融機関が増えていますので、相続人が取引があることに気が付かないケースもあります。相続手続きは銀行ごとに行う必要があるため、取引があることを知らなければ相続手続きが漏れてしまう要因にもなります。

スムーズに相続手続きを進めるためには、あらかじめ利用している金融機関と取引内容を家族で共有しておきましょう。

また、利用頻度が少ない金融機関がある場合は、早めに解約手続きをお願いしておくのもおすすめです。

確認ポイント②所有している不動産

「親が亡くなってから初めて不動産を持っていることを知った」というケースも多くあります。不動産の相続は手続きに手間がかかるだけでなく、その後の管理にも手間がかかります。

「どのような不動産を所有しているのか」、「どのように管理しているのか」といったことは必ず生前に確認しておきましょう。

また、不動産は現金のように分割しづらいことから、相続人間で揉める原因にもなり得ます。誰がどのように相続するかについても事前に話し合っておくと安心です。

「誰も不動産を相続する意思がない」という場合は、相続発生前に売却することを検討してもよいでしょう。

確認ポイント③遺言の有無

遺言を作成していても、亡くなった後に家族が遺言の存在に気付かないケースがあります。「遺産を分割した後に遺言が見つかった」ということにならないように、あらかじめ遺言の有無を確認しておくことが大切です。

また、「遺言の作成方法」も気を付けたい点です。遺言は公正証書もしくは自筆遺言で作る2つの方法がありますが、自筆遺言は遺言としての要件を満たさないこともあります。

自筆遺言で作る場合は、「要件を満たしているか」、「保管方法はどうするか」ということを家族間で確認し合いましょう。

また、公正証書については原本が公証役場で保管されるものの、その事実を家族が知らなければ遺言の存在に気が付かない可能性もあります。公正証書で作成する場合は、「写しをどこに保管しているのか」ということを確認しておくと安心です。

確認ポイント④相続に関する意向

遺言を作成しない場合は、相続に関する意向も確認しておきたいポイントです。

相続に関するトラブルは年々増加傾向にあり、決して他人事とはいえません。「資産をどのように分けて相続させたいのか」という意向を聞いていれば、亡くなったあとに相続人間での話し合いが難航するリスクも避けられます。

より確実にトラブルを回避するためには、遺言の作成をお願いしておくのもひとつの方法です。

確認ポイント⑤相続税発生の見込み

相続税は税率が高いことから、きちんと生前から家族間で対策に取り組むことが大切です。「うちは相続税がかからない」と思う人も多いですが、不動産など現金以外の資産を合計すると「相続税の基礎控除を超えてしまった」ということも珍しくありません。

相続税がかかるかどうかを考える際は、現預金だけでなく不動産や金融商品なども含めて資産を算出するようにしましょう。

なお、相続税の控除額は下記の通りです。

3,000万円+(600万円×法定相続人数) = 相続税の基礎控除額

たとえば、相続人が妻1人、子供2人の場合は4,800万円までが非課税となります。もし相続税が発生しそうな場合は、生前贈与を行うなど対策を取ることを検討しましょう。

5.定期的に相続について話し合う場を設けよう

銀行での相続手続きは必要書類も多く、1ヶ月ほどの日数がかかることが一般的です。よりスムーズに相続手続きを進めるためには、生前から家族間で相続に関する話し合いをしておくことが大切です。

特に、利用している金融機関や遺言の有無、相続に関する意向をしっかりと確認しておくことで、相続手続きに関するトラブルを回避できるようになります。お盆やお正月など家族が集まるタイミングでは、ぜひ相続に関する話し合いの場を設けるようにしてみましょう。

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この記事を書いた人

椿 慧理

ライター

椿 慧理(つばき えり)

銀行を10年間勤務し経験を通じて得た金融知識を活かし、金融ライターとして独立。
金融商品やマーケットの解説、税制解説など初心者にも分かりやすい記事を手掛ける。
自らも12年の投資経験を持ち、国内外株式、投資信託、暗号資産を運用中。

保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、内部管理責任者

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