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不動産
相続税と不動産 相続時に起こる事
不動産投資では借り入れを起こして不動産を購入するケースが殆どであるかと思います。
ローンを組んで不動産を購入する事にはどのようなメリットがあるのでしょうか?
そこで今回は、借金で不動産を購入すると相続時にどうなるのか?節税効果に期待はできるのか?について、詳しく解説します。
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目次
相続時の不動産はどういう扱いなのか?
借り入れを起こして不動産を購入している場合の相続では資産としての不動産と負債としてのローンを両方とも相続財産とみなします。
まずは、借金で不動産を購入した場合で相続が発生すると残債や不動産はどのように扱うのかについて解説します。
「負債」もすべて相続の対象になり得る
借金で不動産を購入し、残債があるまま主債務者が死亡した場合、遺族となる相続人が不動産、借金(残債務)のすべてを相続します。
相続財産は民法によって規定されており、資産(プラスの財産)のみならず被相続人が残した借金(マイナスの財産)もすべて相続すると規定されています。そのため、故人が所有者となっている不動産と、不動産を購入するためのローン残債務はすべて相続人が相続します。
原則法定相続分に従って相続を行う
不動産や残っている借金は、原則、法定相続分に従って相続が行われます。
【注意】 被相続人(死亡した人)が遺言を残している場合や、相続人全員で話し合いを行い、全員が納得をした場合(遺産分割協議)は法定相続分に従う必要はありません。 |
法定相続に従った場合の相続人と法定相続分は以下のとおりです。
順位 |
相続人 |
法定相続分 |
他に相続人がいない場合 |
配偶者 |
全額 |
第1順位 |
配偶者・子 |
それぞれ1/2ずつ |
第2順位 |
配偶者・直系尊属(父母・祖父母など) |
配偶者2/3 |
第3順位 |
配偶者・兄弟姉妹 |
配偶者3/4 |
死亡した人(被相続人)の配偶者は無条件で法定相続人になります。その他は上位のものから法定相続人になります。
たとえば、夫婦・子1人の世帯で不動産の所有者、主債務者が夫だった場合で、夫が死亡して相続が発生としましょう。このケースだと、妻と子がそれぞれ不動産の所有権を1/2ずつ相続します。また、ローンの残債もそれぞれが1/2ずつ相続します。
なお、子が未成年者であってもプラスの財産・マイナスの財産関係なく相続するため注意してください。
限定承認・相続放棄で負債の返済義務を一部しか負わない
借金が残っている不動産を相続した場合、限定承認や相続放棄によって返済義務を免れる可能性があります。
【限定承認とは】 限定承認とは、プラスの財産の範囲内でのみマイナスの財産の返済義務を負う相続方法です。 |
【相続放棄とは】 相続放棄とは、プラスの財産・マイナスの財産、一切の財産を相続しない(放棄する)方法です。 |
たとえば、不動産を含む相続財産が3,000万円だった場合、この範囲内でのみマイナス財産の責任を負うというのが限定承認です。つまり、相続財産が3,000万円あり、借金が5,000万円ある場合は、3,000万円のみ返済すれば良いです。
限定承認をすることによって、不動産を残したまま借金を大幅に圧縮できる可能性があります。
ただし、マイナスの財産を返済するだけのお金がなければ限定承認はできません。たとえば、3,000万円の価値がある不動産があった場合は、3,000万円分の借金返済義務を負います。ところが、不動産はその物自体に価値があるため、3,000万円相当の現金を別で用意できなければいけません。
もし、返済義務のある3,000万円相当の返済金を用意できなければ、当該不動産を売却することも検討しなければいけなくなるでしょう。
また、不動産も借金もすべての財産の相続を放棄することもできます。これを「相続放棄」と言います。相続放棄をした場合は、当該不動産を相続できません。ただ、被相続人が残したローンの返済義務も負いません。
不動産を借金で購入した場合の節税効果?
不動産を借金で購入した場合、相続税の節税効果に期待ができるケースとできないケースがあります。
不動産は人が生活をするための拠点となるため、被相続人と相続人の関係性次第では特例を利用できる可能性があります。特例を利用した場合は、相続税評価額を引き下げられるため、大きな節税効果に期待ができるでしょう。
仮に、特例を利用できなかった場合は、基本的にはあまり節税効果には期待ができません。次に、不動産を借金で購入した場合の相続税の節税効果について詳しく解説します。
節税効果は物件による
「不動産を借金で購入した場合は相続発生時に節税効果に期待ができるのか?」これは購入した物件によるという回答が一般的です。借金をして不動産を購入することで負債が増える一方で、不動産という財産が増えるため、不動産の相続税評価額と物件購入価格に差がある場合は節税が期待できると考えて良いでしょう。
通常、相続税は相続したプラスの財産からマイナスの財産や各種控除を引いた結果、プラスの財産が残る場合に課税されます。そのため、たとえば5,000万円の借金をして相続税評価額が仮に5,000万円となれば、節税効果はありません。
しかし、都市部のマンションなどは借入金(負債)に対して相続税評価額が著しく低いことが多いため、節税効果を期待できます。
住宅ローン(借金)は特例によって節税効果に期待できる可能性がある
住宅ローンを組んで不動産を購入していた場合、小規模宅地の特例によって節税効果に期待できる可能性があります。
【小規模宅地の特例とは?】 小規模宅地の特例とは、被相続人(亡くなった人)が自宅として使っていた土地に対して使うことができる特例であり、最大で不動産評価額を80%減らせます。 |
小規模宅地の特例を利用することによって、相続税評価額を最大で80%減らせます。その結果、大きな節税効果に期待ができるでしょう。
たとえば、5,000万円の負債が残っている不動産であり、相続税評価額が同額の5,000万円だった場合は節税効果に期待ができません。しかし、小規模宅地の特例を利用することによって、80%減らせるため、相続税評価額は1,000万円となります。
相続税はプラスの財産からマイナスの財産や各種控除を差し引いて計算をするため、上記のケースでみると【1,000万円(相続税評価額)−5,000万円(負債)=−4,000万円】となるため、他に相続財産がなければ相続税は発生しません。
仮に他に財産があったとしても、4,000万円を超えなければ相続税は発生しないため、節税効果に期待ができます。
【注意】 小規模宅地の特例は、細かな要件を満たしている必要があります。全ての相続人が対象になるわけではない点に注意してください。 |
不動産を借金で購入して相続が発生した場合の注意点
不動産を借金で購入して相続が発生した場合は、以下のことに注意が必要です。
- 相続税は現金納付が原則
- 不動産相続時の特例には要件がある
- 限定承認・相続放棄を行う際は時期に注意
相続税は「現金納付」が原則
被相続人の死亡によって財産を相続した場合は、かならず相続税を納税しなければいけません。相続税の納税方法は、原則、現金納付のみであるため、不動産を相続した場合は注意が必要です。
物(不動産)のみを相続した場合であっても、納税は現金のみであるため、相続税を自分で用意する必要があります。
たとえば、不動産の相続税評価額が3,000万円であるのに対し、ローン残高が1,000万円だった場合、差額である2,000万円に対して相続税が課税されます。仮に物(不動産)のみの相続だった場合は、2,000万円に対する相続税納税分(現金)を自分で用意しなければいけません。
不動産は高額な資産であることが多いため、相続税も高額になりがちです。そのため、不動産が相続財産になっている場合は、借金の有無に関わらず現金、あるいは換金性のある資産も残しておいたほうが良いでしょう。
なお、納税資金を用意するために生命保険に加入しておくのもおすすめです。被保険者が死亡すると、まとまった現金が支払われるため、納税用資金として有効です。
不動産相続時の特例を使うためには要件がある
不動産を相続した場合「小規模宅地等の特例」を利用でき、不動産の相続税評価額を最大で80%引き下げられます。ただ、この特例を利用するためには、要件がある点に注意が必要です。全ての人が対象になるわけではありません。
利用要件の詳細は国税庁「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」に記載されています。不動産を相続させる場合は注意してください。
限定承認・相続放棄の時期に注意
借金のある不動産を相続する場合、負債総額や相続税評価額次第では、限定承認や相続放棄を検討する可能性があります。しかし、限定承認や相続放棄を行う際は、相続が発生したことを知ったときから3か月以内に家庭裁判所に申し立てを行わなければいけません。
万が一、期限内に申述しなかった場合は、単純承認したものとしてみなされます。単純承認とは、プラスの財産・マイナスの財産一切の財産を相続することを言います。
また、「相続が発生したことを知ったとき」とは、通常は被相続人が死亡した日のことです。ただ、被相続人と疎遠で死亡したことを知らなかったときなどは、知ったときから起算して3か月以内に申述しなければいけません。
被相続人が死亡した直後は、さまざまな手続きで忙しくなることが予想されますが、「3か月以内」に結論を出して早めの手続きを行ってください。
まとめ
今回は、不動産を借金で購入した場合で相続が発生するとどうなるのか?について解説しました。相続発生時は、プラスの財産のみならずマイナスの財産も相続します。そのため、借金がある不動産を相続した場合は、借金と不動産を相続することになります。
被相続人が借金を背負いたくない場合は、相続放棄や限定承認といった手続きを相続があったことを知ったときから3か月以内に行えば良いです。相続放棄や限定承認を行うことにより、不動産の借金の返済義務を一部もしくはすべて免除されます。
また、今回は節税効果についても解説しました。
不動産の相続時は、小規模宅地の特例を利用できる可能性があり、相続税評価額を大幅に抑えられる可能性があります。その結果、節税効果に期待ができるでしょう。
都心部の不動産は借入金に対して不動産評価額が極端に低いケースも多く、節税効果が大きくなり得ます。
実際の節税効果は、個別事案ごとに判断されるため、すべての不動産に対して当てはまるわけではありません。そのため、相続時の節税を目的として不動産を購入する場合は、計画性を持ってしっかり検討したほうが良いでしょう。
この記事をきっかけに金融リテラシーを高め、より良い手段の参考にしていただければ幸いです。
相続税対策に関する詳しい解説は下記の記事もご確認ください。
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この記事を書いた人
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ウルトラ金融大全編集部(うるきんへんしゅうぶ)
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