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個人事業主は年金が少ない?会社員との年金制度の違いを解説

個人事業主は年金が少ない?会社員との年金制度の違いを解説

個人事業主と会社員では年金の分類が異なる

個人事業主と会社員とでは加入する年金が異なります。ここでは個人事業主と会社員の年金制度について解説していきます。

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個人事業主は国民年金に加入

個人事業主の加入する年金は国民年金(第1号被保険者)になります。

国民年金とは20歳以上60歳未満のすべての方が加入する年金保険です。したがって、20歳になれば学生の場合でも国民年金に加入して保険料を支払わなければなりません。
国民年金の保険料は、月額16,590円で年間約20万円を納めることになります。

国民年金は40年間納付すると満額受け取れるようになり、2022年では年間77万7,800円が満額になります。月額では約65,000円です。

個人事業主は国民年金だけで毎月65,000円を年金として受給できますが、65,000円で生活していくにはかなり厳しいと感じる人もいるかもしれません。

出典:日本年金機構 国民年金保険料
https://www.nenkin.go.jp/service/kokunen/hokenryo/hokenryo.html

会社員は厚生年金に加入

会社員は厚生年金(第2号被保険者)に加入することになります。厚生年金は、会社員や公務員などが加入する年金制度です。個人事業主などが加入する国民年金が1階部分にあたり、厚生年金は2階部分にあたります。

つまり、会社員などの厚生年金加入者は国民年金(老齢基礎年金)に上乗せして、さらに厚生年金(老齢厚生年金)を受け取れるのです。

厚生年金の保険料は年収に応じて異なります。また、保険料は勤務先と加入者が折半で負担し、毎月の給料から天引きされる仕組みです。厚生労働省が発表した令和2年度の「厚生年金保険・国民年金事業の概況」によると、年金の支給額の平均は14万6,145円です。個人事業主の加入している国民年金の月額約6万5,000円と比較して大きな差があることがわかります。

出典:厚生労働省 令和2年度厚生年金保険・国民年金事業の概況
https://www.mhlw.go.jp/content/000925808.pdf

遺族年金にも大きな差がある

国民年金と厚生年金では、将来の年金受給額で大きな差があることが分かりましたが、遺族年金にも同様のことが言えます。

遺族年金は、国民年金または厚生年金の被保険者(被保険者であった人)が亡くなったときに、被保険者の配偶者や子など、被保険者によって生計を維持されていた遺族に支給される年金のことです。個人事業主は「遺族基礎年金」を受給し、会社員の人は「遺族厚生年金」を受給します。

ここからは、遺族年金の受給額や受給できる要件などの違いについて解説していきます。

国民年金加入者は遺族基礎年金

個人事業主が加入している国民年金の場合は、万が一のことがあった場合に「遺族基礎年金」が支給されますが、支給には次の要件があります。

【遺族基礎年金の受給要件】
(1)国民年金の被保険者であること
(2)国民年金の被保険者であった60歳以上65歳未満で、日本国内に住所を有していた人
(3)老齢基礎年金の受給権者
(4)老齢基礎年金の受給資格を満たした人
※(1)と(2)には保険料納付要件というものがあり、保険料の未納などが一定の範囲内であることが必要。
※(3)と(4)については、保険料納付済み期間、保険料免除期間、合算対象期間を合計した期間が25年以上あること要件です。

【遺族基礎年金の対象者】

「遺族基礎年金」は子のいる配偶者または子が受け取ることができる年金で、「子ども年金」とも呼ばれています。子どもがいない場合は受給できない制度です。
子どもとは次の者に限ります。
・18歳到達年度の末日(3月31日)を経過していない子
・20歳未満で障害年金の障害等級1級または2級の子
また、前述したように被保険者によって生計を維持されていた子になるので、未婚であることが条件となります。

【遺族基礎年金の受給額】

遺族基礎年金の受給額は、子の人数によって異なります。
2023年度の遺族基礎年金の受給額は、一律で77万7,800円。これに子ども1人増えるごとに遺族年金が加算されていきます。
《「子どもがいる妻が遺族の場合」の遺族基礎年金額》

  • 基本額 77万7,800円
  • 子ども1人目 22万3,800円
  • 子ども2人目 22万3,800円
  • 子ども3人目以降 74,600円

例えば、夫が亡くなり18歳未満の子どもがいる妻の場合は、基本額77万7,800円に子ども1人目22万3,800円、子ども2人目22万3,800円で合計122万5,400円を受給できます。

出典:日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html#cms03

厚生年金加入者は遺族厚生年金

遺族基礎年金は子どものいる遺族が受給対象でしたが、会社員や公務員などが該当する「遺族厚生年金」は、亡くなった人が受給要件を満たしていれば、子どもがいなくても支給されます。

【遺族厚生年金の支給要件】
遺族厚生年金を受給するには、亡くなった人が次の5つのうちいずれかを満たしている必要があります。
(1)亡くなった日に厚生年金に加入していること
(2)厚生年金に加入していた間に初診日のあるケガや病気で初診日から5年以内に亡くなった人
(3)障害厚生年金の障害等級1・2級の受給者
(4)老齢厚生年金の受給権者
(5)老齢厚生年金の受給資格期間を満たして亡くなった人

【遺族厚生年金の受給額の計算】

遺族厚生年金の受給額の計算は、年度や加入期間で式が異なるため、平成15年4月以降の加入月数で解説していきます。
遺族厚生年金の計算は2通りあります。
加入月数が300ヶ月未満の場合

1、平均標準報酬額×5.481/1000×300/全被保険者月数×4分の3
加入月数が300ヶ月以上の場合

2、平均標準報酬額×5.481/1000×加入月数×4分の3
日本年金機構 遺族厚生年金(受給要件・対象者・年金額)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150424.html#cms03

モデルケースでシミュレーション

ここからはモデルケースを交えて個人事業主と会社員の将来受け取れる年金受給額と、加入者が万が一の時に受け取れる遺族年金受給額を見ていきます。

【将来の年金受給額】

次の条件でシミュレーションします。
・個人事業主 Aさん50歳 妻50歳 専業主婦 息子20歳
・会社員Bさん50歳 妻50歳専業主婦 息子20歳
Bさんの平均標準報酬額は50万円
・個人事業主Aさんも会社員Bさんも40年間年金に加入。
では個人事業主Aさんの家庭から見ていきます。
個人事業主Aさんは老齢基礎年金(国民年金)で年間77万7,800円
Aさんの妻も国民年金で年間77万7,800円
合計で年間155万5,600円月額では約13万円
続いて会社員Bさんの場合は次の通りです。
会社員Bさんは厚生年金の加入により、1階部分にあたる老齢基礎年金(国民年金)で年間77万7,800円
2階部分にあたる老齢厚生年金(厚生年金)は50万円(平均標準報酬額)×5.481/1000×480ヶ月=年間約131万5,000円(小数点以下四捨五入)

会社員Bさんの妻は老齢基礎(国民年金)で年間77万7,800円
合計で年間約287万円。月額では約24万円
AさんとBさんでは月に11万円も年金受給額に差があることが分かります。

【遺族年金の受給額】

次の条件でシミュレーションします。
・個人事業主 Aさん50歳 妻50歳 専業主婦 息子20歳(障害年金の該当なし)
・会社員Bさん50歳 妻50歳専業主婦 息子20歳(障害年金の該当なし)
Bさんの平均標準報酬額は50万円
・個人事業主Aさんも個人事業主Bさんも50歳時に亡くなる。
・会社員Bさんは27年間(324ヶ月)厚生年金に加入。

では個人事業主Aさんから見ていきます。
Aさんは50歳時に亡くなった時点で息子は18歳以上のため、遺族基礎年金の対象外。
よって遺族基礎年金は0円
※ただし一定の要件を満たしている場合は寡婦年金や死亡一時金が受給できます。

続いて会社員Bさんの場合
50万円(平均標準報酬額)×5.481/1000×324ヶ月×4分の3=約66万6,000円
合計で年間約66万6,000円
※さらに一定の要件を満たせば、中高齢寡婦加算として40歳から65歳までの期間、毎年58万3,400円受給できます。

このように、遺族基礎年金では18歳未満の子どもがいない場合だと受給ができず、残された遺族の負担軽減ができない制度です。
一方で、遺族厚生年金は要件を満たせば、子どもがいなくても受給できて、残された遺族の負担軽減が図れるので、手厚い保障があると言えるでしょう。

出典:日本年金機構 死亡一時金
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/sonota-kyufu/1go-dokuji/20140422-01.html

日本年金機構 寡婦年金

https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/sonota-kyufu/1go-dokuji/20140422-02.html

日本年金機構 た行 中高齢寡婦加算

https://www.nenkin.go.jp/service/yougo/tagyo/chukoreikafu.html

国民年金以外にも年金を増やす方法

個人事業主は会社員に比べて、将来の年金額や遺族年金について保障が少ないことが分かりました。しかし、個人事業主でも対策を取れば、年金を増やすことはできます。ここからは、個人事業主でも年金を増やせられる方法を解説していきます。

繰り下げ受給

「繰り下げ受給」は年金の受け取りを65歳よりあとに開始することです。「繰り下げ受給」をすれば、通常より年金の受給時期が遅くなってしまいますが、そのぶん受給額は増えます。
繰り上げ受給は「75歳」まで延ばせられ、増額率はこれまでと変わらず1ヶ月当たり0.7%、増額割合は「最大84%」になります。

仮に、老齢基礎年金額77万7,800円で75歳まで繰り下げした場合は84%増額するので、約143万1,000円まで年金受給額が増えます。もし65歳以降も働く予定の場合は、繰り下げ受給を検討してみても良いかもしれません。

ただし、繰り下げ受給には注意点もあり、「繰り下げ中」もしくは「繰り下げ期間終了後」、受給を開始してすぐに亡くなってしまうと、年金をほとんど受け取れずに「繰り上げ損」をしてしまうことがあります。

出典:日本年金機構 年金の繰下げ受給
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/kuriage-kurisage/20140421-02.html

確定拠出年金(iDeCo)

「確定拠出年金(以下、iDeCo)」とは公的年金にプラスして給付が受けられる年金制度です。20歳以上65歳未満で、公的年金の被保険者の方が加入でき、掛金は全額所得控除の対象となります。

65歳以降に一時金や年金で受け取る際も、「退職所得控除」や「公的年金控除」といった税金優遇制度を利用すれば、大きな節税効果が期待できます。

出典:iDeCo公式サイト iDeCoの特徴
https://www.ideco-koushiki.jp/guide/

小規模事業共済

小規模企業共済とは、中小企業の経営者や個人事業主などの積立による退職金制度で、月額1,000円から7万円まで、500円単位で自由に掛け金を決めて積み立てていきます。小規模企業共済のメリットは次の通りです。
・掛け金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除になる
・共済金を受ける際も節税効果がある
小規模企業共済は掛け金の全額が「小規模企業共済等掛金控除」として所得控除になるので節税効果が高くなります。

共済金を受ける際も、「一括受取」と「分割受取」のどちらかを選択し、「一括受取」の場合は「退職所得控除」、分割の場合は「公的年金等控除」で節税できます。
ただし、掛け金の納付月数が240ヶ月未満で解約した場合、解約手当金が掛け金合計額を下回る点(元本割れ)には注意が必要です。

出典:中小機構 小規模企業共済
https://www.smrj.go.jp/kyosai/skyosai/

個人年金保険

個人年金保険は、毎月一定額の保険料を払い込んで、将来の年金原資をつくる保険商品です。
一定年齢になると年金として受け取れるので、個人年金保険は公的年金の上乗せとして活用されています。

個人年金保険のメリットは次の通りです。

  • 自動的に老後資金を積み立てられる
  • 生命保険料控除で最大4万円の所得控除になる

個人年金保険は毎月一定額を自動的に積立てできるので、貯蓄が苦手な人も計画的に老後資金を準備できます。
また、個人年金保険は生命保険料控除の対象で、最大4万円が所得控除になり所得税や住民税の節税ができます。
ただし、個人年金保険は途中で解約した場合、解約返戻金が戻ってきますが、支払った保険料よりも少なくなる(いわゆる元本割れ)のが一般的なので注意が必要です。

確定拠出年金(iDeCo)を利用した場合のシミュレーション

前述の個人事業主AさんがiDeCoを利用した場合の年金受給額のシミュレーションをしてみましょう。
次の条件でシミュレーションします。
・個人事業主 Aさん50歳 妻50歳 専業主婦 息子20歳
・個人事業主Aさんは老齢基礎(国民年金)で年間77万7,800円
Aさんの妻も国民年金で年間77万7,800円
合計で年間155万5,600円。月額では約13万円

さらにiDeCoを利用した場合
・掛け金 毎月2万円
・運用期間 30歳から65歳までの35年間
・年利(リターン) 5%

最終資産は約2,226万5,000円となり、これを一括で受け取り、65歳から100歳まで取り崩した場合は年間約63万6000円を年金として使うことができます。
年間155万5,600円と約63万6,000円を合わせて218万6,000円まで年金額が増えます。
iDeCoで毎月2万円を積み立てるだけでも、ここまで年金を増やすことができるのです。

個人事業主は老後の対策は必須です

このように個人事業主は会社員より将来受給できる年金額が少ないのと、万が一の際にも遺族への保障が少ないことを解説してきました。
しかし、個人事業主でも年金の「繰り下げ受給」や「小規模企業共済」「iDeCo」「個人年金保険」などを利用しながら計画的に老後資金の準備をしていけば、会社員が加入している厚生年金と遜色ない年金を受け取れます。

また、個人事業主は会社員よりも比較的収入が安定していないのも事実なので、大きく稼げたときほど老後資金に多く回すような工夫も必要になるでしょう。

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この記事を書いた人

辻本剛士

ライター

辻本剛士(つじもと つよし)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員二種
独立型FPとして相談業務、執筆業務を中心に活動中。

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