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なぜ円安が進行している!? 円安のしくみと今後の為替について解説
2023年10月3日のニューヨーク市場の為替相場で円安・ドル高が進み、一時1ドル150円台に乗せました。2022年のはじめは1ドル115円程度でしたが、大きく円安が進行しています。この円安についてニュースでよく見かけることも多いと思いますが、いったいなぜここまで円安が進んでいるのかよくわからない人もいるのではないでしょうか。
本記事では、円安の基本的な概要に、円安が日常生活に与える影響を解説します。円安が進行することで家計の負担が増えてしまう可能性もあるため、この記事を最後まで読んできちんと理解しておきましょう。
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目次
そもそも円安とは?
「円安」とは、外貨に対して円の価値が下がっている状態のことです。
例えば、為替相場が1ドル100円の場合、1ドルで売られているパンを100円で購入できます。しかし、為替相場が1ドル150円まで進んでしまうと、パンの価格は実質1.5倍に跳ね上がり100円では購入できなくなります。
つまり、円に対するドルの価値が高まり、その逆にドルに対する円の価値が低下したことを意味します。この現象を「円安(またはドル高)」と表現します。
以下で「円安、円高」の動きを簡単に確認しておきましょう。
1ドル100円→1ドル110円:円安
1ドル100円→1ドル90円:円高
円安になる主な原因は?
上記で円安の概要について説明しました。では、いったいどのような仕組みで円安が進行してしまうのでしょうか。ここからは、円安になる主な原因についてみていきます。
マネーストックの差
為替とは2国間のお金の総量差とする考え方があります。
例えばドル、円ではドルの総量と円の総量差がもたらす割合の変動に応じるとする考え方です。
ドルの総量が減り、円の総量が増えた場合円安となり、逆が起これば円高に動きます。
日本では金融緩和を継続して円の総量を増やし続けているため円安が続いているとする考え方になります。
それぞれの国が自国通貨を供給するかどうかは金融政策で決まります。
日本の場合は景気対策としてお金の供給を続けているため円が安くなり続けています。
景気が良くなれば、金融緩和を止めそれに伴ってマネーストックが引き締められる事で為替バランスが戻ると考えられます。
日本の円は殆どの海外通貨に対して安い状況が続いていますが、それも日本のマネーストックが増え続けている事に起因します。
金利差
円安になる最大の原因は、円と対象通貨の金利差によるものです。ドル/円でみた場合、日本の長期金利は0%に近い状況で推移し、現在も金融緩和を継続しています。一方のアメリカは、インフレや金融市場の加熱を抑えるべく金利の引き上げを積極的に実施しています。
この金利差の影響で、金利の高いドルが買われてドル高に、金利の低い円が売られて円安になっているのです。
例えば、ドルの金利が4%、円の金利が0%の場合でみてみます。1万円分のドルを保有していれば、4%にあたる400円の利息をもらえるのに対し、円の場合は金利が0%のため利息はほとんど発生しません。この場合、投資家は金利の高いドルを保有する意識が強まるわけです。
経済成長率
他国の経済成長率も、円安が進行する1つの要因です。他国の経済成長が日本よりも高まると、その国の通貨が購入され、円が売られる傾向になります。
例えば、アメリカの経済が活発で、経済成長率が高くなると、多くの投資家や企業がアメリカ市場に投資することを検討します。それに伴い、アメリカドルの需要が高まる仕組みです。
対照的に、日本の経済成長が停滞している場合や他国と比べて低い場合、投資家はより利益の見込める市場を求めて、日本からの資金移動をおこなう意識が強まります。これにより、円が売られ、アメリカドルなどの通貨が購入される動きになるのです。
現在の円安進行の原因
では、現在の日本がここまで円安傾向となっている原因は何なのでしょうか。主な原因は「金利の差」と「日本の金融緩和継続」が影響していると考えられます。
7月に入り、日銀は政策金利の修正を決めました。長期金利の変動幅を0.5~1%まで容認する決定です。本来であれば日本の金利がこれから上昇していく見込みのため、円高に進むのがセオリーです。しかし、実際には現在も円安局面が継続しています。
その理由として、市場は「日銀が今後も金融緩和を継続していく」と受け取ったからです。実際に日銀は、7月31日に長期金利が0.6%程度まで上昇したのをみて、臨時に3,000億円分の国債を買い入れるオペ(金融市場調節)を実施しました。
この結果、大量の円が市場に供給されることとなり、円の価値はさらに下落。また、金融緩和を継続することは、金利の上昇を抑える効果があり、これが外国の投資家や投資機関にとって日本への投資の魅力を低減させる結果となったのです。
円安が日常生活に与える影響
円安状況が継続されるなか、円安が日常生活にどのような影響を与えることになるのでしょうか。以下で詳しくみていきましょう。
輸入品の価格高騰
円安が進行することで、輸入品の価格が高騰してしまいます。とくに、日本はガソリンなどのエネルギー資源を大量に輸入しているため、円安が進行するとこれらのコストが増加しやすくなります。
エネルギー価格の上昇は家計やビジネスの経費として直接的に影響を与えてしまうことになるでしょう。また、食料品や生活必需品なども海外からの輸入に頼っているため、これらの商品価格も上昇する可能性も高まります。
企業業績
前述の輸入価格の高騰に関連しており、円安のよってエネルギー資源などの価格が高騰することで企業の経費が増加します。その結果、企業の利益を圧迫してしまうことになるのです。とくに、輸入企業の場合は原材料や燃料などの輸入コストが増加するため、業績に大きく影響を与えてしまう可能性があるでしょう。
一方の輸出企業は、海外の取引先からすると日本で商品を安く仕入れられるため、大量の商品を発注することになります。その結果、企業の売上は上がり、業績が向上しやすくなります。
旅行・インバウンド
円安は、日本のインバウンドに良い影響を与えることが一般的です。円安であれば、海外旅行者は日本の商品やサービスを安く購入できるため、積極的に日本に足を運んでくれやすくなるでしょう。
海外からの観光客が増えると、観光地で事業を営んでいるお店の売上が伸び、収益が増加する可能性があります。とくに、宿泊施設や飲食店、お土産店などの観光客が頻繁に利用する業種は、大きな恩恵を受けることが期待されるでしょう。
今後の為替相場はどうなる?
今後の為替相場についてですが、当面の間は現状の1ドル150円前後で推移する可能性があるでしょう。近年の大幅なインフレによって、政策金利はどの国も積極的に引き上げられています。しかし、そのなかで日本は、金利の引き上げに消極的な態度を示しています。
なぜなら、金利を上げてしまうと企業は金融機関から資金を借りづらくなり、経済活動が抑制され、倒産が相次ぐ可能性があるからです。また、個人の場合は金利が上昇することで住宅ローンの返済負担が増え、住宅ローン破産者が増加する可能性もあります。そのような状況下で日銀は金利の引き上げを実施できず、今の円安状況を改善することは難しいでしょう。
円安から個人資産を守る方法は?
前述のとおり、円安が進行すると円の価値が下がります。そうなれば実質的に資産が目減りしてしまうため、何かしらの対応が必要になるでしょう。以下で、円安時の対応策について解説します。
外貨建て資産
円安対策として「外貨建て資産」を持つことは有効な手段です。円の価値が下がっても、ドルやユーロのような外貨の価値が上がれば資産全体の目減りを軽減できます。
外貨建て資産には、主に次のようなものがあります。
・外貨預金
・外貨建ての保険
・外国株式
・外国債券
上記の「外貨建て資産」をバランス良く保有することで、各商品に存在する固有のリスクにも備えられるでしょう。ただし、外貨建ての商品は為替リスクがあり、円高が進行した場合は元本割れを起こすリスクがある点に注意が必要です。
不動産
現物資産である不動産も円安に強い資産といわれています。通貨の価値が下落すると、その通貨で購入できる商品やサービスの量が減少します。つまり、円安になると「物価が上がる(インフレ)可能性がある」ということです。不動産のような現物資産であれば、その価値が固定されており、物価上昇に対するヘッジとしての役割を果たします。
ただし、不動産を取得するにはある程度の資金が必要となり、だれでも手軽に購入できるものではありません。その場合は「REIT」や「不動産クラウドファンディング」などの少額で取引できる商品であれば、比較的手軽に始められるでしょう。
資産の目減りを防ぐためにきちんとしたリスクヘッジを実践しよう
今回は円安が進行する原因や日常生活への影響について解説しました。当面の間は円安状況が続くと予想されますが、未来の為替が円安に動くか、それとも円高に動くかはだれにもわかりません。
個人レベルとしては、為替の変動によるリスクを理解し、適切なリスクヘッジをおこなって自身の資産が目減りしないよう努めることです。しかし、リスクヘッジをおこなうことは金融商品に触れることを意味します。そのため、いままで元本保障がない商品を取り扱ったことがない人にとっては、ハードルが高いと感じてしまうかもしれません。
その場合は、お金の専門家であるファイナンシャルプランナーなどに相談してみてはいかがでしょうか。金融資産の詳しい解説から、ポートフォリオの作成、その他にもお金に関する相談に対応してくれるでしょう。
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この記事を書いた人
ライター
辻本剛士(つじもと つよし)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員二種
独立型FPとして相談業務、執筆業務を中心に活動中。
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