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シャドーバンキング(影の銀行)と中国バブルの何故を解説
2023年8月18日、中国の信託大手、中融国際信託が運用する数十本の信託商品で支払いが滞っている問題で、顧客である投資家は規制当局に書簡を送り、介入するよう懇願しました。
ロイターのニュースで報じられているように不動産バブル崩壊で揺れる中国で金融市場でもピリついた話題が挙がってきました。
この記事ではシャドーバンキングが今どうして騒がれているのかを解説していきます。
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中国バブルとシャドーバンキング
中国バブルの崩壊とシャドーバンキングには一体どんな関係があるのでしょうか?
シャドーバンキングと聞くとなんだか影の組織や暗躍する、きな臭い金融機関なのかと邪推してしまいますが、銀行ではない金融機関の事を指します。日本でいう「ノンバンク」の事です。
ノンバンクとは預かり金業務を行わない金融機関の事です。
預金を預ける事が出来るのが銀行で、その預かり金業務を行わないけど融資を行う金融機関をノンバンクと呼びます。
ニュースはこのシャドーバンキングで投資商品の利払いが出来なかったと報じられているのです。
この話を理解するためには先にいくつかの事柄を理解する必要があります。
シャドーバンキングが何かを解説する前に中国バブルと地方政府の関りについて解説します。
地方融資平台とシャドーバンキング
中国のバブルの根底にあったのは地方政府の増収です。
地方政府ではGDPをあげる事が評価になるので積極的な増収を目指しますが、そのための資金は税金の交付金や銀行融資など限られた手段しかありませんでした。
地方債を発行して資金調達を図る事を規制されていたので、違う方法で地方政府は資金調達しなくてはいけませんでした。
そこで融資平台と呼ばれる投資会社を作って銀行や信託会社から資金を集めて開発事業を行うのです。
民間企業である不動産開発業者が利益を出していくのを尻目に国営企業が真似をしてあやかりたいと思うのは自然の事だと言えます。
この融資平台を隠れ蓑に地方政府は開発事業の資金捻出を行いました。
そこで融資平台に資金を提供したのがシャドーバンキングです。
シャドーバンキングである信託銀行は投資信託や証券化金融商品を扱い、資金を集めました。
不動産価格が好調に推移していたので不動産事業を組み込んだ債権を販売し、シャドーバンキングは一般投資家から投資を募ります。
その資金を融資平台に貸し付けて開発事業を行います。
融資平台を経由する事で地方政府は開発資金を集める事が出来るようになったのです。
2013年頃より中国不動産の価格上昇には警鐘が鳴らされ始めました。
2020年の三道紅線(スリーレッドライン)を迎えるまでも無く、市場関係者や金融機関内部では中国不動産市場が危機的状況にある事は理解されていたはずです。
そのため、銀行融資は規制とは別次元で引き締める側面もあったと思われます。
シャドーバンキングが活発になるタイミングがまさに不動産バブルの危険が感知される頃と重なるのです。
銀行は融資を控えてリスクヘッジを取りたいという安全思考になります。
対して不動産マーケットではまだまだ資金を必要としているバブルの只中にあります。
この狭間で都合よく銀行が責任を負わない資金提供であるシャドーバンキングがニーズマッチを起こしたという事なのでしょう。
シャドーバンキングがどのように不動産市場に関係するのか改めて解説します。
直接金融と間接金融
シャドーバンキングは何も社会悪や違法取引と言った性質のものではありません。
銀行とシャドーバンキングは相互に運用目的を補完出来る関係であったとも言えます。
私達の預金を銀行を介して企業に還元させる事を間接金融と呼びます。
それに対して株式投資など企業に直接投資資金を提供する事を直接金融と呼びます。
中国の融資平台は開発事業のためにシャドーバンキングから資金を提供して貰います。
シャドーバンキングはというとその資金をどこから集めてくるのでしょうか?
それは金融商品を販売する事で集めているのです。
信託などの理財商品を販売する事で資金を作り、それを融資平台へと貸し付けていました。
理財商品を購入しているのは投資家になります。
これで一般投資家の投資資金が不動産開発に流れるルートが出来ました。
融資平台は地方政府の企業です。
日本でいえば第三セクターのようなものですから、中国国民から見れば政府のお墨付きが付いているようなものに映ります。
シャドーバンキングが取り扱う金融商品も融資平台を通す事で暗黙の安心感のある金融商品として高いリターンと低いリスクを持つ商品として扱われました。
投資商品への安心感
中国では国営企業の事業への安心感が強いです。
融資平台の事業は国家プロジェクトのようなものです。
地方インフラ整備や開発事業が主な資金用途でもあり、それら債権を理財商品として販売する事で資金を生み出しています。
一般投資家からすると高い利回りと「政府系事業の安心感」からお得な投資と映ります。
シャドーバンキングは利回りの高い金融商品を販売し、その資金を融資平台へと流します。
不動産事業が順調に成長しているうちは高い利回りを支払う事も出来、融資金利で利益を出す事が出来ました。
しかし、2020年のスリーレッドラインにより不動産バブルは弾け、融資平台も当然その影響を受けます。
不動産事業が止まり、支払いが詰まるとシャドーバンキングは約束した金融商品の利益の分配が出来ません。
それが冒頭のニュースに繋がる訳です。
中植企業集団は氷山の一角
中融国際信託は中植企業集団の一部であり、この中植企業集団は8/17に債務再編計画を投資家に説明しました。
監査完了まで債務超過は不明との事ですが、相当な金額の債務超過になる事は間違いないでしょう。
中植企業集団は資産運用企業大手ですが、これは氷山の一角に過ぎず、他の資産運用企業も似たような事象が起こる事が予想されます。
融資平台は中国の地方都市に相当数存在します。
全ての負債を積み上げたらとんでも金額になる事でしょう。
一説には1000兆円を超えるとも言われており、中国バブル崩壊が次のステージに進んだと見る事が出来ます。
何分正確なソースが出てこないので憶測の域を出ないのですが、大陸全土で同時多発する問題だと思えばこの程度の規模に及んでも不思議ではありません。
シャドーバンキング問題とは膨れ上がる中国バブルを前に地方政府もその熱にあてられて起こった現象と言えるでしょう。
この波に乗らないと損だと言わんばかりに投資に乗じたツケが一斉に回ってきています。
リーマンショックとの違いに関しても記事にしてますので併せてご覧下さい。
関連記事:リーマンショックと中国バブル崩壊は何が違う?
https://urukin.com/779-2/
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この記事を書いた人
ライター
佐藤大介(さとうだいすけ)
ウルトラ金融大全局長
ウルトラ金融大全の監修を務めます。
金融リテラシーを高める為、セミナー講師として活動。
「超一流の口だけ男」と評される氏のセミナーは非常に分かりやすく、何度も受講するファンが沢山います。
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