ウル金ムービーはこちら

公開日:

その他

躺平(タンピン)主義と中国経済

躺平(タンピン)主義と中国経済

タンピン主義とは中国の若年層に広がる思想の一つで
“不買房、不買車、不談恋愛、不結婚、不生娃、低水平消費”(家を買わない、車を買わない、恋愛しない、結婚しない、子供を作らない、消費は低水準)
というある種の禁欲生活を送る人々です。

タンピンとは寝そべる事を意味する言葉で「寝そべり族」とも呼ばれています。
日本のニートに近い感じがありますが、タンピン族は中国経済が背景にあり、苛烈な競争社会に対するカウンターカルチャーとして注目を集めています。
この記事ではタンピン主義を考察していきたいと思います。

ウルトラ金融大全が動画で見れる!
お金の事が分かる!増やせる!無料動画が公開中!

超学歴社会と低迷する就職率

中国の2022年大学卒業者の新卒採用現場では就職率は何と文系学生で12%と驚異の就職難が続いています。
中国の学歴社会は「超」が付くほど高学歴志向です。
良い学校に入って良い会社に勤めるというのは日本でも見られた現象ですが、それをそのまま人口分規模を大きくしたものだと思えば良いでしょう。
学歴が人生の全てを決めると考えられているので大学受験も真剣そのものです。
中国の学生はとてつもなく厳しい学歴競争を勝ち残る事で有名大学卒業を勝ち取るのです。

それだけ苛烈な競争を勝ち抜いたにも拘わらず、今中国では仕事がありません。
膨れ上がったバブルの崩壊真っ只中とも言われている中国では未曽有の失業率であり、若年層の失業率は実に46%とも言われています。
統計が兎に角出てきにくい国ですので実態は分かりませんが、失業問題が相当に深刻である事は間違いないようです。

これだけの狭い門を潜り抜けて見事就職に成功したとしても前途は多難です。
中国では「996工作制」と呼ばれている労働激務が問題になっており、朝9時から夜9時まで週に6日働くような就労環境が存在します。
中国を代表するような大手IT企業でも過酷な労働実態が現実であり、中国社会では働き口は少なく、働けても激務と、行き場の無い労働環境となっています。

996工作制が映す競争社会

経済発展を支えてきたのは潤沢な労働人口故ですが、昨今では景気の状況も一変しているのも事実です。
長きに渡る一人っ子政策のしわ寄せで極端な少子高齢化を迎える事もあり、中長期で考える中国経済は課題が山積しています。
経済成長と共に人件費も上がり、競争の激化に伴い成果主義が浸透していきました。
中国企業では激務が当たり前となり、かつての日本のように働き過ぎが問題になっています。

中国の大手企業アリババ、シャオミ、ファーウェイなどでもこの996工作制が問題となっており、中国企業全体で超過労働が常態化している事がうかがえます。
日本のようだったという観点でいえば、残業実態に対して法整備が追い付かない事も似ています。
今後対策されていくのでしょうが、残業実態は日本でも良く問題に挙がるように中小企業や、零細企業では常態化しやすいです。
それが、大手企業でも散見されるのですから、問題の根が深い事が分かります。

働かない事が国家政策への抵抗

労働者が労働を放棄してサービスの利用も行わなければ生産力を失った中国自体に跳ね返ってきます。
タンピン主義とは生産も消費も行わない事で中国経済に寄与しない事による中華思想への抵抗でもあるのです。
政府を声高に非難する訳でも無い、それでいて社会の仕組みに迎合する訳でも無い。
犯罪を犯すわけでもないので、規制も取り締まりも行う事が出来ません。

中国の若年世代にとって現代社会中国はどのように映っているのでしょうか?
極端な格差により富める者は贅沢を尽くし、そうでないものは一生が決まっているかのような絶望を感じる。
それらの現実をSNSを通じて日常的に知るのです。
羨む事にも嘆く事にも辟易としている若者達は根本的な国家の在り様に疑問を持っています。

社会の中でどうある事が自身の幸福なのか?
人生とはなんであるのか?
そういった根源的な問いかけが巨大なミームを引き起こしていると言えるでしょう。

タンピン主義の根源的な問題とは?

タンピン主義に込められる本質的な意味とは人間の幸福というものへの疑問です。
中国という国家が「共同富裕」という思想を掲げ、共産主義的に労働を国民に求めた結果
今日的な過酷な競争と労働環境が生まれました。
物に囲まれ豊かな暮らしを夢見たはずが、余暇を楽しむ事さえ出来ない現実とのギャップで苦悩している訳です。

それならばいっそのこと一切の消費を諦め、何もしない事で幸福追求する考えに至ってもおかしくないのです。
タンピン主義は短期的な経済成長と突然の情報化社会の到来、そこに人口過密が組み合わさった中国特有の社会現象と言えます。

働きたくても仕事が無く、仕事にありつけても幸せになれない。
中国のZ世代が迎える現実は余りにも過酷で厳しいものです。

逃げ場のない現実に対する抵抗も手段が限られます。
政権批判の難しい中国で、若者たちが取れる手段が消極的な反発なのです。
労働をして、企業や国家に労働力を搾取される位ならいっそ何も提供しない。

中国の現状に対する不満の表れがタンピン主義として広がっているのです。
若年層の消費離れは中国に限った事では無く世界的に見られる現象です。
日本でも結婚しない人々が増えていますし、出生率も低い推移を続けています。
「庭付き一戸建てに自家用車」なんていう価値観は骨董品にも程があるといった塩梅です。
タンピン主義は中国に見られる現象ですが、本質的な課題は世界に共通している問題なのです。

幸福とはなんなのか?

中国の若者に限らず、日本の若年層、韓国のZ世代、アメリカの浮浪者になる若者や薬物問題など、世界中の若年層が今大きな課題感を抱えています。
そこにあるのは幸福への疑問です。
幸福とは一体何なのか?人生とは一体何なのか?
生まれた時から情報に溢れ、あらゆる欲求を手軽に満たせる現代。
そこには幸福は苦労との等価交換という観念が存在しません。
飽食の時代となった現代では食べ物を得るためにつらい思いをする必要も無く、社会に帰属しなくても生命の安全を保つことが可能です。
人生は突き詰めるところストレスからの逃避です。
おなかが減る、眠い、安全、こういった基礎的なストレスからの避難のために人間は行動します。
ついで欲求の解消が続きます。
性欲や支配欲、所有欲そういった自身の欲求を満たそうと行動するのです。
現代社会の弊害はこれらの欲求をいとも容易く満たせてしまう事です。
満たせてしまうと人間は次に何を思うのでしょうか?
さらに高尚な欲求の実現に向かうはずです。
しかし、情報化社会が早期の挫折をもたらしてしまいます。
誰もが夢を持っても、容易に諦められてしまうのです。
すぐに何でも知る事が出来るという事は「欲求の実現の困難さ」もすぐに知る事が出来ます。
生命は脅かされない、しかし欲求の実現は困難である。
この狭間で現代人はこの世に生まれてしまった事実という己のサガと向き合う事になります。
タンピン主義の根っこにはこのような人生の意味という哲学的な問いが内包されているのです。

中国経済への影響

不幸にしてか幸いにしてか、中国経済はバブル崩壊の只中にあり、人民元も弱くGDP成長も鈍化中なため失業者が溢れています。
タンピン主義を貫く若者が大量に増えた所で労働者が足らないという事態で無い為経済的な影響は殆どありません。
人手不足で企業が悲鳴をあげている只中でこのような社会ムーブメントが起これば、それなりに問題になりそうですが、現状ではむしろ収まる所に収まっている状態であり、経済的な課題とは呼べないでしょう。

しかし、これから長いデフレに入るかもしれないと言われている中国です。
今は仕事が無く、過当競争である就職市場も今後の人口動態で必ず労働者不足が起こる事でしょう。
中国では日本とは比べ物にならない少子高齢化を迎えます。
その時に長らく働いてこなかった労働者が果たして機能するのでしょうか?

タンピン主義の問題は短期的には影響を及ぼさないと思われます。
もしも長期に渡りタンピン主義が全土に広がった時、遠くない未来で労働者不足が問題になるのかもしれません。
就職氷河期と呼ばれた20年前から一転、日本でも失われた30年の後である現代、多くの企業で労働者不足に苦しんでいます。

中国でも状況が逆転する時は来る事でしょう、今はまだ大火となっていないこの問題をどう解決するかはすでに課題に挙がっているのです。

ウルトラ金融大全が動画で見れる!
お金の事が分かる!増やせる!無料動画が公開中!

この記事を書いた人

佐藤大介

ライター

佐藤大介(さとうだいすけ)

ウルトラ金融大全局長
ウルトラ金融大全の監修を務めます。
金融リテラシーを高める為、セミナー講師として活動。
「超一流の口だけ男」と評される氏のセミナーは非常に分かりやすく、何度も受講するファンが沢山います。
リンクからウル金セミナーも是非ご覧下さい。

その他の記事一覧はこちら

ウル金ムービーはこちら

ウル金ムービーはこちら