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資産運用

【なぜ起きた】ファーストリパブリック銀行の破綻

【なぜ起きた】ファーストリパブリック銀行の破綻

全米で14位の資産規模を誇っていた地方銀行のファースト・リパブリック・バンク(FRC)が、5月1日に経営破綻し、米連邦預金保険公社(FDIC)による管理下に入ったと発表されました。

同時に、米国最大の銀行であるJPモルガン・チェースは、FDICが主導した緊急入札により、FRCを約106億ドルで買収したことを公表しています。米国内における銀行の経営破綻としては、これが史上2番目の規模です。

本記事では、なぜこのような破綻が起こったのかを詳しく解説していきます。

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ファーストリパブリック銀行の破綻の原因

「ファースト・リパブリック・バンク」は、全米で14位の資産規模の地方銀行です。

1985年の設立以来サンフランシスコやロサンゼルスをはじめニューヨークやボストンなど、全米8州にわたり84店舗を運営してきました。

FRCの破綻の始まりは、3月のシリコン・バレー・バンク(SVB)の破綻がきっかけです。SVBは、預金保険の適用されない預金が大量に流出したことが原因で経営が悪化し、最終的に破綻に陥ってしまいました。

FRCも同様に保険対象外の預金の割合が高く、大手銀行11行からの救済措置による預金の注入にもかかわらず、預金の流出を防げなかったのです。

ただ今回は、FRCの資産側にも問題がありました。過去数年間、FRCは急激に融資を拡大するアグレッシブな経営戦略を展開しており、その伸び率は他の主要銀行と比べても大きいものでした。

FRCが特に力を入れていたのは、富裕層向けの住宅ローン事業です。サンフランシスコやシリコンバレー、ニューヨークなど全米の富裕層が多く住む地域を中心に、当初数年間は元本返済を猶予し、利息だけを支払う「ジャンボローン」を積極的に推進してきたのです。

これらの住宅ローンは、FRCの一戸建て住宅ローン全体の約6割を占めています。そこに、FRBによる金利上昇で、これらのローンは大きな含み損を抱えることになり、経営の不安定化を引き起こしたのです。

破綻までの流れ

サンフランシスコを本拠地とする「ファースト・リパブリック・バンク」は、先日のSVBの経営破綻に引き続き、深刻な経営危機に直面したのです。クライアントは不安に駆られ、数日間で約1000億ドルの預金を引き出しました。

その後、JPモーガン、PNCを含む11の大手銀行が集まり、総額300億ドルの預金を提供する形で「ファースト・リパブリック・バンク」の救済を試みました。しかしながら、この試みはうまくいきませんでした。

今年の4月24日に発表された1-3月期の決算では、純利益が前年同期比で32.9%も下落するなど、予想以上の悪化を示しました。これは、経営の不安定さが原因で急激に預金が減ったことで、金利差による利益が縮小したと考えられています。 

1-3月期の預金総額は前期比で40.8%も減少し、大手銀行による300億ドルの預金提供を差し引いても、前期比で57.8%の減少となる計算です。これにより、同行の株価は4月25日の終値で前日比49.4%下落し、一日でほぼ半額となりました。

ファースト・リパブリック・バンク

経営を立て直すためには、自己資本比率の改善と流動性の確保が必要で、そのために「ファースト・リパブリック・バンク」は最大で1000億ドル(約13兆4000億円)の資産を売却する計画を立てていると報じられます。

しかし、他行から市場価格以上で資産を買い取ってもらうという救済策がうまくいかなかったことから、「ファースト・リパブリック・バンク」の破綻処理が進められることになったのです。

米国の地方銀行、ファースト・リパブリック・バンクの経営危機は、JPモルガン・チェースによる買収でようやく解決しました。米国の法律では、全国的に預金のシェアが10%以上の銀行が他の銀行を買収することは通常は禁じられています。

しかし、このケースでは米政府からの緊急要請があり、特別な処置が採られたようです。この買収により、JPモルガンは約26億ドルの一時的な利益を得るとともに、2023年から2024年にかけて約20億ドルのリストラ費用が見込まれています。

内部収益率(IRR)は20%以上と試算されています。このニュースを受けて、JPモルガンの株価は前日比で2.14%上昇しました。

3日間でダウ平均は1000ドル下落

5月1日にFRBが破綻したことで市場に緊張が走りましたが、幸い、JPモルガン・チェースがその預金と資産を買収すると発表したため、混乱は一定の範囲に抑えられました。

ところが、一時的な混乱は抑えられましたが、銀行業界への不安感が再び高まります。特に5月2日から4日にかけては、投資家たちが次に破綻する可能性のある銀行を探し始めると、その動きが株式市場全体に影響を与えます。特にパック・ウエスト、ファースト・ホライゾン、ウエスタン・アライアンスなどの株価が急落。

ヘッジファンドによる空売りが原因で、財務状況が厳しい地方銀行の株が大幅下落、ダウ工業株30 種平均は3日間で1000ドル下落しています。

今後の影響は?

今後の市場への影響について、専門家の意見は分かれています。以下、ロイター通信の専門家コメントの引用になります。

楽観的な専門家の意見

1.【三井住友銀行 チーフ・マーケット・エコノミスト 森谷 亨氏】

米ファースト・リパブリック・バンクFRC.Nが、JPモルガン・チェース銀行に売却されることで合意に至ったことは、市場に一定の安心感を与えるだろう。無秩序な破綻が最悪のシナリオであったが、それは避けられた。ただ、大手銀行による買収は市場のメインシナリオであり、ドル/円などマーケットの反応は限定的になっている。

ファースト・リパブリックよりも、預金保険対象外の預金比率が大きい米地銀はないとみられ、今回の件をきっかけとした、金融システム不安は広がらないとみている。ただ、小さくても米銀の破綻が続けば、大手金融機関といえども、すべてを抱えこむわけにはいかなくなる。その点は警戒されよう。

2.【大和証券 チーフ・グローバル・ストラテジスト 壁谷洋和氏】

米当局が経営不振の中堅銀行ファースト・リパブリック・バンクを閉鎖し、同行の資産をJPモルガン・チェース銀行に売却することで合意したと報じられたが、時間外の米株先物はほとんど動いていない。週末辺りから想定されていたシナリオの範囲内であり、さほど深刻に捉えられている様子はない。

何のフォローもないまま破綻するより、引き継がれることで負のスパイラルは限られるとの安心感につながるのではないか。業界の雄であるJPモルガン・チェースが乗り出したことも安心材料になりそうだ。

引用元:ロイター通信 米ファースト・リパブリック銀が破綻:識者はこうみる

https://jp.reuters.com/article/koumiru-first-republic-idJPKBN2WS0TY

悲観的な専門家の意見

【コンペアブローカーのチーフアナリスト、ジャミール・アマド氏】

銀行部部門の信頼は一段と弱まった。金融市場がデフェンシブな状態は続くと予想しておかなければならない。安全資産が模索される中、ドルや円などが注目されるだろう。

今回のファースト・リパブリック銀行を巡る動きで、今週の連邦公開市場委員会(FOMC)で予想されている利上げがとん挫する公算は小さい。ただ、銀行部門で見られている明確なストレスについて連邦準備理事会(FRB)がどのように考えているか、パウエル議長の発言が注目されるだろう。

【ニューヨーク・タイムズ】

「ファースト・リパブリック・バンク」の経営破綻は、「シリコンバレーバンク」の破綻への反応が遅れて出たもので、地方銀行の破綻が今後もさらに続くことを示す兆候はないと伝えています。

一方、わずか2か月足らずの間に3つの銀行が破綻する事態は、金融不安の根深さも示しています。不安の連鎖を断ち切るためにFRBは監督や規制を強化する考えですが、世界の市場ではアメリカの銀行システムへの警戒が続きそうです。

引用元:ロイター通信 米ファースト・リパブリック銀が破綻:識者はこうみる

https://jp.reuters.com/article/koumiru-first-republic-idJPKBN2WS0TY

引用元:NHK アメリカで3つの銀行が2か月のうちに破綻 相次ぐ背景は

https://www.nhk.jp/p/catchsekai/ts/KQ2GPZPJWM/blog/bl/pK4Agvr4d1/bp/pBLK7NAxer/

G7も対応策を検討

今回の事態を受け、G7も動き出しています。

シリコンバレーバンクやファースト・リパブリック・バンクの破綻要因の1つである、ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)。

ソーシャルネットワーキングサイト(SNS)を介した急激な預金流失に対応するため、主要7カ国(G7)は各国で緊急対策の策定を調整しています。SNSを介した信用の不安定化や、インターネットバンキングからの預金流出に対応することが求められます。

最近の米国地方銀行の破綻、特にシリコンバレーバンク(SVB)とファースト・リパブリック・バンク(FRC)の破綻を受けて、新たな銀行規制と監督の方針について議論される予定です。

これらの議論は、11日から13日にかけて新潟市で開催される「財務大臣および中央銀行総裁会議」で行われ、その結果を共同声明として発表することを目指しています。

今後の政府の対策に注視して柔軟に対応する準備が必要

 ファースト・リパブリック・バンク(FRC)の経営破綻は、対象外の預金比率が高いことと、急激な融資拡大によるリスク増大が主な原因です。特に、富裕層向けのジャンボローンが大きな含み損を抱え、経営の不安定化を引き起こしました。

このニュースは金融市場に衝撃を与え、3日間でダウ工業株30種平均が1000ドル下落。専門家たちの意見も分かれていますが、一部では、FRBの利上げペースが急すぎたとの見方も出ています。今後の金融政策の動向と市場の反応に注目が集まるでしょう。

また急務となるのが、デジタル時代における銀行預金の急激な流出への対応です。G7(主要7カ国)はソーシャルネットワーキングサイト(SNS)を介した信用の不安定性の拡大や、オンラインバンキングによる急激な預金流出の対策が必要とされています。

米国の地方銀行の連続的な破綻を踏まえ、新たな銀行の規制と監督の方法についても議論されるでしょう。

これらのことを踏まえて、今後FRBと政府の政策次第では、市場の動向が大きく左右する可能性もあります。そのため、注意深く市場を見守り、適切な対応ができるようにしておきましょう。

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この記事を書いた人

辻本剛士

ライター

辻本剛士(つじもと つよし)

CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員二種
独立型FPとして相談業務、執筆業務を中心に活動中。

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