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貯蓄
「老後2000万円問題」に対する効果的な備え方とは
目次
1.2000万円問題と現状の公的年金制度
(1)なぜ2000万円問題が出てきたのか?
2000万円問題は、2019年に行われた金融庁の金融審議会「市場ワーキング・グループ」の報告書によって、「老後の30年間で約2,000万円が不足する」と発表され、話題になった問題のことです。
つまり、会社を退職後の老後の時代において2000万円以上は不足することが予想されるというインパクトの強い結果が公表されたことで、リアルタイムで老後に向けた備えをどのようにすればよいかについて注目されるようになったと言えます。
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(2)現状の年金制度
現状の年金制度は、1階建て部分である「国民年金」と2階建て部分である「厚生年金保険」とに分かれています。
現在では、これらの公的な年金に上乗せする形で「私的年金」と呼ばれる制度(これを「3階部分」といいます。)に加入することで、老後に備えをさらに手厚くする人が増えています。
①国民年金
国民年金は年金制度における「1階部分」に該当する制度で、20歳の誕生日を迎えたら強制的に加入することになる制度です。
20歳から60歳までの期間において、保険料をどれくらいの期間について払ってきたかで65歳以降からもらうことができる年金の額が決まります。
②厚生年金保険
厚生年金保険は、年金制度における「2階部分」に該当する制度で、厚生年金保険に加入している会社などに勤務している会社員や公務員が加入する制度です。
厚生年金保険は、基本的に「勤務していた期間」がそのまま加入していた期間となるため、勤続年数が長くなればなるほど、65歳以降にもらうことができる年金の額は増えます。
③私的年金
公的な年金とは別で、民間の金融機関が取り扱っている年金制度に個別に加入することで、老後の保障を手厚くすることを行う人が増えています。具体的には、iDeCoや個人年金保険などが該当します。
2.老後2000万円問題への効果的な備え方
老後2000万円問題が言われるようになったのが2019年ですが、それ以前から老後資産をどのように準備していけばよいかという問題は続いていました。
今回の2000万円問題が提起されたことにより、より一層老後への備え方について考えなければならないようになったといえます。
老後の備えについて、具体的な対策の方法として、2つの方法について解説していきます。
(1)個人年金保険
個人年金保険は、生命保険会社などの金融機関で取り扱われているもので、契約時に決めた予定利率で運用する「定額個人年金保険(定額型)」と、選択した投資信託などで運用する「変額個人年金保険(変額型)」の2種類があります。
個人年金保険は、要件さえ満たしていれば、どなたでも加入することができるものとなっています。
①定額型の特徴
定額型の特徴は、一定期間について保険料の払い込みをして、その払い込みをした保険料が将来的に受け取ることができる年金の原資となり、その後の期間において、一定額を年金形式で受け取ることができるものです。
【メリット】
ア.将来受け取ることができる金額があらかじめ決まっているため、老後の資産設計などの計画を立てやすい
定額型の場合、保険料の支払いが終わった時点における年金原資の額があらかじめ決まっているため、将来受け取りたい年金額を計画的に決めたうえで、その額を受け取るために必要な年金原資に併せた保険料を設定することができます。
イ.年金原資の額に基づいた最低保障が設けられている
年金原資に基づいて、最低保障額があるため、万一払い込みの期間の途中で解約をすることになったとしても、ある程度の部分については最低保障でカバーされるため、全額掛け捨てになるといったリスクは抑えることができます。
【デメリット】
ア.インフレによる物価高騰などにより、価値が目減りする
同じ年金原資の額であっても、物価の上昇が大きくなると、その価値が目減りする(つまり、同じ金額の年金原資であっても、受け取れる年金額の実質的な価値が低くなる恐れがある)ことが起こります。
イ。予定利率の高低によって、保険料が割高に感じることがある
予定利率が低い時期に契約した場合、予定利率が高い時期に契約した場合と比べると、年金原資の積立額にも大きく差が出るため、同じ保険料であっても、割高く感じる恐れがあります。
②変額型の特徴
変額型は契約者が選択した運用方法によって、将来受け取ることができる年金原資の額が大きく変動するという特徴があります。
【メリット】
ア.運用方法によっては、払い込み保険料を大きく上回る年金額を受け取ることができる
変額型の最大の特徴は、運用方法を契約者が選択することです。つまり、選択した運用方法によっては、払い込み保険料の総額を上回るような年金原資とすることができる可能性があるといえます。
イ.インフレに強いため、物価高の影響を受けにくい
定額型のデメリットである、インフレによる物価高の影響を変額型の場合はあまり受けないという特徴があります。当然ですが、選択した運用方法によっては、インフレの影響を受けやすいものもあるので注意が必要です。
【デメリット】
ア.最低保障がないため、元本割れのリスクがある
変額型は、定額型と異なり、運用実績によっては高い年金原資を手に入れることができる反面、元本割れを起こすリスクもあります。
また、元本割れのリスクについても、定額型のような最低保障はないため、元本割れによるリスクは大きくなることも考えられます。
イ.保険関係コストとは別で運用コストがかかる
資産運用の方法を指示して年金原資を運用するため、資産運用に関する費用が別途発生するため、費用面において割高になる恐れがあります。
(2)iDeCo
iDeCoとは、確定拠出年金といわれる制度で、自己が運用方法を指示し、その運用結果に応じて老後に受け取ることができる年金額がきまる制度です。
加入は任意で、加入の申込、掛金の拠出、掛金の運用の全てをご自身で行い、掛金とその運用益との合計額をもとに給付を受け取ることができます。
【加入対象者】
国民年金の加入者であれば、基本的にどなたでも加入することができます。
【運用方法】
運営管理機関が選定・提示する運用商品(投資信託、保険商品、預貯金等)の中から、加入者自身が商品を選んで運用します。
なお、運用商品は、必ず3以上35以下の商品(この中のうち1つ以上は必ず元本が保証されている商品を含みます)を選択肢として選定・提示することとなっています。
加入者は、複数の運用商品を選ぶこともでき、運用の途中で運用商品を変更することもできます。
【給付の種類】
老齢給付金、障害給付金、死亡一時金、脱退一時金の4種類の給付を受けることができます。
(老齢給付金の特徴)
ア.給付形式は5~20年の有期年金、又は終身年金
給付形式は5~20年の中から選ぶことができる「有期年金」と死ぬまでもらうことができる「終身年金」の2種類に分かれますが、規約に応じて「一時金」として一括でもらうこともできます。
イ.支給開始年齢は加入期間に応じて異なる
支給開始年齢は、加入期間の長さによって、60歳(加入期間が10年以上)からもらうことができる(加入期間が1月以上であれば、65歳から)ようになります。
3.老後2000万円問題は2000万円では足りないということも想定する必要がある
2000万円問題が提起されたのは2019年です。実際に、この時に提起された内容についても、様々な点で違和感を覚えた人が多いのではないかと思われます。
想定された家族の所得状況などについても、一般的な家庭の所得状況とかけ離れた条件で算定されていることもあり、また、老後の生活水準や物価の上昇率など、提起された当時と大きく変化している部分も多くあります。
そのため、以下のようなことも視野に入れたうえで、備えを進めていくことが大切であるといえます。
①毎月の生活にかかる費用をどれくらいと想定するべきか?
2000万円問題の本質としては、毎月の生活に要する費用と年金等の収入の差がいくらであるかという部分が重要であるといわれています。
そのため、老後の生活水準をどれくらいにするかによって、毎月の収支でどれだけの開き(支出が上回る額がいくらくらいと想定するか?)を想定しているものであるかについては、十分考えたうえで、いくら準備しなければならないかを考えていく必要があるといえます。
②健康リスクをどこまで許容するか?
平均寿命が年々伸びていることからも分かるように、老後の期間がどんどん伸びています。
そのため、健康リスク(「長寿リスク」とも言われる。)を考慮したうえで、何歳まで生きた場合に必要な資金がどれくらいになるか?という部分も併せて考慮しなければならないといえます。
③社会保険制度などの変化にも備える必要がある
65歳以上の人の割合がどんどん増加傾向にあるため、現状のような社会保険制度が持続し続けているとは限らないことも、十分に考慮する必要があるといえます。
具体的には、公的年金の年金額が減額されたり、支給開始年齢の引上げが行われるなどのあらゆる可能性を視野に入れて準備をする必要があるということです。
4.まとめ
老後2000万円問題が提起されてから約3年経過していますが、その問題に対する備えが思うように進んでいない人が多いと思われます。
しかし、時代が進みどんどん社会情勢が変化している中であっても、老後の問題というのは避けて通ることができない問題です。老後を迎えたときに、後悔の無いような備えを今からでも遅くないので、意識して資産形成などを進めていくことが、老後の社会を生き抜くために必要なことなのかもしれません。
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この記事を書いた人
ライター
ウルトラ金融大全編集部(うるきんへんしゅうぶ)
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