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中国の銀行が騒然!取り付け騒ぎは何故起こるのか?解説

中国の銀行が騒然!取り付け騒ぎは何故起こるのか?解説

河北省滄州市(そうしゅうし)の滄州銀行(沧州银行)で「取り付け騒ぎ」が発生しました。
中国大手デベロッパー恒大集団の経営不振の影響を受けて、ネットユーザー間で情報が拡散した結果
銀行には長蛇の列が出来、自分のお金を引き出す人々でごった返しました。

滄州銀行では現金の山を築き、資金不安が無い事をアピールして事態の終息に努めましたが、人々の不安を払しょくする事には苦労しているようです。
今回の記事では中国で広がり始める金融不安がどうなっていくのかを解説します。

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原因は恒大集団の借り入れ情報が暴露された?

2023年決算書の発表以降投資家離れが止まらない恒大集団ですが、この動きを受けて取引銀行に疑念が向けられています。
件の滄州銀行も恒大集団と取引のあった銀行の一つです。
ニュースの詳細を見るとネット上に恒大集団の銀行借り入れ明細が暴露され、その中に滄州銀行に34億元(約693億円)の借り入れがあると記されていたようです。
対して滄州銀行の発表では3.46億元(70億円)しか貸していないと表明しており、情報との乖離が社会不安を煽る形となって取り付け騒ぎに発展した模様です。

中国バブル崩壊は大手デベロッパーの相次ぐデフォルトだけでなく、地方融資平台、シャドーバンキングなど周辺の課題が山積しており、どの問題から金融恐慌が起こっても不思議の無い状態です。

そういった下地の上でネット上の情報とはいえ人々の行動に火をつけるきっかけとしては十分なものだったのだと思われます。

そもそも取り付け騒ぎは何故起こるのでしょうか?
火のない所に煙は立たないと言いますが、銀行が倒産する噂は本当なのでしょうか?
基本的に銀行が倒産する事なんて起こりません。
どれだけ大きな負債を抱えているとしても自己資本比率を揺るがすほど1案件に貸し付ける事は無いでしょう。
今回恒大集団の問題が切っ掛けになっているようですが、如何に恒大集団が大きいとはいえ、貸し付けが回収されなくて銀行が倒産する事は考えにくいと思います。

融資に際して担保を取っている部分がありますし、既存の回収資金や受け取っている利払いもあるはずです。
担保割れや不良債権化する事はあっても満額回収出来ない訳ではないでしょう。

恒大集団への融資が事実だったとしてもそれが即ち滄州銀行の倒産を意味するわけでは無いはずです。

にも拘らず何故取り付け騒ぎが起こるのでしょうか?

銀行の持つ信用創造の仕組み

銀行が倒産するから取り付け騒ぎが起こるのか?
取り付け騒ぎが起こるから銀行が倒産するのか?

まるで鶏が先か卵が先かという話のようですが、銀行の場合明らかで「取り付け騒ぎが先」です。
取り付け騒ぎというのは銀行が危ないんじゃないの?と噂がたって、皆がこぞって資金を引き出してしまう事です。

ところで銀行の定義とは何でしょうか?
ノンバンクとかシティバンクとか言われていますが、銀行の定義は「預かり金業務」があるかどうかです。
預金を引き受けている金融機関の事を銀行と呼んでいます。
なるほど、確かにサラ金、消費者金融、カードローンを銀行とは呼びませんね。

銀行の仕組みとは人々の預金を元に貸し付けを行います。
その貸し付けは巡り巡って再び銀行に戻り、銀行は更に貸し付けを行う事が出来るのです。

これを銀行の「信用創造」と呼ばれています。

例えば人々がそれぞれ10万円を銀行に預けます。
10人の人が預ければ100万円、100人の人が預ければ1000万円となります。
100人が全員直ちに預金を引き出さなければ銀行はその1000万円を貸し付けて金利を稼ぐ事が出来ます。

預かった1000万円を例えば企業Aに融資するとします。
企業Aは借り入れた1000万円の利息を銀行に支払います。
これが銀行の利益となります。
そして、1000万円を使って他の企業Bの支払いに使ったり、従業員の給与として支払ったりします。

支払いを受けた企業Bが仮に500万円を、企業Aの10人の従業員がそれぞれ50万円を受け取ったとしましょう。
企業Bや従業員は企業Aから受け取ったお金をどうするでしょうか?

そのお金は銀行にて管理されます。
企業Bや10人の従業員が直ちにお金を引き出さなければ、その1000万円は銀行が再び貸し出しに利用できます。

勿論全てのお金が引き出されないとも限らず、100%のお金が銀行に戻る訳ではありませんし、同じ銀行に戻る訳でもありません。
しかし、世の中に還流しているお金は巡り巡ってどこかの銀行に預けられ、そのお金は再び融資に回される事になるのです。

このように信用創造はお金によってお金を新たに作り出す事が出来るのです。

信用創造ではまるで無限にお金を作り出せてしまうので、危険な部分があります。
この仕組みにより無限にお金が生まれる事を防ぐために銀行にも自分たちのお金を一定割合持たせる取り決めがあります。

それを自己資本比率と呼び、貸し出しで作られるお金と銀行の資本の割合に規制をかけています。

銀行が倒産する時

つまり、預かり金業務を持つ銀行は信用創造が可能な限りにおいて資金に困る事はありません。
にも拘わらず、何故銀行倒産が起こるのでしょうか?

それが取り付け騒ぎによるものです。
取り付け騒ぎの正体とは銀行倒産の不安から皆が資金を引き揚げてしまう事です。
これが起こると銀行は手元の資金を引き出しのために支払わないといけません。

しかし、思い出して下さい。

銀行が貸し出している多くのお金は預かり金であり、それを元に信用創造した資金です。
預かり金がどんどん引き出されてしまったらどうなるでしょうか?

自己資本比率はどんどん低下してしまいます。

極論でいえば預金が全て引き出されてしまっては銀行には預金者に返すお金がありません。
そんな事起こらない前提で貸し付けに回しているので、銀行には預金者から預かった資金が全てある訳ではないのです。

預金者が引き出しを求めると銀行は応じなくてはなりませんが、引き出す資金が足らなくなります、
これが取り付け騒ぎによる倒産です。

大事なポイントは皆が引き出さなければ資金は有るという点です。
他の金融機関や国営金融機関などから借りてくるなり資金調達の方法はあるので、通常の引き出しであれば問題ありません。
しかし、不安が連鎖して皆が皆資金を引き出そうとすると、全員の資金を一時的に賄う事は出来なくなってしまうのです。

マクロの視点で見れば引き出された資金は再びいずれかの金融機関に預けられる訳で、銀行間で資金を融通すれば取り付け騒ぎが回避出来る事は理解出来るはずです。

理論上銀行倒産が起こらないとしても現実に取り付け騒ぎは起こります。
取り付け騒ぎにおいて最も恐ろしい事は不安の拡大なのです。

誰も彼もがこぞって資金を引き揚げる事態、それが取り付け騒ぎの正体であり最も回避しなくてはならない事態なのです。
なので、取り付け騒ぎの対症療法は「不安は無い」と証明する事になります。

取り付け騒ぎを収集出来た実例としては政府が金融不安を保証すると表明した事で収まったケースがあります。

今回の滄州銀行の取り付け騒ぎでも銀行の取った措置は札束を積み上げてお金が潤沢にある事をアピールしました。


これはお金は潤沢にあるので落ち着いて下さいと預金者に示している訳ですが、効果があって預金者が引き出しを止めてくれれば銀行倒産は起こりません。
しかし、それでも預金引き出しが止まらないと銀行は倒産してしまいます。

取り付け騒ぎの恐ろしい所は噂が先行して事実となってしまう所なのです。
それなら、噂は本当では無いか!と思われがちですが、取り付け騒ぎの結果預金者が資金を引き出した事で倒産したというのが事実です。
なので、倒産しそうであるという事実があるから預金者が資金を引き出したのではないのです。

噂が先で事実が後なのです。

皆がお金をおろさなければ銀行は大丈夫ですが、誰も彼もが不安に駆られて資金を引き揚げると本当に銀行の資金が枯渇します。
事実になって貰っては困るので、リスクヘッジのために資金を引き揚げる人がさらに増えてしまうのです。

こうして銀行の信用不安が雪だるま式に膨れ上がって取り付け騒ぎからの銀行倒産が実現してしまいます。

中国の取り付け騒ぎの顛末

取り付け騒ぎはマクロ的に見れば終息します。
人々が引き出した資金は再びどこかの銀行に預けられるためです。

なので、取り付け騒ぎは単体の銀行にとって脅威ですが、銀行全体で考えると収斂する問題にすぎません。
中国の取り付け騒ぎは恒大集団などの大手デベロッパーの資金問題が社会不安を作り、それが噂を呼んで起こった現象です。

社会不安が続けば今後も取り付け騒ぎは起こるかもしれません。
しかし、引き出した資金が再び銀行に戻る限り、取り付け騒ぎ自体の影響は限定的です。
かつて、日本でもバブル崩壊以降銀行の統廃合が進んだように、自己資本比率に関する規制が見直され、金融業界の再編が進むだけとも言えるでしょう。

取り付け騒ぎが頻発するので銀行倒産が続き、中国金融業界が崩壊するというような見方は早計です。
取り付け騒ぎとは銀行の預かり資金が枯渇して引き出せない状況なのであり、全ての銀行で同時発生する事などそうそう起こる事では無いでしょう。

しかし、今回のような社会不安が伝播して地方銀行のいくつかで取り付け騒ぎが起こる事は否定できません。
そして、社会不安が増大して大きな金融恐慌に繋がる事もあり得ない事では無いでしょう。

それでも、マクロで見ればより大きな銀行として統廃合されていき、収まる所に収斂すると見て良いと思います。

膨大に膨れ上がった経済効果は同時に大きな債務も作り出し、今それが表出している段階です。
中国経済の方々で不良債権化や倒産と言った負債の清算が起こっています。
それは、これまでの経済成長の一つの収束の形であり、次のフェーズへの通過儀礼とも言えるのかもしれません。

世界経済への影響は限定的

大きく荒れる中国の金融市場ですが、世界経済への影響は限定的だと思われます。
中国は内需が旺盛な国ですので、不良債権化の問題も国内で消化されます。
国外で影響を受けるのは直接投資を行っている事例に限定化されると予想できます。

中国で金融恐慌が起こったとして具体的にどうなるかと言えば中国株式市場が低迷し、中国国際企業の株価も連動して下がる。
中国からの国外への投資が引き上げられ、既存融資も積極的に回収される。
こういった事態が予想されます。

一帯一路構想など、国外への投資も積極的に進めてきた中国ですので関係諸国へは影響があると言えますが、一帯一路で中国から投資を受けている国は世界経済に多大な影響を与える国ではありません。
それら関係諸国への投資が冷え込んだり、既存融資が引き上げられると言った事が起こっても世界恐慌に繋がるとは考えられないでしょう。

世界恐慌へのシナリオを考えた場合、リーマンショックのように世界同時多発的に金融ショックが起こらなくてはなりません。
それはさながら中国の取り付け騒ぎのような現象が世界に波及する事態です。
社会不安が世界的に起こり、世界中で取り付け騒ぎが起こる。
そんな事は今のところ考えられませんし、要素としても見当たらないので、世界経済への影響は限定的であると見えるのです。

日本での影響も日中間の輸出入や中国への投資で影響は起こるでしょうが、換言すればそれだけでしょう。
とはいえ、輸入も輸出も20兆円規模と全輸出入の構成比で20%にも及ぶ量です。

この内特に輸出には多大な影響を及ぼす事になり、関連企業への影響は大きなものとなります。
中国の需要に依存している業界では死活問題となります。

最後に日本国内の個々人への影響と言えば恐々とするほどのものは無く、影響は限定的という表現がぴったりと言えるでしょう。

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この記事を書いた人

佐藤大介

ライター

佐藤大介(さとうだいすけ)

ウルトラ金融大全局長
ウルトラ金融大全の監修を務めます。
金融リテラシーを高める為、セミナー講師として活動。
「超一流の口だけ男」と評される氏のセミナーは非常に分かりやすく、何度も受講するファンが沢山います。
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