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保険
【妻と子1人の3人家族】個人事業主になる場合に必要な保険は?
個人事業主として活動していくなかで仕事の獲得や、取引先の倒産、社会的な信用の維持など、さまざまな不安を抱えることになるかもしれません。そのなかでも個人事業主は社会保障が手薄になることも1つの不安材料になっています。
本記事では、個人事業主と会社員における社会保障の違いと、個人事業主に必要な保険について解説します。とくに、配偶者や子どものいる個人事業主の人は、自身に万一のことがあった際に家族が安心して暮らせるよう適切な保険に加入する必要があります。ぜひこの記事を参考にし、家族が安心して生活できる保険を見つけてください。
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目次
個人事業主は会社員よりも社会保障が手薄
個人事業主と会社員では加入する社会保険が異なります。ここでは、個人事業主の人が加入する公的年金と公的医療保険についてみていきます。
将来受け取れる年金が少ない
個人事業主は会社員よりも将来受け取れる年金が少なくなる傾向にあります。両者の加入する年金は異なり、個人事業主は「国民年金」に加入し、会社員は「国民年金」にプラスして「厚生年金」にも加入します。
国民年金(老齢基礎年金)の受給額は、令和5年時点で満額79万5,000円です。夫婦で個人事業主の場合は159万円、月に換算すると13万2,500円となります。老後に夫婦2人で生活していくには厳しいと感じる人もいるかもしれません。
一方の厚生年金(老齢厚生年金)ですが、国民年金と厚生年金の両方を将来受け取れる仕組みとなっています。受給額は所得や加入期間に応じて異なり、高所得で加入期間が長い人ほど年金を多く受け取れます。
日本年金機構が公表した資料によると、夫婦2人分の老齢基礎年金を含む標準的な年金額は22万4,482万円です。個人事業主と比較すると約9万円多く年金を受給できます。
遺族年金が少ない
個人事業主は年金だけでなく、万一の際に遺族が受給できる「遺族年金」についても保障が手薄です。これも個人事業主が加入する国民年金と、会社員などが加入する厚生年金が要因となります。
もし、個人事業主に万一のことがあった場合は遺族に「遺族基礎年金」が支給されます。本制度は、国民年金または厚生年金保険の被保険者で、18歳未満の子どもがいる配偶者や子どもが対象です。
そのため、子どもがいない世帯や、子どもが成人している世帯は遺族年金を受け取れず、遺族に対する保障が手薄になってしまうのです。受給額は子どもの人数によって異なり、2023年度の受給額は一律で79万5000円。そして、子どもが1人増えるごとに遺族年金が加算される仕組みです。
一方の会社員や公務員は厚生年金に加入するため、万一の場合は遺族に「遺族基礎年金」に加えて「遺族厚生年金」が支給されます。そして、遺族厚生年金の場合は子どもがいない遺族にたいしても支給され、手厚い保障を受けられるのです。
このように、個人事業主と会社員では、万一の事態が発生した際の遺族への保障に大きな差が生じてしまいます。
傷病手当金がない
個人事業主が加入する国民健康保険には傷病手当金がありません。傷病手当金とは、病気やケガなどが原因で休職しなければならない場合に、健康保険から給付金を受け取れる支援制度です。
傷病手当金の支給額は給与のおよそ2/3です。また、支給期間は休職開始から最長1年6ヶ月までとなっており、働けないこの期間でも給与のおよそ2/3の収入を確保できます。
この傷病手当金は、個人事業主が加入する国民健康保険には存在しません。そのため、個人事業主が病気やけがで働けない場合は収入がゼロとなり、貯蓄や保険でカバーしなければならないのです。
個人事業主の必要な保険
ここまで、個人事業主は社会保障が手薄になってしまうと解説しました。それを踏まえて、個人事業主が加入すべき必要な保険についてみていきましょう。
生命保険
生命保険は自身の死亡や病気などに備えるため、多くの人で保険料を出し合う仕組みです。自身に万一のことが起きた際に遺族などが保険金を受け取れます。生命保険は主に掛け捨て型の「定期保険」と一生涯の保障がある「終身保険」の2つに分類されます。
前述で解説したとおり、個人事業主は万一の際に遺族が受け取れる死亡保障は「遺族基礎年金」だけです。そのため、子どもがいない家庭や子どもが成人している家庭には支給されないため、これらの家庭にとっては死亡保障の面で不利となります。これらをカバーするためにも、生命保険への加入は極めて重要といえるでしょう。
独立してまだ日が浅い個人事業主の場合は日々の売上げが不安定かもしれません。その場合は毎月の保険料を比較的安く抑えられる「定期保険」が向いています。一方で、死亡保障と資産形成を両立させたい場合には貯蓄性のある「終身保険」が適しているでしょう。
収入保障保険
収入保障保険は死亡または高度障害状態になった際に、毎月一定額の保険金が保険期間の満了まで支払われます。この商品は定期保険に分類され、保険期間の経過とともに保障が減少していく仕組みです。そのため、一般的な定期保険よりも保険料を抑えられ、少ない掛金で手厚い保障を受けられるでしょう。
個人事業主の場合は遺族年金が会社員に比べて少なくなります。そのため、収入保障保険はその手薄になる部分をカバーする役割があるのです。また、毎月の給料のように年金形式で保険金を受け取れるため、毎月の収入も安定し、将来の収支計画も立てやすくなるでしょう。
就業不能保険
就業不能保険は病気やケガで一定期間以上働けなくなった際に、月払いなどで保険金が支給される保険です。傷病手当金が受け取れない個人事業主にとっては毎月の収入を確保できるため、必要性の高い保険といえるでしょう。
ただし、多くの就業不能保険では、就業不能な状態になったからといってすぐには給付が開始されるわけではありません。就業不能保険には60日などの「免責期間」が設けられており、保険金の支給が開始されるのは免責期間が終了した後になります。
以下の条件で就業不能保険に加入し、病気で5年間就業不能な状態であった場合にいくら保障されるかをみていきましょう。
就業不能期間:5年
保険金額:月額20万円
保険期間:55歳満了
免責期間:60日
この場合、病気で就業不能になってから60日経過後に20万円の保険金が毎月支給されます。支給期間は55歳となるまで、もしくは就業可能な状態になるまでです。今回は就業不能期間が5年間のため、受け取れる保険金の総額は以下のとおりです。
(20万円(保険金)×12ヶ月×5年(就業不能期間))=1,200万円
このように、働けない期間に1,200万円の収入が確保されるため、個人事業主にとっては大きな安心材料となるでしょう。
医療保険
医療保険と就業不能保険はどちらも病気やケガのリスクに備える保険ですが、保障の目的が異なります。
医療保険は病気やケガの治療に対する「医療費」をカバーするための保険です。一方の就業不能保険は病気やケガで働けなくなった間の「収入」をカバーするための保険です。
就業不能保険は免責期間が60日や180日と設けられており、保険金が支給されるまで数ヶ月の日数を要します。一方の医療保険については免責期間を設けていません(商品によっては「入院〇日目までは入院給付金を受け取れない」といった免責期間を設けている場合もあります)。
そのため医療保険は就業不能保険では保障されない免責期間部分をカバーする役割もあります。もし、就業不能保険に加入しているが、保障されない免責期間に不安を感じる場合は、医療保険を併用するのも選択肢の1つです。
個人年金保険
個人年金保険は毎月一定額の保険料を払い込み、積み立てた資金で将来の年金原資をつくる保険商品です。一定年齢になると年金として保険金を受け取れます。この個人年金保険は公的年金の上乗せとして広く活用されています。
会社員に比べて将来受け取れる年金が少ない個人事業主にとって、老後資金の確保は重要な課題です。個人事業主が公的年金以外の年金原資を作る方法は、iDeCoや小規模企業共済などいくつかありますが、保険商品で備えるなら個人年金保険が適しているでしょう。
ただし、個人年金保険は途中で解約した場合、解約返戻金は戻ってきますが支払った保険料よりも少なくなる可能性があります。したがって、個人年金保険を選択する場合は、満期まで解約する可能性の低い資金で活用することが重要です。
損害賠償保険
損害賠償保険は、業務上で発生したトラブルによる賠償責任に備える保険です。事故などによって膨大な損害賠償を請求された場合でもこの保険で補償されます。
個人事業主は仕事で何かトラブルが起きた際にすべて自己責任で対処しなければなりません。会社が損害賠償を負担してくれる会社員とは異なり、個人事業主はすべて自身で負担しなければならないのです。
例えば、以下のようなトラブルで生じた損害賠償が補償の対象となります。
・業務中に第三者にケガをさせた
・機密情報等を漏えいさせてしまった
・納期に遅れてしまった
・訪問先の商品を壊してしまった
などが挙げられます。
このように、業務上のトラブルで損害責任を負わされる可能性は十分あります。場合によっては数千万円にも及ぶ損害賠償請求をされてしまうこともあるかもしれません。このようなリスクを回避するためにも、個人事業主は賠償責任に備えられる損害賠償保険への加入が望ましいでしょう。
相談先はどこに依頼すれば良い!?
ここまで、個人事業主は保険への加入が重要であることを解説しました。しかし、多くの保険商品が存在しているため、自身に適した商品を選択することは簡単ではありません。次からは、保険商品を提案してくれる主な相談先についてみていきます。
保険代理店
保険の主な相談先として保険代理店(保険ショップ)が挙げられます。ショッピングモール等に店舗を構えている保険代理店は、複数社の保険商品を取り扱っており、多くの選択肢を持ち合わせています。また、保険に関して中立的な立場で提案できる点もメリットの1つといえるでしょう。
しかし、その一方で店舗によっては取り扱っている保険商品が限られている可能性があります。もし、もっと多くの保険商品を比較検討したい場合は、オンラインでみれる比較サイトを活用してみてもよいでしょう。
保険会社の営業担当
勤務先に営業できている保険会社の担当者や、保険会社に勤務している知り合いなどに相談してみるのも選択肢の1つです。普段から顔を知っている担当者であれば信頼関係がすでに築かれている可能性が高いため、見ず知らずの相手よりも安心して相談できるでしょう。
ただし、自社の保険商品しか販売できないため、他社の保険商品を比較したい場合には向いていません。その場合も前述と同様、比較サイトの活用が有効となります。
独立型FP
独立型FP(ファイナンシャルプランナー)も相談先として有効な手段といえるでしょう。FPは1~3級からなる金融専門の国家資格です。FPは保険以外にも資産運用や税金、年金などお金に関する知識を幅広く身につけています。
そして、FPには保険会社や証券会社に勤めている企業型FPと、どこの企業にも属していない独立型FPに分けられます。この独立型FPはどの企業にも属していないため、中立な立場から保険を紹介してもらえるでしょう。
したがって、相談者の不利益になるような提案はされづらくなります。ただし、独立型FPに相談する場合にはほとんどのケースで相談料が発生します。無料相談を希望する人は、保険代理店などが実施している無料相談を活用してみてはいかがでしょうか。
事業に集中するためにも充実した保障を整えよう
個人事業主は会社員よりも社会保障が手薄になるため、保険に加入して手薄になる部分を補うことが重要です。自身で適切な保険を選ぶことが難しい場合は「保険代理店」や「保険会社の営業担当」「独立型FP」などの専門家に相談してみてはいかがでしょうか。
個人事業主は大きく稼げる可能性もありますが、万一の際にリスクも大きくなりがちです。そのため、会社員に比べてリスク管理が重要となり、その対策として保険などを上手く活用していく必要があります。
緊急時における経済面や精神面の負担を減らし、安心して事業に集中するためにも、専門家のアドバイスを受けて充実した保障を整えましょう。
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出典
日本年金機構 老齢基礎年金の受給要件・支給開始時期・年金額
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/roureinenkin/jukyu-yoken/20150401-02.html#cms03
日本年金機構 令和5年4月分からの年金額等について
https://www.nenkin.go.jp/oshirase/taisetu/2023/202304/0401.html
日本年金機構 遺族基礎年金(受給要件・対象者・年金額)
https://www.nenkin.go.jp/service/jukyu/izokunenkin/jukyu-yoken/20150401-04.html
全国健康保険協会 病気やケガで会社を休んだとき(傷病手当金)
https://www.kyoukaikenpo.or.jp/g3/sb3040/r139/
この記事を書いた人
ライター
辻本剛士(つじもと つよし)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員二種
独立型FPとして相談業務、執筆業務を中心に活動中。
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