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年金平均受給額から見える老後の暮らしを解説

年金平均受給額から見える老後の暮らしを解説

「年金はどれくらいもらえるのだろう?」、「老後は年金だけで暮らしていける?」

人生100年時代といわれる現在、将来の年金額に不安を感じる人も多いでしょう。本記事では、年金の平均受給額や老後の生活費について解説します。今から取り組みたい老後資金の対策も紹介しますので、ぜひ資産形成の参考にしてみてください。

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1.【厚生年金・国民年金】年金の平均受給額

将来受け取る年金の受給額は、厚生年金か国民年金のみかによって大きく異なります。ここでは、厚生労働省の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、年金の平均受給額を確認していきましょう。

1-1.厚生年金の平均受給額

会社員や公務員として働く人は「厚生年金保険」に加入します。厚生年金は国民年金に上乗せされて支給されますので、会社員や公務員の人は国民年金と厚生年金の2階建てで年金を受け取ることとなります。

前述の厚生労働省の資料によると、2021年度における厚生年金(国民年金含む)の平均受給額は下記の通りです。

 

平均受給額

男性

16万3,380円

女性

10万4,686円

全体

14万3,965円

参考:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

「厚生年金は2階建てだから安心」と思っている人も多いかもしれませんが、全体平均でも約14万円の受給額となり、決して「老後の暮らしに十分な金額」とはいえない水準です。

また、男女によっても平均受給額に大きな差があることが分かります。女性の平均受給額は約10万円で、男性の平均額より6万円ほど少ない状況です。

結婚や出産を機に仕事を退職したり、子育てのために働く期間が短くなったりしている場合は、その分年金の受給額が減少することに気を付けなければなりません。

1-2.国民年金の平均受給額

フリーランスや個人事業主などの自営業者は厚生年金がないため、国民年金のみを受け取ることとなります。

厚生労働省の資料によると、2021年度における国民年金の平均受給額は下記の通りです。

 

平均受給額

男性

5万9,013円

女性

5万4,346円

全体

5万6,368円

参考:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

全体の平均受給額は約5万6,000円となり、厚生年金に比べてかなり年金額が少ないことが分かります。これでは、到底老後の生活費をまかなうことは難しいでしょう。

自営業者の場合は、会社員や公務員以上に老後資金の備えを行っておくことが重要です。

1-3.年金の受給額をシミュレーションしてみよう

年金の受給額は働き方や就労年数、現役時代の年収などによって異なります。より将来の年金額を正確に知るためには、自ら試算してみることがおすすめです。

年金額の試算は、日本年金機構が運営する「ねんきんネット」で行うことができます。ねんきんネットはマイナポータルとの連携、もしくはID登録で利用できますので、ぜひ現時点での年金額の見込みをチェックしてみましょう。

また、毎年誕生月には「ねんきん定期便」が自宅宛てに送付されます。ねんきん定期便には、これまでの加入実績に応じた年金額が記載されていますので、こちらも忘れずに確認しておくとよいでしょう。

2.年金から差し引かれるものもある

先ほど年金の平均受給額を紹介しましたが、年金の受給額はそのまま受け取れるわけではありません。年金は、会社から受け取る給与と同じように源泉徴収されるものがあり、手取り額はさらに少なくなってしまいます。

ここからは、年金から差し引かれるものについて確認していきましょう。

2-1.

年金による収入は「雑所得」となり、所得税の対象となります。

ただし、公的年金の場合は通常の雑所得と異なる控除枠が設けられており、税金が発生するのは一定の金額(65歳未満の場合は年間108万円、65歳以上の場合は年間158万円)を超えた場合のみです。

1年間に受け取る年金額が、上記の金額を超えた場合は所得税と復興所得税が年金から源泉徴収されます。

2-2.住民税

年金による所得は、住民税の対象にもなります。納税の義務がある人は、「当該年度の4月1日現在、65歳以上の年金受給者」です。ただし、前年の年金額が18万円以下の場合は対象外となり、源泉徴収は行われません。

年金受給者の住民税納付は、以前は役場や金融機関などの窓口で行っていましたが、2009年10月以降は公的年金から源泉徴収が行われるようになりました。

源泉徴収される税額は、毎年6月頃に居住する自治体から「税額決定・納税通知書」が送付されますので、必ず確認しておきましょう。

2-3.社会保険料

「社会保険料」も公的年金から源泉徴収されるもののひとつです。源泉徴収されるのは、介護保険料と国民健康保険料(もしくは後期高齢者医療保険料)です。

源泉徴収された金額は、年金の源泉徴収票内の「社会保険料の額」に記載されていますので、こちらも併せて確認しておくとよいでしょう。

3.年金だけで生活費をまかなえる?

ここまで、「公的年金は税金や社会保険料が源泉徴収されたものを受け取る」ということが分かりました。では、その年金額だけで老後の生活費をまかなうことができるのでしょうか。

ここからは、総務省統計局の「家計調査年報(家計収支編)2022年」をもとに、老後の暮らしの収支状況について見ていきましょう。

3-1.夫婦2人暮らしの場合

まずは、65歳以上の夫婦が2人で暮らす場合の収支についてです。

前述の総務省統計局の資料によると、65歳以上の夫婦のみの無職世帯の可処分所得は21万4,426円であるのに対し、消費支出は23万6,696円となっており、毎月2万2,270円の赤字が出る状況です。

また、医療費や介護費などで支出が増えると、さらに赤字が大きくなることも十分考えられます。想定外の支出に対応するためには、やはり公的年金だけでは不安が残るでしょう。

3-2.単身世帯の場合

続いて、65歳以上の単身世帯の収支についてです。

前述の総務省統計局の資料によると、65歳以上の単身無職世帯の可処分所得 は12万2,559円であるのに対し、消費支出 は14万3,139円となっており、毎月2万580円の赤字が出る状況です。

特に、単身世帯で周りに頼れる人がいない場合は、「病院までの通院にタクシーを利用する」、「買い物に行けずネットスーパーや配送サービスを頼る」など出費がかさむことも考えられます。

また、老人ホームに入居する場合は初期費用や利用料なども用意しなければなりません。「費用面のハードルから医療や介護が受けられない」ということにならないよう、公的年金以外にもしっかりと老後資金を準備しておくことが大切です。

4.今から取り組みたい老後資金への備え

豊かな老後生活を送るためには、公的年金だけに頼らず、自ら老後資金を準備しておく必要があります。主な老後資金の準備方法として、次の4つが挙げられます。

・iDeCo(個人型確定拠出年金)
・個人年金保険
・外貨建て保険
・NISA

それぞれくわしく紹介していきましょう。

4-1.iDeCo(個人型確定拠出年金)

iDeCoとは、毎月の掛金を自ら選んだ金融商品で運用し、その運用成果を将来年金として受け取る制度です。年金は原則60歳以降に受け取れるため、「60歳で定年退職して、65歳の年金支給スタートまで収入源がない」という悩みの解決にも役立てられます。

また、iDeCoは将来の年金だけでなく、現在納めている税金で優遇が受けられることもメリットのひとつです。iDeCoに拠出した資金は全額所得から控除されるため、現在納めている所得税や住民税の負担が軽減される効果があります。

ただし、拠出した資金は原則60歳になるまで引き出しができないため、よく計画を立てたうえで拠出額を決めましょう。

4-2.個人年金保険

個人年金保険とは、毎月もしくは一括で支払った保険料を満期後に年金で受け取る保険商品です。保険と聞くと、掛け捨てタイプのものをイメージする人も多いかもしれませんが、個人年金保険は貯蓄の機能を兼ね備えていることが特徴です。

満期金は一括で受け取ることもできますので、「老人ホームの初期費用に充てる」、「家のリフォーム費用の一部にする」といった方法で活用するのもよいでしょう。

また、個人年金保険には「定額型」と「変額型」の2種類があります。

定額型は毎年決まった利率が適用されるため、契約時に「将来いくら受け取れるか」ということが確定します。ただし、円建ての場合は高い金利が期待しにくいため、「保険料を大きく増やす」ということは難しいかもしれません。

一方、変額型は保険会社に運用を任せ、その運用成果を満期金として受け取るものです。市況によっては大きな利益を狙える可能性があるものの、契約時に将来の年金額が分からないデメリットもあります。

個人年金保険に加入する際は、定額型と変額型の特徴を理解したうえで、どちらがよいかよく検討しましょう。

4-3.外貨建て保険

外貨建て保険とは、米ドルや豪ドル建てで保険を掛ける商品です。外貨建て保険は円建て保険より利回りが高い傾向にあるため、ただ日本円で保険料を支払うよりも効率よく資産形成が行える可能性があります。

ただし、外貨建て保険は為替リスクがある点に注意しなければなりません。もし満期時の為替レートが申し込み時よりも円高に動いていれば、支払った保険料を下回る可能性があります。

外貨建て保険に加入する際は、この為替リスクについてしっかり理解しておきましょう。

4-4.NISA

NISAは、株式や投資信託で得た利益が非課税となる制度です。2024年から大きく制度改正されることが決まっており、非課税期間が無期限化、非課税の枠も毎年360万円と大幅に機能が拡充されます。

これまでのNISAの非課税期間は最大でも20年間であったため、「老後を迎える前に非課税期間が終了してしまう」という使い勝手の悪さを感じることもあったかもしれません。

しかし、新しいNISAでは非課税期間が無期限化されることから、期限を気にすることなく資産形成に取り組めます。

金融機関によっては少額から申し込めるところもありますので、ぜひ老後資金の準備としてNISAを活用してみるとよいでしょう。

5.老後資金の準備は計画的に取り組もう

充実したセカンドライフを送るためには、公的年金だけに頼らず、しっかりと自分で老後資金の備えをしておくことが大切です。老後資金の準備には、iDeCoや個人年金保険、外貨建て保険などさまざまな選択肢がありますので、ぜひ早いうちから計画的に取り組みましょう。

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この記事を書いた人

椿 慧理

ライター

椿 慧理(つばき えり)

銀行を10年間勤務し経験を通じて得た金融知識を活かし、金融ライターとして独立。
金融商品やマーケットの解説、税制解説など初心者にも分かりやすい記事を手掛ける。
自らも12年の投資経験を持ち、国内外株式、投資信託、暗号資産を運用中。

保有資格:2級ファイナンシャル・プランニング技能士、証券外務員一種、内部管理責任者

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