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貯蓄

退職金の税制改正で何が変わった?増税対象となるのは〇〇の人!

退職金の税制改正で何が変わった?増税対象となるのは〇〇の人!

令和4年1月に退職金に対する税制改正が行われました。この改正により、退職金の受け取り時に増税となる人がいます。増税となる対象者や増税となる具体的な金額は、実際に受け取る退職金等によって変化するため、一概には言えません。

この記事では、改正された税制制度の内容や増税の対象となる人、実際にいくらくらいの増税が行われるのか、などについて詳しく解説しています。今後、退職金を受け取る予定がある人、退職を検討している人などは、ぜひ参考にしてください。

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退職所得控除の概要

会社を退職すると、退職金を受け取れる企業が多いです。退職金は、一般的に「その後の生活費」や「これまでの功労金」といった意味合いが強く、税制面で優遇されています。このことを、退職所得控除と言います。

まずは、そもそも退職所得控除とはどういった制度なのか?について、詳しく解説します。

「退職所得」に対する控除制度

退職所得控除とは、「退職所得」に対して行われる控除です。

所得は、細かく10種類に分類されており、そのうちのひとつが退職所得です。たとえば、給与に対する所得は給与所得、株式投資などの売買で利益を得た場合は譲渡所得など、所得ごとに細かく分類されており、それぞれに控除があります。

退職所得は、老後の生活資金や長年勤務したことに対する功労金といった意味合いから、他の所得と比較して多くの控除を受けられます。

控除を受けられることにより課税対象となる金額を抑えられるため、退職金に対する税金を抑えられる仕組みです。たとえば、2,000万円の退職金を得た人は、2,000万円に対して課税されるわけではなく、退職所得控除後の金額に対して課税されます。

よって、控除をたくさん受けられれば受けられるほど、納税額を抑えられて手元に残るお金が多くなります。

これまでの退職所得の計算方法

退職所得控除は以下の計算式に従って計算を行います。
(退職金−退職所得控除額)×1/2=退職所得
退職所得控除は、勤続年数に応じて以下のとおり変化します。

勤続年数

退職所得控除

20年以下

40万円×勤続年数
(80万円未満の場合は80万円)

20年を超える場合

800万円+70万円×(勤続年数−20年)

たとえば、30年間勤務した会社を退職し、2,000万円の退職金を受け取った場合の計算式は以下のとおりです。

【退職所得控除額】

800万円+70万円×10年=1,500万円

【退職所得】

(2,000万円−1,500万円)×1/2=250万円

上記ケースの場合は、250万円が退職所得となります。

一方、勤続年数が20年以下で退職金を2,000万円もらった場合は、以下のとおりです。

【退職所得控除】

40万円×20年=800万円

【退職所得】

(2,000万円−800万円)×1/2=600万円

上記のケースでは、600万円が退職所得となります。つまり、勤続年数が長ければ長いほど税制面で優遇される仕組みでした。

【税制改正】退職所得の主な改正点

令和4年1月に行われた退職所得の税制改正によって、一部対象者が1/2を廃止されました。退職所得を計算する上で、最終的に1/2できることによって税負担が大幅に軽減されていました。しかし、廃止によって増税となる対象者が出ることになります。

本改正点の主な対象者は以下のとおりです。

  • 役員等で勤続年数が5年以下の者
  • 役員等以外で勤続年数5年以下の者

上記のとおり、今回の改正で影響が出る人は「勤続年数が5年以下の者」です。ただし、役員等は、退職金の金額に関わらず1/2の適用を受けませんが、役員等以外の場合は300万円を超える部分です。これを「短期退職手当」と言います。

例を元に詳しくみていきましょう。

【役員等の場合】

役員等の場合、勤続年数が5年以下か否かで判断されます。6年以上の場合は、通常の計算式に従って退職所得を計算します。一方、5年以下の場合は、1/2課税が適用されません。

たとえば、退職金が2,000万円で勤続年数5年の場合と10年の場合で比較してみましょう。

・10年の場合
40万円×10年=400万円
(2,000万円−400万円)×1/2=800万円

上記のとおり、勤続年数が10年の場合は退職所得が800万円となります。一方、勤続年数が5年の場合は、以下のとおりです。

・5年の場合
40万円×5年=200万円
2,000万円−200万円=1,800万円

上記のとおりとなるため、退職所得は1800万円です。勤続年数が5年以下となるだけで、大幅な増税となる可能性があるのが今回の改正点です。

【役員等以外の場合】

役員等以外の場合は、勤続年数が5年を超えるか否かによって異なります。5年以下で退職をして退職金を受け取る場合は、短期退職手当となり300万円を超える部分に対して1/2課税が適用されません。

たとえば、勤続年数が5年と10年だった場合で退職金が2,000万円だった場合で見てみましょう。

・10年の場合
40万円×10年=400万円
(2,000万円−400万円)×1/2=800万円

上記のとおり、勤続年数が10年の場合は退職所得が800万円となります。一方、勤続年数が5年の場合は、以下のとおりです。

・5年の場合
40万円×5年=200万円
2,000万円−200万円=1,800万円

5年以下のケースでは1800万円となるため、退職所得の計算式は「300万円超の計算式」を使用します。この計算式に従うと、以下のとおりとなります。
150万円+{2,000万円−(300万円+40万円×5年)}=1,650万円

上記のとおりとなるため、退職所得は1,650万円となります。この金額に対して、所得税や住民税が課税されます。

【具体例】改正による影響とは

令和4年度1月に行われた退職所得の改正により、影響が出る人と出ない人がいます。基本的に影響が出る人は、勤続年数が5年以下の役員等もしくは一般従業員です。勤続年数5年を超えている人が退職金を受け取る場合は影響がありません。

より具体的な例を元に、影響が出るケースと影響が出ないケースについて詳しく解説します。

改正により増税となるケース

今回の改正により増税となり、影響が出る人は以下のとおりです。

  • 勤続年数が5年以下の役員等
  • 勤続年数が5年以下で退職金が一定額を超えている一般従業員

上記に該当する人は、増税の対象となります。改正前と改正後でどのくらいの増税が行われたのかについて、例を元にみていきましょう。

改正前の退職所得計算式は【(退職金−退職所得控除額)×1/2=退職所得】でした。仮に、勤続年数5年で2,000万円の退職金を得た場合、退職所得は以下のとおりとなります。

(2,000万円−200万円)×1/2=900万円

所得税及および住民税はそれぞれ以下のとおりです。

所得税:143.4万円
住民税:90万円

今回の改正により、役員等が5年以下で退職をした場合は1/2課税が適用されません。よって、同条件で退職金を得た場合の退職所得は以下のとおりとなります。

2,000万円−200万円=1,800万円

所得税および住民税は、それぞれ以下のとおりです。

所得税:440.4万円
住民税:180万円

増税となる金額は所得税で297万円、所得税で90万円です。合計すると387万円増税されることになります。

一般従業員の場合は、300万円を超える部分は1/2課税が適用されません。よって、以下の計算式で退職所得を算出します。

150万円+{2,000万円−(300万円+40万円×5年)}=1,650万円

所得税および住民税は以下のとおりです。
所得税:390.9万円
住民税:165万円

増税となる金額は所得税で247.5万円、住民税で75万円です。合計すると322.5万円の増税となります。

改正による影響がないケース

今回の改正により影響が出ないケースは、以下のとおりです。

  • 勤続年数が5年を超える場合
  • 退職金が300万円以下の場合

まず、勤続年数が5年を超える場合は、今回の改正の影響を受けません。また、勤続年数5年以下で退職を検討されている人であっても、退職金が300万円以下の一般従業員であれば影響を受けません。

ただし、役員等の場合は300万円以下であっても影響を受けるため注意してください。

退職所得の税制改正に伴うよくある質問

今回の税制改正に伴うよくある質問を紹介します。

Q .iDeCoへの影響はありますか?

A .影響が出る可能性があります。

iDeCoへの掛け金は全額控除の対象となり、運用益は非課税となるため税制面でさまざまなメリットがある制度ですが、税制改正による影響が出る可能性があります。

まず、前提としてiDeCoの受け取りは課税対象です。受取方法が年金形式の場合は「雑所得」として計算され、一時金として受け取る場合は「退職所得」として課税されます。

今回の税制改正は、「退職所得」に対して行われたものであるため、iDeCoを一時金で受け取る場合や勤続年数が5年以下の場合は増税となる可能性があります。

ただし、雑所得として受け取る場合は今回の改正の影響を受けません。これらを踏まえ、受け取り方法を検討されてみてはいかがでしょうか。

Q .退職所得の税制改正を行う目的は何ですか?

A .短期間での転職による退職金受け取り優遇をなくすことが目的であると考えられます。

退職所得に対する課税制度は、他の所得と比較して非常に優遇されています。控除額も多く、実際に課税される金額はとても少ないです。

そのため、とくに役員等が短期間での転職を繰り返し、多額の退職金を受け取る行為が社会問題になりつつありました。そういった行為を減らすために、5年以下の短期間で退職をして退職金を得る場合は、増税となる仕組みになりました。

Q .今後、さらなる増税の可能性はありますか?

A .何らかの形で増税となる可能性はあります。

令和4年1月に行われた税制改正は、退職所得に対する1/2課税の廃止でした。現時点で、退職所得に対するこれ以上の増税は決定していません。

しかし、所得の中でももっとも優遇されている退職所得は、今後さらに増税となる可能性を否定はできません。

退職金は、老後の生活資金や功労金といった意味合いが強く、退職後の生活資金として考えている人が多いです。そのため、税制面でも優遇されています。しかし、今後は更なる増税となる可能性もあるため、今後の流れに注目しておきたいところです。

まとめ

今回は、退職金に対する税制改正について解説しました。

退職金は、退職後の生活資金やこれまでの功労金といった意味合いが強く、所得の中でも多くの控除を受けられるようになっていました。そのため、実際に納める税額は比較的少なくなるようになっているのが特徴であり、メリットです。

しかし、さまざまな状況から5年以下の短期退職者を対象として、増税となる仕組みに改正になりました。本改正によって、退職金に対する納税額が増え、負担が増える人が発生します。

今後、退職を考えている人などは、今回解説した内容を踏まえて検討されてみてはいかがでしょうか。

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この記事を書いた人

林 裕二

ライター

林 裕二(はやし ゆうじ)

2018年にFP2級技能士。金融系WEBライターとして活動。数多のメディアで金融系記事執筆や監修を担当し、読者のお金の悩みに寄り添ってきました。現在も人々の生活に関わる「お金」や、家計の「借金問題」などをメインとしながら記事執筆を行っています。

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