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不動産
ペアローンが向いている人は?メリット・デメリットを確認!
住宅を購入する際、ほとんどの人が住宅ローンを組むことになります。住宅ローンには多種多様な形式が存在し、その中の1つがペアローンと呼ばれる商品です。ペアローンは、夫婦が共同でローンを組むという制度ですが、この制度が全ての人にとって最適なわけではありません。
本記事では、ペアローンの基本からメリット・デメリットまでを分かりやすく解説します。ぜひ、最後まで記事をお読みいただき、自身がペアローンに向いているかどうかご確認ください。
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目次
ペアローンとは
ペアローンとは、夫婦が共同で住宅ローンを組む制度です。つまり、1つの住宅に対して2つの住宅ローンを組むというものです。仮に、5,000万円の住宅を購入する場合で見ていきます。
夫が2,500万円、妻も2,500万円というように、夫婦2人で住宅ローンを組みます。夫は妻の連帯保証人に、妻は夫の連帯保証人になるのもペアローンの特徴です。
この制度は、夫婦それぞれで借入額を折半にする必要はなく、6対4など割合を夫婦間で調整することも可能です。
ペアローンのメリット
ここでは、ペアローンのメリット4つを解説していきます。
夫婦で住宅ローン控除を適用できる
ペアローンの1つ目のメリットは夫婦別々に住宅ローンを組むため、お互いに住宅ローン控除を受けられることです。住宅ローン控除とは、住宅ローンを組んだ際に利用できる制度で、所得税と住民税が最大13年間控除できます。
控除額は住宅ローン残債の0.7%です。この制度は名義人が納税する「所得税」と「住民税」以上に控除はできず、控除額上限が決められています。そのため、夫婦どちらかだけで住宅ローンを組んだ場合、ローン残債が残っていても、1人では最大限に控除額を使いきれない可能性があります。
ペアローンであれば、夫婦それぞれが住宅ローン控除を受けられるため、互いの控除上限額までこの制度を利用できるのです。
例えば、4,000万円の残高がある場合、控除できる金額は0.7%にあたる28万円です。夫婦どちらかのみの契約の場合、住宅ローンを組む人が年間28万円以上の所得税と住民税を納めていなければ、控除をフルに活用できません。
一方、ペアローンでそれぞれ2,000万円ずつのローンを組む場合、夫と妻がそれぞれ、年間14万円以上の税金を納めていれば、住宅ローン控除をフルに活用できます。
借入可能額を大きくできる
ペアローンの2つ目のメリットは、借入可能額が大きくなることです。1人で住宅ローンを組む場合は、その人の収入をベースに借入額が決まりますが、ペアローンなら2人分の収入が審査の対象になり、それぞれでローンが組めるのです。
例えば、4000万円の住宅購入を検討しているが、夫は3000万円までしかローンが通らなかったとします。この場合、ペアローンを利用すれば、不足している1000万円の住宅ローンを妻が組むことで、4000万円の住宅が購入できるのです。
このように、1人ではローンを組めない住宅でも、ペアローンを活用することで購入できるようになります。
夫婦で別々の返済条件を設定できる
3つ目はそれぞれで異なる返済プランを選べることです。ペアローンは夫婦別々で組むローンのため、金利や返済期間などを異なるプランで組めるのです。
例えば、夫は低金利の「変動金利型」を利用して、妻は金利上昇のリスクを考慮して「固定金利型」を選択したりするなど、夫婦に適したプランを選択できます。
夫婦で団信に加入できる
4つ目のメリットは夫婦で団体信用生命保険(団信)に加入できることです。夫婦で組むペアローンは住宅ローンを2つ組むことになるため、それぞれで団信に加入できるのです。それぞれで加入できることで、夫婦どちらかに万一にことがあれば、その人の住宅ローン残債が0になります。
どちらかが住宅ローンの支払い中に亡くなる、あるいは高度障害になってしまった場合には、基本的にローンの返済負担を軽くできます。もし、3大疾病や所定の身体障がい状態・要介護状態になるリスクにも備えたいと考えるならば、団信で用意されている特約を選ぶことも視野に入れるとよいでしょう。
ペアローンのデメリット
ここまでペアローンのメリットについて解説してきましたが、デメリットも存在しているため、以下で解説していきます。
どちらかが退職すると返済が難しくなる可能性がある
1つ目のデメリットは、夫婦どちらかが退職などの要因で大幅に収入が減ってしまった場合、返済が難しくなる可能性があることです。前述のペアローンのメリットで、借入可能額を大きくできると解説しました。
しかし、ペアローンは、夫婦2人の収入を基に計算しているため、一方が収入を失うと返済が難しくなります。特に女性は、妊娠・出産・子育てで退職しなければいけないケースもあり、夫の場合もリストラや給与カットによって、現状の収入を維持できない場面もでてくるかもしれません。
どちらかが亡くなってもローンが残ってしまう
2つ目のデメリットはどちらかが亡くなってもローン残債が残ることです。たしかにペアローンは、夫婦がそれぞれ団信に加入できるというメリットがあります。
しかし、夫婦のどちらかが亡くなっても遺族側の残債は残り、引き続き返済の義務が生じてしまうのです。一方、夫のみが住宅ローンを組み団信にも加入した場合は、夫が亡くなると住宅ローンの残債はすべて無くなります。
2人分の諸費用がかかる
3つ目は2人分の諸費用がかかることです。夫婦それぞれで借入をするペアローンは、諸費用も2人分かかります。住宅ローンを組む際にかかる諸費用は主に次のとおりです。
借入手数料:金融機関に支払う費用
保証料:ローンに保証会社を組み入れる場合に必要となる費用
団体信用生命保険料:各金融機関により設定された保険料
印紙税:住宅ローンの契約書を作成する際に必要となる税金
登録免許税:住宅ローンを保証するために抵当権を設定する際に必要となる税金
ペアローンの注意点
ペアローンのメリット・デメリットについて解説してきました。ここからは、ペアローンを組む際に注意しておきたい点について解説します。
1本化に借換える場合は贈与税の対象になる可能性がある
住宅を2人の名義にできるペアローンですが、収入の状況に変化があったり、離婚が必要になったりして解消を考える人もいるでしょう。
ペアローンは、借り換えることでローンを1本化できます。しかし、一本化はもう片方に債務を肩代わりしてもらったという扱いになってしまうのです。そうすると、年間110万円を超える部分に対して贈与税を課される可能性が高くなってしまいます。
仮に、夫が2,000万円、妻は1,000万円のペアローンを組んでいたとします。借換えにより夫が3,000万円のローンに一本化した場合、妻のローン残債1,000万円を夫が肩代わりしたことになります。1,000万円に110万円を差し引いた890万円が贈与税の対象になる可能性があるのです。
離婚した場合トラブルになりやすい
住宅ローンを組んだ後に離婚に至った場合も問題が浮上します。離婚して、夫婦どちらかがそのまま住宅に住む場合は、ローンを一本化し100%自身の名義にしなければなりません。
ペアローンを一本化してしまうと、名義人のみの収入でローン契約するため、収入が十分でない可能性もあります。ローンを一本化できない場合には、売却という選択肢も考えなければなりません。
ペアローンが向いている人
では、実際どのような人がペアローンに向いているのでしょうか?ここからはペアローンに向いている人の特徴を解説していきます。
夫婦で安定的に仕事を続けられる人
ペアローンを利用すれば、住宅ローン控除を夫婦で最大限活用できます。しかし、返済途中に夫婦どちらかの収入が大幅に下がった場合は、住宅ローン控除を十分に活かせなくなってしまいます。
夫婦で安定的に仕事を続けられるのであれば、最大限に住宅ローン控除の恩恵を受けられるでしょう。
借入可能額を大きくしたい人
ペアローンは、単独でローンを組むよりも借り入れ可能額が増やせます。もし「希望する住宅価格に対して、単独では審査に通らない」といった場合にはペアローンを検討するのも選択肢の1つでしょう。
ペアローンの仕組みを理解した上で選択しましょう
ペアローンとは、夫婦が共同で住宅ローンを組む制度です。メリットは主に「別々に住宅ローン控除を適用できる」「借入可能額を大きくできる」「夫婦それぞれで返済条件を決定できる」「夫婦で団信に加入できる」などがあります。
一方で、「夫婦どちらかが退職すると返済が難しくなる可能性がある」「どちらかが亡くなってもローンが残る」「諸費用が2人分かかる」などのデメリットも理解しておいてください。
そして、夫婦で安定的に仕事を続けられる場合や、希望する住宅価格に対して単独では審査に通りにくい場合、ペアローンは有効です。本記事で解説したペアローンの仕組みを理解し、自身の状況に適したローンを選択しましょう。
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この記事を書いた人
ライター
辻本剛士(つじもと つよし)
CFP(R)認定者、一級ファイナンシャルプランニング技能士、宅地建物取引士、証券外務員二種
独立型FPとして相談業務、執筆業務を中心に活動中。
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