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貯蓄
円高円安ってなにが原因で起こるの?~過去の為替変動と今後の動きを予測~
最近は物価の高騰が続き家計を圧迫している傾向がありますが、その原因のひとつに円安による輸入品の輸入額高騰があるということはご存じでしたか?
そもそも円安や円高といった為替の相場変動はどのようなことが要因となっているのでしょうか。
また、今後の円高円安の相場はどうなっていくのでしょうか。
この記事では、円安・円高になる仕組みや、過去に起こった大幅な為替変動について解説します。
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目次
円高円安になる要因
円高円安に為替変動が起こる理由は単純なものではありません。
しかし、以下のような要因が、少なからず円高円安に影響を及ぼしているといわれます。
・金利の差
・輸出の増減
・国内の安定
順にみていきましょう。
金利の差
円高・円安になる要因のひとつが金利の差です。
日本国内の金融機関に預貯金を預けている方は多いかと思いますが、昨今の預金金利は非常に低いものとなっていますね。
もし今よりも金利の高い預け先があれば、その金融機関に預けたいと思いませんか?
実はアメリカにおける金利は基本的に日本よりも高い水準にあり、最近はさらに上昇傾向にあります。
同じ資金を持っていた場合、高金利のほうが当然効率よく資金を運用できるため、金利の高いアメリカにお金が流れていきます。
その結果、円よりもドルを持ちたいと考える人が増え、ドルのほうが価値が高くなっていくのです。
つまり、日米の金利格差が拡大すると、「ドル高・円安」に動きやすくなり、逆に縮小すると「ドル安・円高」になりやすいといえます。
輸出の増減
円安になると日本の製品が海外で売れやすくなるのが円安時の特徴のひとつではありますが、輸出が増えるにしたがって逆に円高になるという側面もあります。
これは輸出が増えると日本の製品を買うために、外国の取引先が外貨を円に交換する動きが起こるためです。
つまり円安の影響で商品が安くなっている場合、多くの取引先がこぞって外貨を円に交換するようになりますね。
その結果、円の価値が上がり、円高に転換するということです。
また、「モノ」だけでなく、円安で日本に旅行したいと考える外国人旅行者が増えた場合も、外貨を円に交換する動きが活発になるので、円高に移行しやすくなります。
国内の安定
国内の安定も通貨の安定にとって非常に大切です。
2009年に起こったギリシャ危機を覚えている方も多いでしょう。
これは政権交代により発覚した財政赤字より、実質的な財政破綻を起こしたというものでした。
突然ですが、あなたは財政破綻をしている国の通貨を持ちたいと思いますか?
「NO」という答えが圧倒的に多いはずです。
財政が破綻、あるいは安定しない国では通貨の価値の保証がもてません。
いつ紙くず同然になるか分からない通貨を所有し続けるのはあまりにもリスクがありますよね。
幸い現在の日本ではギリシャのような財政危機はありませんが、もしも同様のことが発生した場合、不安に感じた人や各国が円を外貨に換えようとする動きが起こることは容易に予想できます。
その結果、急激な円安が起こることが考えられます。つまり、国が不安定な時は急激な円安になる可能性があるということです。
円高円安に大きく動いた過去の要因
それでは具体的に日本で起こった大きな為替変動 を、世界の過去の出来事とともにみていきましょう。
米国利上げ
2004年6月30日にアメリカでの利上げが起こり、日米の金利格差が拡大しました。
その結果、6月末には「1ドル=108.69円」だった為替が、翌月末には「1ドル=111.67円」と約3ポイントも円安ドル高に動きました。
リーマンショック
2008年9月15日には世界的に大打撃を与えた「リーマンショック」が起こりました。
リーマンショックは当時連日ニュースで取り上げられていましたし、日本経済にも大きな影響があったため記憶にある方もいるでしょう。
このリーマンショックによってドルの価値が下がり、前月8月末には「1ドル=108.8円」だった相場が、9月末には「1ドル=104.76円」となり、さらに翌月10月末には「1ドル=97.01円」の円高に移行しました。
欧州債務危機
欧州債務危機とは、別名「ユーロ危機」とも呼ばれます。
先ほども少し触れましたが、ギリシャでの財政問題が発生したことからその余波がヨーロッパ全体に広がっていき、ユーロ圏を揺るがす事態となりました。
これにより、世界経済の不確実さの懸念から円を所有したほうが安全であると、円高の傾向が高まり、その影響は長く続きました。
東日本大震災
2011年3月には東日本大震災が発生しました。
日本経済にマイナス影響をもたらす出来事のため、円安に動きそうですが、実はこの震災後は円高の動きが強まります。
これは被災者に対する保険金の支払いのために保険会社が外国株式や債券を円に変えたからではないかという見方があります。
また、国内での「有事の円買い」の動きも高まりました。
これにより、2011年3月末には「1ドル=82.84円」の相場が、2011年より1年以上に渡ってかなりの円高に動きます。
2012年1月末には「1ドル=76.3」という過去30年間で最も高い円高相場となりました。
日銀ゼロ金利政策
2012年の後半には金融緩和の推進がおこなわれます。
日銀による実質的なゼロ金利政策や金融資金の買い入れにより、日本全体の金利が大きく下がりました。
その結果、日米の金利格差がおこり、これ以降円安・ドル高に移行していきます。
チャイナショック
2015年以降になるとチャイナショックといわれる出来事が起こります。
チャイナショックとは中国株のバブルが引き金となった株価の大暴落です。
ただし、株価の大暴落は中国国内での出来事で、世界的な株価の暴落にはつながりませんでした。
それでも日本国内では「有事の円買い」がトレンドとなり、2015年6月末に「1ドル=122.25円」だった相場は3ヶ月後の9月末には「1ドル=120.03円」に円高となりました。
新型コロナウイルス
2020年は現在まで続く新型コロナウイルスの世界的なパンデミックの年です。
世界的にロックダウンがおこなわれるなど、世界の経済が低迷したことにより、日本でも円安の動きが高まりました。
新型コロナウイルス流行前の2019年12月末に「1ドル=103.33円」だった相場は、緊急事態宣言直前の2020年3月末には「1ドル=110.74円」まで下落しています。
これからどうなる
現在の為替相場はどのようになっているかというと、2023年1月末は「1ドル=130.15円」と、比較的円安傾向にあります。(2023年2月調査)
ただし、2022年9月には「1ドル=144.32円」、10月は「1ドル=148.01円」とかなり円安が進んでいたことを考えると、すこし円安が落ち着いたようにも見受けられます。
それでは今後、円高円安の為替相場はどうなっていくのでしょうか。
日本とアメリカでの金利格差が為替相場に影響を与えることは、すでにご理解いただけたかと思います。
実はアメリカの中央銀行制度の最高意思決定機関である「Federal Reserve Board(FRB)」では2023年3月に利上げを終了させ、翌年からは利下げを開始すると発表しています。
また、確実な時期は未定であるものの、日本でもマイナス金利の解除をすすめる動きがあるようです。
これらの動きによって日米の金利格差が縮小されるので、現在より円高になることが予想されます。
しかし、過去に相場を揺るがしたような世界的経済事変や、国内外での大規模災害等によって相場は予想外の動きをすることも考えられます。
円高円安の対策
相場は円高円安で常に動いていますが、大切な資産を円高円安に左右されずに守るためにはどうしたらいいのでしょうか。
そのための対策として、日本の金融機関のみに資産を預けるのではなく、外貨預金、あるいは外貨建ての資産を保有することを選択肢にいれましょう。
円建て資産と外貨建て資産をバランスよく保有することによって、極端な円高円安に動いた時も資産価値減少のリスクを回避することができます。
また、円安時には輸入品が高くなる傾向があります。
相場の影響を受けやすい輸入品でなく、国内生産の商品に目を向けることで比較的安定して購入することができますし、長い目で見れば、国内企業の応援は円の価値を上げることにもつながります。
まとめ
円高や円安に相場が動く要因は単純なものでなく、経済状況や国の情勢などさまざまな要因が複雑に絡み合っています。
実際のところ、今後の確実な為替相場は誰にも予測できません。
しかし、国内外の情勢に広くアンテナをはり、現在の相場や国際ニュースをこまめに把握することで近い未来の相場を予測することは不可能ではないでしょう。
また、円高円安の仕組みや、相場変動の傾向を知っておくことで、生活への影響を最小限に抑えることもできます。
円高円安は対岸の火事のようなものではなく、私たちの生活に直結しているものなので、できることから主体的に動くことができるといいですね。
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この記事を書いた人
ライター
渡辺あい(わたなべ あい)
銀行員として勤務の後ライターへ
4人の子供の母としてもお金の観点を持つ事が出来るのが記事の魅力。
FPの資格を活かした金融の記事に定評がある。
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