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引きこもりは多様化する成熟した社会の現代病

引きこもりは多様化する成熟した社会の現代病

引きこもりと言う単語が世に生まれたのは1990年代後半との事です。
今では当たり前のように市民権を得た単語になっています。
内閣府が発行する子供・若者白書ではニートに関する調査が興味深かったのでご紹介したいと思います。
これはこども・若者の意識と生活に関する調査として全国の3万人に実施し、15歳から~39歳のおよそ7000人の回答がありました。
その結果引きこもりと言える状況にある人は全体の2%程度でした。7035人中144人という結果です。
この結果を見ながら現代の引きこもり事情を考えてみたいと思います。

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引きこもりの割合は2%

内閣府が若者白書として若年層の意識調査のようなものを実施しています。
レポートは全50ページにもおよび、かなり細かな質問もされています。
特別引きこもりの調査と言う名目な訳では無いのだと思いますが、質問文が中々にえぐいものになっていきます。

出典:内閣府、興味のある方は文末からリンクへどうぞ

どんなメカニズムで最後まで設問に答えてくれたのか多少不思議ですが、明らかに承認や幸福感に差があります。
繰り返しますが設問に答えたのはおよそ7000人で144人が広義の引きこもりと言う事になっています。
割合でいうと2%ですが、「世界で活躍していると思う」という中々なパワーワードで攻めてきます。
どちらに答えても「大丈夫かな?」みたいに思われそうです。
自由に暮らしていると思う人の数が仕事をしている人とあまり変わらないのが救いですね。

実は増えてはいない

この調査結果を読んでいくと、コロナ禍をきっかけとして引きこもりが急増したように読めます。
引きこもりにはトリガーになる切っ掛けがあり、そこからドロップアウトしてしまうと長引いていく事で引きこもりになっていくというものです。
代表的な引きこもりの理由は登校拒否、受験失敗、就職失敗、病気、離職と言った理由です。
このような切っ掛けから社会との関りが損なわれ、それが長期化する事で引きこもりという事態に発展します。

しかし、引きこもりの割合で見ていくとイメージ程増えていってはいません。
下記の資料をご覧下さい。こちらも内閣府の資料です。

こちらを見ると2005年から平均して2%で引きこもりが推移している事が分かります。
古い資料で2013年までしか記載がありませんが、直近の若者白書で2%だったとしたら大きく増えていないという事が言えます。
調査方法などが同一であるかまで不明なので、同じように比べられる事ではありませんがいくつか調べた内容もそれぞれ2%を示す記事が散見されました。

つまり、コロナにより増えたという訳でも無く、常に2%程度は引きこもりであったという事になります。
20年に渡り2%を常に堅持する引きこもりと言う現象。
これは一体何が理由なのでしょうか?

世界的に若年層に広がる悲壮感

時代なのか、引きこもりと言う現象は世界的に見られます。
特に成熟した国家では必ずと言っていいほど若年層の悲観が問題になってきています。
中国のタンピン主義、韓国のZ世代、アメリカの若年層もドラッグ中毒やホームレスが社会問題になっています。

この世界中の若年層に共通する現代病のようなものは何なのでしょうか?
先ほど引きこもりの割合自体は増えていないと書きましたが、増え続けていく訳でも無く、無くなるでも無い。
一定数の比率で存在する現代病のようなもののようです。

この現象の正体はなんなのでしょうか?
成熟した国家の若年層に共通する条件を考えて見たく思います。
学歴社会、資産による序列、承認主義、こういった事が共通すると仮定して考えてみます。
学歴社会とは言うまでもない高学歴至上主義です。

日本は過熱した学歴主義から一転ゆとり教育を取り入れ、再び戻るという変化を迎えていますが、概ね学歴社会が続いていると言えるでしょう。
中国や韓国は目下学歴主義の先鋒と呼べる状況です。

学歴主義では大学受験戦争、就職戦争と苛烈な競争を勝ちぬかなくてはなりません。
中国や韓国での大学受験は社会現象として取り上げられるほどであり、自殺者が出る程大変な事として考えられています。
その大きなプレッシャーや、受験の失敗、就職の失敗などを切っ掛けにドロップしてしまうケースが多々あります。
一度失敗してしまうとやり直せないほど厳しい学歴社会は若年層にとって大きなストレスになっています。
中国のタンピン主義とはねそべり族と呼ばれ、そういった苛烈な競争を放棄する抗議の側面を持っています。

他方で大学受験を勝ち残ったとしても今度は就職戦争があり、入社を果たしたとしても会社内での競争が続いていきます。
所得がどれだけあるのか、資産がどれだけあるのか、現代社会は資産高に応じて人生の幸福が定まると強く信じられています。
ここでも、持たざる者はそれだけで、無力さを感じてしまうのです。
これが資産による序列です。

資本の世界で資産を持つには仕事を行わなくてはなりません。
一部の天才や実業家を除き、多くの人は会社員として企業で生きていきます。
その企業でも大きなストレスと競争が待っている。

そして、現代はSNSを通じて他社との比較が日常になっています。
競争、比較、そういったストレスがひっきりなしに襲ってくるのです。
離職や病気は誰に待っているか分かりません。ストレスからうつ病にかかり、引きこもりになるケースは代表的なものでしょう。
引きこもりは若年層だけに限られた問題では無くなり、現代病としてあらゆるトリガーからの離脱が起こっているのです。

新しい資本主義の特徴でもある一部の産業で社会全体を賄ってしまう産業格差

引きこもりが現代病と呼ばれる所以はドロップアウトをしても生きていける社会である事も要素となります。
飽食の時代と言われる位ですから、食べ物にはそうそう困りません。
我儘を言わなければ餓死するような事は無いでしょう。
もっと言えば、少ない日銭を稼ぐだけで最低限の暮らしは出来てしまいます。
働かなければ食べ物そのものの無い時代とは比べられないほど最低限の暮らしは容易に出来ます。

生きていく事が簡単になってしまったのかといえばそれも少し違います。

現代社会では工業化、ハイテク化により手工業に人手が要らなくなってしまいました。
不必要になってしまった労働力をテクノロジーが埋めています。

そして、企業の利益を還元させて社会保障を行います。
働かなくても餓死しなくなったかもしれませんが、それが幸福なのかはなんとも言えません。

資本利益が労働利益を上回ると言われ、労働して収入を得ても豊かな暮らしの程遠い人も多いです。
労働の定義が変わり、必要とされる産業が変わる中であぶれてしまう人々が増えているのかもしれません。
社会弱者を救うという名目は最低限生きていける事を指し、沢山の貧困層を生み出す事にもなっているのかもしれません。
アメリカでは巨大産業が生まれる陰で恒常的な貧困層が拡大しています。

労働が高尚になり、高い技能を必要とする仕事が増え、最適化が進むと必要とされる労働力が少なくなります。
成熟した社会では簡単な労働は機械にとって代わり、従来その部分を担ってきた労働者が不要になってしまうのです。

引きこもりの背景にはこうした社会の仕組みがある事も要因として考えるべきでしょう。

大切になるのは自己実現

視点を変えて考えてみると幸福の形が変わってきているというのもあるのかもしれません。
かつて良い大学に入り、大企業に入りという成功の分かりやすいイメージがありました。
その路線に入れれば幸福な暮らしが約束されており皆がその幸福のために努力していました。

今でも大筋は変わらないのかもしれません。
しかし、多様性と言う言葉がもてはやされて幸福が一様ではなくなったのかもしれません。

そもそも幸福と言う観念が相対論であり、これは個人によって異なるものです。
引きこもりが成熟した社会で増える要因にあるのは幸福観念の多様化によるものなのかもしれません。

社会が求める幸福と個人が感じる幸福にギャップが生まれ、過度のストレスからの逃避こそが安寧であると悟る事が一つの答えになっているのです。
辛く大変な思いをしてまで生きていかなくても別に良い。

競争や闘争からドロップアウトしても個々人の幸福を追及出来る。
もっと言うなら個々人の多様化した幸福の追求を可能にした社会だからこそ画一的な幸福が問えなくなってきているのです。
引きこもりという現象が社会問題になりましたが、その実引きこもりは時代の過渡期に現れるものなのかもしれません。

例えばyoutubeなどでは個々人の多様化したカルチャーの発信が容易であり、新しい社会への帰属手段が生まれています。
経済活動から離れて、会社組織に属さなくても個人が幸福を追及出来る。
そして、その形からまた新たなカルチャーが生まれてくるのです。

引きこもりが成熟した社会でのみ起こる理由が新しい価値観を創造する機会を創出出来るのが成熟した社会に限られるからなのかもしれません。
私達は引きこもりを社会のお荷物や、ネガティブな存在として扱っている節があります。
しかし、個人の幸福観念が多様化する現代においてはどのように自己実現を目指しても良い社会を奨励しているはずです。
機能的でありさえすれば良い社会というのは高度成長期の社会通念です。

日本や欧米はすでに、そして中国もこれから成熟した国家として新しい価値観と言う課題が生まれているのです。
人間は幸福を考えて生きています。
その幸福が相対論である以上社会や時代と共に求められる「生き方」そのものが変化していくと考えられます。
引きこもりも多様性として受け入れられていく社会がこれから私達が目指す姿なのかもしれません。

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この記事を書いた人

佐藤大介

ライター

佐藤大介(さとうだいすけ)

ウルトラ金融大全局長
ウルトラ金融大全の監修を務めます。
金融リテラシーを高める為、セミナー講師として活動。
「超一流の口だけ男」と評される氏のセミナーは非常に分かりやすく、何度も受講するファンが沢山います。
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